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856話 グレートヒーローズの逆襲

 ギルド職員達が去った後、リーダーが拳をテーブルに叩きつけた。


「このままじゃ終われねえぜ!特に奴ら、リサヴィの奴らは絶対に許さねえ!」

「確かにあいつらが来たせいで俺らの立場が悪くなったぜ!」

「だな!」


 しつこく絡んで来たのは彼らの方なのだがそのような正論が彼らに通じるはずもない。


「でもよ、流石に全員は無理だよな?」

「そんなこたあわかってる」

「じゃあ、誰を狙うんだ?」

「……冷笑する狂気、いや、リッキーキラーをぶち殺す!」


 リーダーがリオを標的に選んだのは消去法であった。

 自分の攻撃魔法で仕留めるのが絶対条件だ。

 これは絶対に譲れない。

 自分達をボコったヴィヴィを一番の標的に選びたかったのだが自由自在に操るリムーバルバインダーが厄介であり、魔術士でもある可能性が高く魔法耐性が高そうだ。

 サラとアリスはジュアス教団の神官であり、無詠唱で発動する神聖魔法が非常に厄介で魔法耐性も当然高いだろう。

 ということで一番魔法耐性が低いと思われる戦士のリオが選ばれたのだ。

 何度もクズ呼ばわりされた怒りもあった。


「勇者候補を殺されればジュアスの神官ども泣き喚くぞ!がはは!!」


 リオを標的にすると聞いて戦士が不安を口にする。


「だけどよリーダー。本当に大丈夫か?奴はサンドクリーナーやデザート・リヴァイガ・リバースをたった一人で倒したバケモンだぞ」

「確かに奴は強い。だがな、所詮は脳筋の戦士だ。近づけさせなければどうということはない!」


 スカウトも不安を口にする。


「いや、でもリバース体を倒したのはリムーバルバインダーの技術を使った魔道具らしいぞ。それはどうするんだ?」

「ったく。お前もか」

「す、すまねえ。だけどよ……」

「いつも通りやりゃいいんだ。いつも通りな」

「そ、そうか!罠にはめるんだな!」

「なるほどな!」


 彼らはこれまでも卑怯な手を使って気に入らない者達を葬ってきた。

 それをリオにも行うつもりなのだ。

 こうして“彼らの”運命は決した。

 彼らはスキップしながら断頭台に登っていることに気づいていなかった。



 その日の夜。

 ザッパー号はまだ移動を続けていた。

 この辺りは砂砂漠地帯で着地すると船が沈んでしまう。

 それにサンドクリーナーの襲撃を受ける可能性があるということでもある。

 そのため地面が固い岩石砂漠地帯を目指しているのだ。


「リオ?」


 部屋を出て行こうとするリオにサラが声をかける。


「ちょっと空を見てくる」

「空ですか」

「あっ、じゃあっわたしもっ」


 アリスがついて来ようとするがリオは首を横に振る。


「クズどもが絡んで来て面倒だ」

「それはサラさんですよっ」

「おいこら!」

「ぐふ、アリス。いい加減自覚しろ。お前もサラと同じだとな」

「おいこら!」

「酷いですっヴィヴィさんっ!」

「あなたもね!」


 言い争いをする三人を後にリオは部屋を出た。

 リオが部屋を出てすぐに待ってましたとばかりにグレートヒーローズのスカウトが寄って来た。

 接近禁止などどこ吹く風である。


「おいお前!冷笑……リッキー、じゃなくて、まあいい。ちょっと相談があっからよ、ついてこ……て、てめえ!待ちやがれ!」


 リオはスカウトを無視してスタスタと先を進む。

 スカウトはリオの後を追いながら喚きまくる。

 しかし、リオの行き先が甲板だと気づくと口を閉じた。

 クズスマイルを浮かべて。



 リオが甲板に上がるとそこにはグレートヒーローズの残りのメンバー、リーダーと戦士が待ち構えていた。

 そう、スカウトの役目はリオをここへ誘い出すことだった。

 誘うのは失敗したが元々リオの向かう先は甲板だったので結果オーライである!

 スカウトがすっとリオのそばから離れる。

 直後、リーダーが「パラライズ!」と叫んだ。

 スカウトがリオを連れてここへやって来る(実際は自分の意思でやってきたのだが)タイミングを測って呪文詠唱を終えており、あとはコマンドを発するだけの状態で待っていたのだ。

 麻痺の魔法がリオを中心に発動した。


「がははは!どんだけお前が強かろうと隙をつけばこんなもんだ!」


 動きを止めたリオを見てリーダーは勝ち誇った顔で話し始める。


「助けを期待しても無駄だ。しばらくここには誰も来ねえからな!」

「……」


 グレートヒーローズは今晩、甲板を見回る担当のギルド警備員に話をつけていた。

 そのギルド警備員が彼らの指示に従ったのは彼らのクズ行為を尊敬していたからだ、

 なんてわけはなく、リーダーの父親の名を出されて屈しただけだ。

 グレートヒーローズは甲板で何をするか言わなかったし、彼も関わりたくなかったので何も聞かなかった。


「おめえは俺らを馬鹿にし過ぎた。だからここで殺す!」

「……」

「本当はよ、いきなりファイアボールを喰らわせてもよかったんだがよ、何が起きたかわからずに死ぬのはかわいそうだと思ってよ。俺の思いやりに感謝しろよ」


 確かにそれも理由の一つであったが大部分はリオが恐怖に歪む顔が見たかったからだ。

 リーダーはパラライズをかけて表情が変わるわけないことに気づき内心舌打ちしながらリオを葬るための呪文を詠唱し始める。

 しかし、その途中で違和感を覚えた。

 麻痺しているはずのリオが立ったままだったことだ。

 ただ、そういう事も稀にあるのでそうだと思い込もうとした。

 その時、リオが言葉を発した。


「……丁度いい。お前達を“実験台“にするか」

「て、てめえ!俺の魔法を!パラライズをレジストしたってか!?」


 リーダーは魔法耐性が低いはずの戦士に自分の魔法がレジストされたことで深くプライドを傷つけられた。

 怒りで我を忘れて叫んだことで当然、詠唱は中断した。



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