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847話 デザートナイフのエルエル

 サラは内心でため息をついた。


(結局、こうなってしまったのね。とは言ってもそれしか手はなかったでしょうけど)


 クズ、もとい、グレートヒーローズが沈黙したところでギルド職員が我に返る。


「ヴィ、ヴィヴィさん!」

「ぐふ、正当防衛だ」

「ですねっ」


 あほ面晒して気絶しているクズ、もとい、グレートヒーローズの状態を確かめていたギルド職員がヴィヴィに抗議する。


「やりすぎです!」

「ぐふ?」


 ヴィヴィは首を傾げた。


「ぐふ、奴らは殺しに来たのだぞ。それを私は殺さないでやったのだからやり過ぎなわけないだろう。それにあのクズリーダーが唱えていたのはファイアボールだ。放っていたらギルドルームが燃えて死者が出たぞ」


 「お前達職員のことだぞ」とギルド職員をじっと見る。

 そのことにギルド職員は気づく。


「う……」

「ぐふ。感謝されこそすれ文句を言われる筋合いはない」

「そ、それはありがとうございます。ですが……」

「ぐふ、そもそもだ。奴らは前にもリオを殺そうとしたぞ。そんな頭のおかしい奴らが何故接触禁止などという軽い罰で済んでいるのだ?」


 ヴィヴィの後にサラが続く。


「実際にはその罰も意味をなしていないようですしね」

「ですねっ」

「そ、それは……」


 ギルド職員が口ごもる。


「ぐふ、私が手加減してこのクズどもを殺さなかったのはお前達の面子を保つためだ。さあ、さっさと処分しろ。なんなら私が処分してやってもいいぞ」


 ヴィヴィの言う処分、イコール処刑だと誰もが気づく。


「そ、それはダメです!」


 ギルド職員が慌ててヴィヴィを止める。


「ぐふ、それほどあのクズリーダーのパパとやらが怖いのか?」

「そ、それは……」

「待てヴィヴィ」


 ギルド職員は同じパーティメンバーのリオが止めに入って安堵した。

 安堵してしまった。

 彼はリオのことを全くわかっていなかった。


「俺にいい考えがある」

「ぐふ?」

「このクズ達を餌にしてサンドウォルーを誘き寄せるのに使おう。集まってきたところにファイアボールなどの範囲魔法をぶち込めばいい」


 リオが笑顔になった。

 これまでの無表情よりもその笑顔の方が不気味だった。

 美形なだけにそこに秘められた残虐性がより増す。


「どうせ生きていてもロクなことをしない奴らだ。せめて最期くらい俺達の役に立ってもらう。クズが処分できてサンドウォルー討伐も安全にできる。一石二鳥だ」


 そこに集まった探索者達はリオの顔を見て本気で言っていると察した。

 ヴィヴィの力を目の当たりにした今、彼らがただのFランク探索者ではないことに気づいていた。

 戦闘経験豊富な冒険者、あるいは傭兵であると。

 ただ、彼らが冒険者だった場合、疑問が残る。

 冒険者が探索者になる場合は冒険者優遇制度を用いて冒険者のランクに近いところからを始めることができるはずなのでFランクなのはおかしい。

 考えられるのは何らかの理由で優遇制度が利用できなかった、あるいは元から受けなかったかだ。

 もちろん、どれが正解なのか考えたところでわかるはずもない。


「リオさん、あなたの提案には賛成できません」


 リオがそう言ったギルド職員を見た。

 彼は背中にゾッとするものを感じたがそれを一切表情に見せず理由を述べる。


「彼らの行いは決して許されるものではありませんが、そのような非人道的なことを私共は是としません。しかし、彼らのやったこと、やろうとしたことを許すことが出来ないのもまた事実です」

「……」

「ですので彼らには牢屋で反省してもらうことにします」


 その処分にヴィヴィが不満を口にする。


「ぐふ、甘いな」

「これは遺跡探索者ギルドとしての決定ですので従っていただきます」


 ヴィヴィがチラリをリオを見る。

 リオは違を唱えなかった。

 同意したとも言わなかったが。

 ギルド職員は無言を肯定と判断した。

 ギルド警備員達がクズ、もとい、グレートヒーローズを引きずってギルドルームを出て行った。


「では本題に戻ります。デスサイズの皆さんもサンドウォルー討伐に参加したいとのことですが、許可致します」


 そう言った後、この依頼を受ける探索者達に目を向ける。


「ヴィヴィさんの実力については今見て頂いた通りです。ヴィヴィさん以外の方達も私どもが保証します」


 リオ達が参加することに誰も反対しなかった。



 サンドウォルーが棲家としている洞窟だが、ザッパー号が停船した場所から歩いて半日ほどかかるところにあった。

 ザッパー号は移動する際にそれなりの騒音を発する。

 これ以上、近づかないのはサンドウォルーがその音を聞きつけて逃げ出すのを避けるためだ。

 とは言え、徒歩で向かうわけではない。

 近くまでは発する音が小さい小型のサンドシップで向かうことになり、三隻が出発した。

 探索者が多く乗っているので倒したサンドウォルー全てを載せるのは厳しいだろうからその場で解体し価値ある素材を優先して載せることになるだろう。

 リオ達デスサイズと一緒のサンドシップに乗り込んだ探索者の一人がヴィヴィに話しかけて来た。

 

「ヴィヴィと言ったか、見事だったな」

「……」

「ああ、悪い。まだ名乗ってなかったな。俺はエルエル。デザートナイフのリーダーだ。ちなみにランクはCだ」

「ぐふ、そうか」


 ヴィヴィが素っ気ない返事をするもののエルエルは気にした様子を見せず話を続ける。

 

「ほんとスッキリしたぜ。アイツらお前達だけじゃなく他の奴らにも迷惑かけてたんだ。噂じゃアイツらに殺された奴もいるって話だ。手を抜かずに殺してくれてもよかったくらいだぜ!あ、今のは冗談だぜ冗談。あははは」


 ヴィヴィは彼の目が笑っていないのに気づいた。


「ぐふ、その殺された奴はお前の知り合いか?」

「はははっ。冗談だって。本気にすんなよ」


 そう言ってエルエルは離れていった。

 


 サンドウォルー討伐だが、特筆することはない。

 洞窟内のサンドウォルーを一掃する際に怪我人が何人か出たがどれも軽微で死者は出なかった。

 リオ達は後方にいたため大して活躍しなかったがそれでも五体のサンドウォルーを仕留めた。



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