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850話 デスサイズ、孤立する

 ザッパー号が停止し、魔物討伐を知らせるブザーが鳴った。

 リオ達がギルドルームに入ると探索者達の会話が途切れた。

 サラは嫌な雰囲気を感じたがリオはそのことに気づかないのか特に気にした様子もなく、身近な空いている席に着く。

 それにヴィヴィとアリスが続く。

 サラは「私達の中に繊細な者はいないわね」と内心思いながら席に着いた。

 リオ達が席につくと会話が再開したが、リオ達に話しかけてくる者はいなかった。

 

(これは私達がリサヴィだ、いえ、私とアリスがジュアス教団の神官だと気づかれたわね)



 グレートヒーローズがギルドルームにやって来た。

 とっても偉そうな態度でリオ達の前に立つ。


「ぐふ、懲りない奴らだな」


 ヴィヴィが面倒くさそうに呟く。


「グレートヒーローズの皆さん、接触禁止は解けていませんよ!」


 注意するギルド職員にリーダーが偉そうに言った。


「おいおい慌てんなって。俺らは先のサンドクリーナー討伐を褒めてやりに来ただけだ」

「「だな!」」


 どんな理由であろうと接触禁止は変わらないはずだが彼らは違ったようだ。

 リーダーがクズスマイルを浮かべる。

 メンバーもだ。

 リーダーがギルドルームにいる全ての者達に聞こえるように大声で言った。


「流石リサヴィだ!なあ、ジュアス教団の鉄拳制裁サラ!そしてアリエッタ!」


 サラ達は自分達がリサヴィであることを皆に知らせたのは彼らだと確信する。

 スカウトが「どうだ!」みたいな顔をしているところから彼がサラ達のことを調べたのだとわかる。


(この船の中で確実に私達がリサヴィだと知っているのはギルド関係者だけ。アーヴィスは気づいているようだったけどサンドクリーナー退治の時にはフォローしてくれたし考えにくいわね。そうなるとギルド職員の話を盗み聞きしたか、ギルド職員の中に協力する者達がいる可能性が高いわね)


 グレートヒーローズのリーダーは周囲の反応が予想通りで満足する。

 いや、まだ足りない。


「こいつらは俺らカルハン人共通の敵だ!」

「ジュアス教団のスパイに違いねえ!」

「こいつらと仲良くする奴らも皆スパイだぞ!!」


 彼らは「がははは!!」と大声で笑う。

 その姿はとっても幸せそうだった。



「皆さん席についてください!」


 ギルド職員の声を受け、グレートヒーローズがどん、と偉そうに席についた。

 ギルド職員がリオ達のフォローをする。


「デスサイズの皆さんがリサヴィであることは事実です。ですが、遺跡探索者ギルドは彼らを探索者と正式に認めていますので冷静な対応を求めます」

「「「ざっけんな!!」」」


 喚いたのは言うまでもなくグレートヒーローズだ。


「こいつもグルだ!」


 そう言って説明していたギルド職員を指差す。


「そうに違いねえ!」


 ここで彼らは失言をする。


「これまでの俺らに対する数々の嫌がらせからもわかんだろう!!」

「「だな!!」」


 直後、ざわついていたギルドルームがしん、となった。

 これはリーダーの想定外であった。

 彼はこのあと皆でギルド職員を責めて自分達にやって来た数々の嫌がらせ(リーダー視点)への謝罪をさせようとしていたのである!


「では今回の依頼について説明します」

「お、おい……」


 ギルド職員はグレートヒーローズのリーダーの声が聞こえなかったかのように説明に入ろうとする。

 それに待ったをかけたのはサラだった。


(このまま何も言わないわけにもいかないわよね)


 サラがすっと手を上げた。


「サラさん、なんでしょうか?」

「少しお時間をいただけますか?」

「……わかりました。どうぞ」


 サラはアリスに視線を向けた後で立ち上がる。

 アリスがサラに続いて立ち上がった。


「確かに私達はジュアス教団の神官ですが皆さんに敵対する意思はありません。そのようなものがあればここに来たりはしません」

「ですねっ」

「そんなもん信じられっか!」

「バレバレな嘘をつくんじゃねえ!」

「とっととカルハンから出て行け!」


 すかさずグレートヒーローズからヤジが飛んだがサラは気にせず続ける。


「私達は皆さんに危害を加える気は全くありません。しかし、無抵抗と言うわけではありません。何かされたらそれ相応の対応をします」

「ですねっ」

「ぐふ、どこかのクズをぶっ飛ばしたようにな」


 ヴィヴィがサラの補足をするとすかさずそのクズ達が「ざっけんな!」と叫んだ。

 言いたいことを言い終えてサラとアリスが席についた。



 ギルド職員が依頼の説明を始める。


「今回の討伐対象はデザート・リヴァイガです」


 魔道具、大望遠くんにその姿が映し出される。

 デザート・リヴァイガは蛇に翼が生えたような姿でBランクにカテゴライズされる魔物だ。

 今回のものは全長が十メートルに及ぶ。

 このデザート・リヴァイガはザッパー号に気づいているようだった。

 この辺りはこのデザート・リヴァイガのテリトリーのようで逃げる様子はなく、ザッパー号に対して威嚇していた。

 放っておけば向こうから攻撃を仕掛けてきそうであった。


「デザート・リヴァイガの他に少し離れたところでサンドウォルーの群れが確認されております。討伐が長引きますとサンドウォルーの乱入もありえますのでご注意願います」


 サンドクリーナーを討伐したBランクパーティのサンドレインとは別のBランクパーティと二組のCランクパーティが挙手した。

 その様子を見てからグレートヒーローズのリーダーが偉そうに手を挙げた。

 ギルド職員がギルドルームを見回してから口を開く。


「……参加者はグレートヒーローズの皆さんだけですか?他はいませんか?」


 ギルド職員の言葉にグレートヒーローズのメンバーは慌てて周囲を見渡す。

 確かに彼ら以外誰も手を挙げていなかった。

 グレートヒーローズのリーダーがさっきまで挙手していた者達を怒鳴りつける。


「おいお前ら!何やってんだ!さっきまで手挙げてただろうが!」

「怖気付いてんじゃねえぞ!」


 先程手を挙げていたBランクパーティの一人が不機嫌な顔をしながら言った。


「お前達が受けるなら俺達は受けない」

「ざっけんな!」

「そんな我儘が許されっと思うのか!?あん!?」

「お前達クズがいると魔物退治に専念できない」

「「「誰がクズだ!?誰が!?」」」


 グレートヒーローズのメンバーが彼を睨んだ。


「カルハンの敵の前で足並み乱してどうすんだ!?恥を知れ!恥を!!」


 グレートヒーローズのリーダーがリオ達を指差しながら探索者達に喝を入れる。

 が、当の探索者達は彼らに冷やかな目を向けるのみであった。



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