846話 グレートヒーローズ、見事なあほ面を晒す
グレートヒーローズの面々が堂々とした態度でギルドルームの出口へと向かう。
と、リーダーが何か思いついたらしく足を止め振り返ってサラ達を見た。
「おい、そこの女ども。お前らFランクは出番がねえだろ。遊んでやるから俺らの部屋に来い!」
そう言ってリーダーが鼻の下を思いっきり伸ばしながら自分達の部屋の番号を口にする。
メンバーもリーダーに負けるものかと鼻の下を思いっきり伸ばす。
ギルド職員が頭を抱えながら言った。
「あなた方はデスサイズの方達との接触は禁止です」
リーダーは笑みを浮かべながら言った。
「勘違いすんじゃねえ。俺らから近づくんじゃねえ。あいつらからやって来んだ。奴らから来んなら話は別だろ」
「「だな!」」
彼らの根拠のない自信は半端なかった。
サラがため息をつく。
その直後、リオがすっと手を挙げた。
「リオさん、彼らのことでしたら私どもに任せてください」
リオは首を傾げた。
「何故俺がクズのことを気にするんだ?」
「「「誰がクズだ!?誰が!?」」」
彼らは見事にハモった。
リオは彼らを無視して続ける。
「俺達もサンドウォルー討伐に参加する」
リオ達はFランクであるので本来であれば今回のCランクの依頼を受けることはできない。
だが、狩猟船には特別ルールがあり、ギルド職員が許可すれば特別に依頼を受けることができるのだ。
「ぐふ、それもありだな」
「ですねっ」
「そうですね」
メンバーが賛同を示す中、デスサイズが依頼を受けることに反対する者達がいた。
クズ、もとい、グレートヒーローズだ。
「ざっけんな!!」
「何勝手なこと言ってんだ!?」
「勝手なこと言ってるのはお前達だろう」と思わず口にする探索者が何人かいたが幸いにも彼らの耳には届かなかったようだ。
「落ち着けーい!!」
グレートヒーローズのリーダーがそう叫んでメンバーを黙らせた。
「いや、あんたも一緒になって喚いていただろ」と皆が思ったが突っ込む者はいなかった。
誰もが彼らと関わりたくないからだ。
リーダーが偉そうな態度で言った。
「おめえと魔装士は勝手に依頼を受けてろ。許す。だが、女共は俺らの部屋に来い!これは決定事項だ!!」
「「だな!!」」
なんか偉そうな顔をしている彼らを無視してリオがギルド職員に言った。
「おい、あのうるさいクズどもを追い出せ」
リオの言葉にクズども、もとい、グレートヒーローズの面々が怒りを露わにする。
「クズはてめえだ!!」
グレートヒーローズのリーダーの短気はリオ達を軽く上回っていた。
リーダーの指示のもとスカウトは短剣を抜くと警告なしにリオに向かって放つ。
その短剣がリオに届くことはなかった。
間に割って入ったリムーバルバインダーに弾かれ床を転がる。
「てめえ!なんで邪魔すんだ!?」
ヴィヴィはスカウトの文句を聞く耳持たずで短剣を弾いたリムーバルバインダーをそのままスカウトの元へ向かわせる。
その速さはスカウトの想像を遥かに超えていた。
「て、てめえ!やる……ぐへっ!?」
ヴィヴィはリムーバルバインダーを下から上へスイングさせてスカウトの顎を殴りつけた。
スカウトは真上にぶっ飛ぶと天井に頭をぶつけ落下した。
普通の人間なら死んでいてもおかしくない一撃だが流石Cランク探索者と言ったところか死んではいなかった。
あほ面晒して気絶したスカウトを見てリーダーは悪鬼の如き表情で呪文の詠唱を始め、彼を庇うようにその前に戦士が大盾を構えてカバーに入る。
だが、その行動は全て無駄に終わる。
ヴィヴィはその大盾にリムーバルバインダーを思い切り叩きつける。
大盾はびくりともせず戦士はニヤリと笑うがヴィヴィの攻撃の本番はこれからだ。
リムーバルバインダーの上部を支点としてくるりと180度回転させ、戦士の後頭部に思い切り叩きつけた。
戦士はその動きを予測出来ずリムーバルバインダーと自分の大盾に頭をサンドイッチにされる形となった。
「ぐへっ!?」
鈍い音がし、鼻がへし折れ、歯も何本か折れた。
悲鳴を上げて崩れ落ちる戦士にヴィヴィは容赦なく更に一撃を加える。
戦士もあほ面晒して気絶した。
目の前で起きた光景が信じられずリーダーは詠唱するのを忘れ唖然とする。
その目前に新たな獲物を求めてリムーバルバインダーが迫る。
「ちょ、ちょ待て……ぐへっ!?」
ヴィヴィが待つことはなかった。
リムーバルバインダーでリーダーの右頬を殴りつける。
頬骨と顎が砕け、そのまま壁に激突する。
これまたあほ面晒して気絶した。
たった一人の魔装士、それもFランクの戦闘用ではないサポート型の魔装士にCランク探索者三人が瞬殺された。
その見事な操作技術に見惚れたのは同じ魔装士だけではなかった。
その場にいた者達全員だ。
その中にはギルド職員も含まれていた。




