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853話 デザート・リヴァイガ・リバース

 リバースすると一ランク上の強さを持つと言われている。

 つまり、このデザート・リヴァイガ・リバースはAランク相当ということだ。

 単純に力が増しただけではなかった。

 リバースすることで退化してただの飾りになっていた翼が力を取り戻した。

 飛行能力を獲得し接近戦が難しくなったのだ。

 Cランクパーティは遠距離攻撃でサポートすることになっていたため攻撃手段はあるが、デザート・リヴァイガ・リバースにダメージを与えることはできなかった。

 Bランクパーティは被害を抑えるためCランクパーティを船に避難させることにしてその間デザート・リヴァイガ・リバースの注意を引き付けることにした。

 ザッパー号にはまだBランクパーティのサンドレインが残っており、この状況を知れば彼らが救援に駆けつけるはずだ。

 リバースしたとはいえ、Bランクパーティが力を合わせれば倒せると思っていた。

 しかし、デザート・リヴァイガ・リバースの強さは想像以上だった。

 Bランクパーティの魔装士は左肩に装備していたリムーバルバインダーを操りなんとかデザート・リヴァイガ・リバースの攻撃をかわしていたが、そんな中で砂に足を取られバランスを崩した。

 そこへデザート・リヴァイガ・リバーズが襲いかかる。

 リムーバルバインダーで受け流そうとしたがダメージが蓄積されており攻撃を受け切れず噛み砕かれた。

 更に左腕を丸ごと食い千切られた。


「ぐふ!?」


 即死は免れたが重傷を負いその場に倒れる。

 止めを刺すべく空中でUターンしたデザート・リヴァイガ・リバースが魔装士に再度攻撃を仕掛ける。

 が、途中で進行方向を変えた。

 直後、目元付近に短剣が当たりその硬い鱗に弾かれた。

 その短剣はリオが放ったものだった。

 もし、デザート・リヴァイガ・リバースがそのまま魔装士に食いついていたら短剣が目に直撃しただろう。

 魔装士の命と片目のトレードが気に入らず攻撃を中止して避けたのだ。


「なかなかやるじゃないか。さすがリバース体と言ったところか」


 デザート・リヴァイガ・リバースは今の攻撃でリオが一番危険だと判断しリオを標的に変えた。

 その隙にサラが大怪我した魔装士の元へ駆け寄る。


「苦情は聞きません」


 サラはそう断って彼の返事を聞かずに再生魔法をかけた。

 一瞬で失った左腕が再生し、驚いた顔をするがその顔は仮面で見えない。

 彼のパーティの魔術士も再生魔法を持っていたが明らかにサラの神聖魔法の方が上だった。


「……ぐふ、助かった」


 魔装士はジュアス教団の神官に助けられたのが屈辱だったが感謝の言葉を述べた。

 とっても不機嫌な声で。



 Bランクパーティ四人がかりで抑えるのがやっとだったデザート・リヴァイガ・リバースの攻撃をリオはたった一人で抑え込んでいた。

 リオがデザート・リヴァイガ・リバースに見下した目を向けヘイト値を独り占めしたお陰で他の者は目に入らなくなったようだ。

 その隙にCランクパーティは無事船内に避難することができた。

 今、外に出ているのはリオとサラ、そして討伐依頼を受けたBランクパーティだけだ。

 だが、実際に戦っているのはリオだけである。

 下手に手を出してはリオの邪魔になると思ったからだ。

 それほどまでにレベルの違う激しい戦いを繰り広げていた。

 互いに無傷だが、そこには大きな違いがある。

 リオが無傷なのは攻撃を全て回避しているからだが、デザート・リヴァイガ・リバースが無傷なのはリオの攻撃が通らないからだ。

 リオの武器が魔道具のポールアックスだったら話は違っただろうが、今、手にしているのはフォリオッドが鍛えた剣だ。

 優れた剣ではあったが魔道具ではない。

 以前のように鱗の隙間に突き刺そうとしたがリバースした体は硬く、魔道具ではなく強化魔法もかかっていないリオの武器ではダメージを与えることができない。

 現状、唯一の弱点と言える目を狙った攻撃は悉く外される。


「おい、強化魔法をかけた方がいいんじゃないのか」


 そうサラに声をかけて来たのはBランクパーティのリーダーだ。

 本当ならジュアス教団の神官であるサラに話しかけたくはないのだが、メンバーを救ってもらった恩があるし、今はそんなことを気にしている場合ではない。

 彼らのパーティにも強化魔法を使える魔術士はいるがサラが使用しないので何か理由があると思い確認を取ったのだ。

 サラはリーダーをチラリと見てから言った。


「そうですね。ですがそれはリオが要求したらです」

「本気で言ってるのか!?」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?相手はリバース体だぞ!!」


 サラもそう思うがリオが望んでいるのだから仕方がない。


「リオは戦バカなんです」


 その言葉にBランクパーティは沈黙した。

 その後、リーダーがぼそりと呟いた。


「……ブラッディクラッケンに戦いを挑むわけだ」



 サラが決め手に欠けてダメージを与えられないリオを見かねて声をかける。


「リオ、加勢しましょうか?」


 サラの言葉にリオはつまらなそうに答えた。


「もう終わらせる」


 リオは有言実行した。

 デザート・リヴァイガ・リバースの上空から降下しての噛みつき攻撃を回避した。

 空中でUターンし再び口を大きく開けた瞬間を狙って短剣を放った。

 デザート・リヴァイガ・リバースは短剣が口の中に消えた直後に悲鳴を上げる。

 しばらく空中でもがいていたが落下して地面に激突した。

 その目を突き破って短剣がリオに元に戻って来た。

 リオが放った短剣は魔道具であるリムーバルダガーだった。

 内部から攻撃を仕掛けていたのだ。

 リバースすることによって鱗や皮膚が強化されても流石に内部は大して強化されていなかったというわけである。

 リオは戻って来たリムーバルダガーがいろんなもので汚れているのを見て少し顔を歪めると手にすることなく、再びデザート・リヴァイガ・リバースに向かって放つ。

 悶えているところに残りの目を潰しながら再び体内に侵入させて内部を抉る。

 リムーバルダガーの存在を知らないBランクパーティであったが、流石にリオの放ったダガーが魔道具であると気づいた。

 使われている技術がリムーバルバインダーと同じであることも。


「ぐふ!?あの武器はなんだ!?まさかジュアス教団がカルハンに対抗して開発したのか!?」

「違います」


 魔装士の問いにサラは簡潔に答えた。

 魔装士が更に質問をしようとしたところでデザート・リヴァイガ・リバースが一際大きな悲鳴を上げた。

 デザート・リヴァイガ・リバースの口から何かが飛び出した。

 それはプリミティブだった。

 リムーバルダガーが体内からプリミティブを抉り出したのだ。

 遅れてリムーバルダガーが飛び出して来た。


「サラ」


 サラはリオの意図を理解して宙に浮かぶリムーバルダガーにリフレッシュをかけた。

 リオは綺麗になったリムーバルダガーを鞘に収めるとチラリと地面に転がっているプリミティブを見た。

 それだけだ。

 もう用はない、とでもいうようにまだ息のあるデザート・リヴァイガ・リバースを放って船に向かって歩き出す。


「後はお任せします」


 サラが呆気に取られているBランクパーティにそう告げるとリオの後を追った。

 途中で救援にやって来たBランクパーティ、サンドレインとすれ違ったがお互いに声をかけることはなかった。



 リバース体とはいえ、プリミティブを抜かれては長くは生きられない。

 既にリムーバルダガーに内部を抉られてボロボロだ。

 だが、流石リバース体と言うべきか中々死ななかった。

 サンドレインが合流し、二組となったBランクパーティは油断せず慎重に攻撃を重ねて息の根を止めた。

 止めを刺したのは魔装士のパイルバンカーだった。


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