851話 グレートヒーローズ、吠える!
気づけば20万PVを達成していました。
ありがとうございます。
一応、年内完結を目指していたのですが多分無理です。
ざまあのアイデアが浮かんで浮かんで本筋からすぐに外れてしまうんです・・・。
カルハン出身の探索者達は差はあるものの皆ジュアス教団に良い感情を持っていない。
グレートヒーローズがリオ達の正体をバラすことで狙い通り船内で孤立させることに成功した。
だが、それだけだ。
サラとアリスがカルハンとジュアス教団との戦いに参加していたわけではないし、この場にいる探索者達に直接何かしたわけでもない。
それに対してグレートヒーローズは彼ら自身が直接ここにいる探索者達の手柄を奪ったり嫌がらせをしていた。
デザートナイフのエルエルの言葉を信じるなら過去にはなんの罪もない探索者を殺してもいる。
そんな彼らと依頼を一緒に受けたい者がいるはずがなかったのである。
ヴィヴィが心底馬鹿にした口調で言った。
「ぐふ、クズにふさわしい嫌われっぷりだな」
「「「ざっけんな!誰がクズだ!?誰が!?」」」
グレートヒーローズのリーダーが探索者達に向けて叫ぶ。
「お前ら!カルハンの敵にバカにされて悔しくねぇのか!?」
それに対する回答は的確だった。
「馬鹿にされてんのはお前達だけだ」
「「「ざっけんな!」」」
思い通りにことが運ばずリーダーは怒り喚き散らす。
「てめえらは皆カルハンの裏切りもんだ!そうパパに報告されたくなければ俺らと組め!依頼を受けろ!!」
リーダーはパパの名を出せば皆従うと思った。
これまではそうだった。
しかし、リオ達がリサヴィだとわかったことで探索者達の中で何か変化が起きたのか彼らと依頼を受けようとする者は現れなかった。
「いい加減黙れ!!」
声の主のプレッシャーに喚き散らしていたグレートヒーローズの面々はびびって口を閉じた。
「お前達はさっきから誰に向かって言ってんだ?」
それはBランクパーティのリーダーだった。
そのパーティだけでなく、アーヴィスのいるサンドレインのメンバーもグレートヒーローズの面々を睨みつける。
「「「ぐ……」」」
高圧的な態度で喚いていた彼らであるがBランクの者達に睨まれて一旦は引き下がる。
ギルド職員が今回の依頼内容を冷静に分析して結論を述べる。
「グレートヒーローズの皆さん。申し訳ありませんが今回はご遠慮願います」
「ざっけんな!こいつらの我儘を許すっていうのか!?あん!?」
相手がギルド職員となって再び勢いを取り戻すグレートヒーローズ。
リーダーに睨みつけられたギルド職員だが怯むことはなかった。
「私どもは魔物をより安全に倒せる方を選択いたします。グレートヒーローズの皆さんが参加することで他の方達が戦いに集中できないと言うのですから仕方がありません」
「ざっけんな!」
「俺らにも依頼を受ける権利はあんだろうが!」
「もちろんです」
「なら俺らも参加させろ!」
「「「だな!」」」
「そうしますとあなた方だけで依頼を受けて頂くことになりますがそれでよろしいのですか?」
「馬鹿野郎!よろしいわけねえだろ!」
「こいつらも参加させろ!ギルドの権限でな!」
「だな!」
ギルド職員が首を横に振る。
「仲の悪いパーティが共同で依頼を受ければ一組で受けた場合よりも成功率が下がることもあります。皆さんは経験豊富なCランク探索者なのですからそのことを十分ご存知だと思うのですが」
「「「ざっけんな!」」」
ギルド職員は何故怒鳴られたのかわからないが気にせず続ける。
「どうしてもと言うのであれば私どももこれ以上反対はしませんがどうしますか?」
「『どうしますか』じゃねえだろうが!」
「デザート・リヴァイガはBランクの魔物だぞ!いくら俺らの腕が確かでも俺らだけじゃキツイに決まってんだろうが!」
実際はキツイどころか不可能なのだがプライドの高い彼らはそれを認めたくないため控えめな表現で言い返した。
ここでリーダーがまたも自爆発言をする。
「俺らが死んでもいいのか!?あん!?」
直後、ギルドルームがしん、となった。
その沈黙はもちろん「死んだら困る」という意味ではない。
「どうぞどうぞ!」
であった。
これだけ嫌われているのだからそうなることがわかりそうなものであるが何故か彼らはわからなかった。
追い詰められたグレートヒーローズのメンバーが味方する者はいないかとルーム内を見渡し、あるパーティが目に止まる。
彼らの顔がクズスマイルへと変わる。
「おい、お前ら!お前らも受けろ!」
彼らが共闘を持ちかけた相手はなんとリオ達デスサイズであった。
「ここはよ、嫌われ者同士一致団結しようぜ!」
そう言ったリーダーは相変わらず上から目線であった。
もはや彼らの行動は支離滅裂であった。
もともと彼らがこの依頼を受けようとしたのはリオ達にカルハンの探索者達が団結した姿を見せつけ、「俺らに逆らうと探索者全員を敵に回すぞ!」と脅してどちらの力が上かわからせるためであった。
ところが、わからせたのは自分達がリオ達より嫌われているという事実だった。
怒りのあまり当初の目的を忘れ、依頼を達成することだけに頭がいってしまい、自分達の力を見せつけようとした相手に力を借りようとしたのだ。
もちろん、リオ達が彼らの提案を飲む事は無い。
リオ達が嫌われ者、孤立することになったのは彼らが余計なことを言いふらしたからだ。
自分達の立場が悪くなったから手を組もうなど都合が良過ぎるにも程がある。
ちゃんちゃらおかしいのである。
そもそもリオ達は孤立しても全く困らない。
それだけ圧倒的な力を持っているのだ。
なんなら遺跡探索者ギルドを退会させられても構わない。
探索者になった理由はただ一つ。
カリスの愚行によって失われたナンバーズを手に入れるのに都合がよさそうだったからだ。
ただ、それだけなのだ。
ジュアス教団の神官であるサラとアリスは何か言えば彼らだけでなく他の探索者達も不快にさせるかもしれないので口を出すのを控えていた。
(空気の読めないことには定評のあるアリスにはサラが小声で伝えていた)
再三に渡り脅しとも取れる口調で共闘を持ちかける彼らにヴィヴィが面倒臭そうに答えた。
「ぐふ、いい加減気づけクズ。何故私達が嫌がらせしたお前達クズと一緒に依頼を受けると思う?」
「ざっけんな!」
「誰がクズだ!?誰が!?」
「俺らは嘘ついてねえだろ!」
「お前らがリサヴィで!ジュアス教団の神官がいることに違いねえだろうが!」
「嘘をついたおめえらが悪いんだろうが!!」
「それを俺らは水に流してやるって言ってんだぞ!俺らに泣いて感謝して『喜んで協力します』っていうところだろうが!」
彼らの自分勝手な言い分にヴィヴィ達だけでなく探索者達も呆れる。
「ぐふ、私達は嘘などついていない。言う必要がないから言わなかっただけだ」
「ざっけんな!そんな言い訳が通じると思ってんのか!!」
グレートヒーローズは上から目線で命令することしか知らないようで頼み事をするのがとことん下手だった。
これまではそれでうまく行ったかもしれないがそれは相手が格下、またはリーダーのパパの権力を恐れたからだ。
リオ達はそのどちらもでもない。
「ぐふ、ともかくだ。お前達クズと依頼を受ける気など全くない」
「「「ざっけんな!!誰がクズだ!?誰が!?」」」




