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862話 シージンの依頼

 リオ達は砂漠での足として購入したピグウの背に跨がりながら街を目指していた。

 リオ達がカルハンにやって来て十日ほど経ったが未だシャイニングクリーナーの討伐は出来ていなかった。

 そもそも遭遇すらしていなかった。

 今回も目撃情報をもとにその場所へ向かったのだが空振りだった。

 ピグウ乗りの腕前であるが、リオはまるで以前に乗ったことがあるかのように最初から乗りこなしていた。

 ヴィヴィも初めてとは思えない腕前であった。

 サラとアリスは共に初めてだったが元々調教されていたこともあり歩かせることは問題なく、今では走らせることも出来るようになっていた。



 宿屋の裏にあるピグウ小屋にピグウ達を預けて宿屋に入るとすぐさま声をかけてくる者がいた。


「皆さん、お久しぶりです」


 それは冒険者ギルドのグラマス、ホスティの右腕であるシージンであった。


「どうしてここに?」


 そう尋ねるサラにシージンは真剣な顔で言った。


「皆さんにご依頼したいことがありましてやってまいりました」


 サラがリオの顔を見るといつもの無表情で興味なさそうだった。

 シージンはそれに気づき補足する。

 

「リオさんがとても興味を持つ案件であると自負しております。是非話だけも聞いて頂けないでしょうか?」


 リオは返事をしなかったが明確な拒否もしなかった。

 ということでリオ達の部屋でシージンが持ってきた依頼を聞くことになった。

 シージンは部屋に入るなり早速本題に入る。


「皆さんは元Aランク冒険者のアグルをご存知ですか?」

「いえ」


 サラが代表して答える。

 誰からも反論がないことから他の者達も知らない事がわかる。

 シージンがアグルについて説明を始める。


「先に述べましたが彼はAランク冒険者でそのランクに相応しい、いえ、それ以上の実力の持ち主だったのですが性格に非常に問題がありました。ある時、彼は護衛対象を殺して逃亡したのです。冒険者ギルドは彼を除名し懸賞金をかけましたが長らくの間、その行方はつかめませんでした」


 ヴィヴィが先読みして尋ねる。


「ぐふ、そのクズが見つかったから討伐しろと?」

「はい、その通りです。何組ものパーティが彼らを討伐しようとしたのですが尽く返り討ちに遭いました。討伐に向かった者の中にはSランク冒険者も含まれていたにも拘らずです。それほどアグルは強いのです。そのアグルが闇ギルドに匿われてカルハンに潜伏しているとわかったのです」

「カルハンにですか?」

「はい。ただ、残念なことに今、冒険者ギルドには彼を“確実に“討伐できる者がいないのです」

「それで私達ですか」

「でもっ、わたし達はCランク冒険者ですよっ」


 シージンが発言したアリスを見て言った。


「しかし、実力はSランクにも匹敵すると考えています」

「確かに私達は強力な魔物を討伐して来ましたが人と魔物では戦い方が異なります」


 サラの言うことが正しいことはこれまでの歴史が証明している。

 始まりの勇者ディオンからこれまで何人もの勇者が誕生し、出現した魔王を討伐してきた。

 だが、勇者がその後、敵なしだったかと言えばそうでもない。

 決闘に敗れたり、酷いものは川に落ちて溺れて死んだというものもある。

 勇者ですらそうなのだ。


「伝説の魔物、Sランクの魔物を倒したから人間相手に負けるはずはない」


 とは言えないのだ。


「ぐふ、冒険者ギルドが人手不足だろうが私達には関係ない」

「ですねっ」


 否定的な意見ばかりだがシージンは全く焦った様子を見せない。


「これまでの話だけではそうでしょう」

「ぐふ?」


 シージンがリオを見た。


「リオさん、あなたはナンバーズを探しにここカルハンにやって来たとお聞きしております。アグルを討伐して頂ければナンバーズを手に入れることができますよ」

「何?」

「ぐふ?まさか、アグルがナンバーズを持っているのか?」

「その通りですがそれは差し上げられません。冒険者が奪った者ですから流石に持ち主に返す必要があります」

「ぐふ?ではお前が持っているのか?」

「正確にはホスティ様が所持しているものを報酬として差し上げるとのことです」

「……」


 リオの表情が少し変化した。

 それは喜びではなかった。


「俺にホスティのお下がりを使えと?」


 サラはリオがグラマスの名を覚えていたことにちょっと驚いた。


(不機嫌そうに見えるのは前のやりとりを覚えていたから?でも何か違和感があるわ)


 シージンは表情を変えなかったがリオの反応に内心焦っていた。


(ホスティ様の名を出したのがまずかったようですね。そこまで嫌っているとは思わなかったのですが)


 シージンはリオが戦バカであることを最大限に利用することにした。


「あとアグルはラグナ使いです」


 その言葉はリオに効果覿面であった。


「それは本当か?」


 シージンは手応えを感じ、内心ガッツポーズをしながらも平然とした顔で続ける。


「はい。リオさんはラグナ使いに会いたがっているという情報を以前に耳にしました。実際にラグナを見るだけでなく戦うことができますよ」

「わかった」


 リオはあっさりと依頼を承諾した。



 シージンは内心ほっとしながらもう一人の賞金首のことを話す。


「こ依頼にはまだ続きがあります。実はそこにはアグルだけでなくもう一人賞金首がいるようなのです」

「もう一人ですか」

「皆さんもよくご存知の人物、無能のギルマスことゴンダスです」

「「「!?」」」

「既にご存知かもしれませんがゴンダスはマルコの領主の城にある地下牢に囚われていたのですが脱走しました。それだけでなく、禁止薬物を使い冒険者を洗脳しクズ冒険者に育て上げていたのです」

「ぐふ、クズが減らないは奴のせいというわけか」

「では、ゴンダスも闇ギルドに匿われているということですか」

「それについては私どもは疑っています」

「え?」


 シージンは申しわけなそうな表情をして言った。


「ここまで話を進めておいて申し訳ないのですが、アグル及びゴンダスの居所は意図的にリークされたのではと疑ってもいるのです。これは何者かの罠なのではないかと」

「ちょっと待ってください。よくわからないのですが、罠だとしてその罠を仕掛けた者達は何をしたいのですか?誰かを罠にはめたいのですか?」

「そこまではわかりません」

「ぐふ、つまりだ、罠かもしれないところへ、最悪、アグルとやらがいないかもしれないところへ私達に行けというわけだな」

「罠ではないとも言えませんし、もしそうだとしても皆さんであれば問題ないと信じております」


 リオが吐き捨てるように言った。


「信じるのは勝手だがな」


 そして続ける。


「だが、やってやる。シャイニングクリーナー探しに飽きていたところだからな」


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