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836話 狩猟船ザッパー号

 翌日の朝。

 リオ達が遺跡探索者ギルドへ向かっていると檻車を引いた馬車が前方からやって来た。

 その中には囚人服を着せられた者達がたくさん詰め込まれていた。

 恐らく罪の重さに応じた分、強制労働をさせられるのだろう。

 その中の一人が「あっ!」と叫んだかと思うとリオ達を指差した。


「てめえらのせいで罪人にされたじゃねえか!!」


 彼の叫び声に他の者達も反応し、リオ達に次々と罵声を浴びせる。

 サラ達は彼らが昨日のストーカー及び恐喝をして来たクズ者達だと気づく。


「ぐふ、さすがクズだな。罪を犯したことに気づいていないか」

「ですねっ」


 クズ達はこれが最後のチャンスと喚き続ける。


「おい!お前ら!今からでも遅くねえ!俺らの無実を証明しろ!」

「んでお前らが嘘をついたと正直に言って罪を償え!」

「おい御者!止まれ!真犯人は奴らだ!ホントだぜ!俺らが保証する!!」

「急げよ!」


 彼らは自分勝手に喚きまくるが馬車は止まらない。


「おい御者!さっさと止まらねえか!」

「あいつらが自白すっぞ!」

「俺らが無実だって話を聞けーーー!!」


 御者が馬車を止めることはなく、そのままリオ達の横を通り過ぎていく。

 こうして彼らはクズを卒業し、新天地で第二の人生を送ることとなったのであった。

 めでたしめでたし。


 

 遺跡探索者ギルドにやって来たリオ達はそのまま依頼掲示板へと向かった。

 遺跡探索者ギルドはその名が示す通り遺跡を探索するために作られたギルドである。

 この世界において遺跡≒ダンジョン(迷宮)であり、基本的に遺跡探索者ギルドがある街のそばにはダンジョン(迷宮)がある。

 この街も例に漏れずダンジョンが存在する。

 それも活ダンジョンがである。

 依頼の多くはこのダンジョンに出没する魔物の素材収集であった。

 リオ達はダンジョン攻略しに来たわけではないのでそれらの依頼を受ける気は全くない。

 シャイニングクリーナーの最新情報がないかと探したがそれらしいものはなかった。


「これではっ、目撃場所に留まっているのかっ移動したのかっわかりませんねっ」

「ぐふ、直近の目撃場所の近くの街まで徒歩だと最短でも十日はかかるな。しかもその間に街や村はない」


 カルハンの領土は広いだけでなく、砂漠が多い。

 そのため街と街との間がこれまで旅してきたところより離れているのだ。


「また乗合馬車でその街まで行きますか?都合よくあるかはわかりませんが」

「いっそのことっ、小型のサンドシップ買いませんかっ?」

「ぐふ、ここで手に入るかは微妙だな。それに手に入れたとしても置き場所に困るぞ。それよりピグウを手に入れた方が安くて済むだろう」


 ピグウはダチョウに似た鳥だ。

 馬の代わりにカルハンの砂漠を移動する足としてよく使われる。

 ダチョウと異なり足は四本あるが移動に使われるのは後ろ足の二本のみだ。

 前足は退化して小さく、常にピグモン(あるいはカマキリ)のような構えをしている。

 翼はあるが飛ぶことはできない。

 ただし、全く使い物にならないというわけではなく、風を利用すれば高いところ、例えば崖から飛び降りても無傷で着地出来る。

 性格は大人しく、走らせるにはそれなりの訓練が必要であるが歩かせるだけなら少し練習すれば誰でも出来る。


「ぐふ、いざとなったら食糧にもなる」

「「……」」

「なるほど」


 リオ達がピグウ購入に傾きかけていた時だった。


「探索者の皆さん!狩猟船ザッパー号がまもなく到着します!部屋の空きも多数あるとのことですのでご興味のある方はご検討をお願いします!」


 受付嬢のアナウンスを聞きアリスが首を傾げる。


「なんですかねっ?狩猟船ってっ?」


 アリスの問いに答えたのはヴィヴィだ。


「ぐふ、詳しくは知らないが素材集めに魔物討伐をしながら各地を回っている遺跡探索者ギルド所有のサンドシップだったと思う」

「あっ、じゃあそれを使えばっ」

「ぐふ、私達が目指す街に寄るかもな」

「話を聞いてみましょう」

「ああ」


 サラ達は受付嬢に狩猟船について尋ねた。

 要約すると次の通りだ。


・ザッパー号自体が遺跡探索者ギルド、ザッパー支部である。

・国内を移動し、遺跡探索者ギルドのない街や村に立ち寄った際は臨時ギルドとして機能する。

・魔物と遭遇したら討伐依頼が発せられ、乗船している探索者の誰かが依頼を受けなければならない。

 誰も依頼を受けない場合、ペナルティとして全員罰金を取られる。

 探索者のランクが低く討伐依頼を受けられない場合、ギルドが実力十分で討伐可能と判断した場合に限り、特別に依頼を受けることができる。

・採取した素材はその場でギルドが買い取ることになる。

 売りたくない素材がある場合は標準の売却価格の二割を支払うことで自分のものとすることができる。

・共闘して倒した獲物の素材配分で揉めた場合はギルドが判定を下す。

・費用は乗船代の他に部屋代、食事、風呂代が別途かかる。

 部屋は必ず必要なわけではなく、共用ルームで過ごしてもよい。

 風呂はギルド職員に入るよう言われたら必ず入らなければならないが、神官の神聖魔法リフレッシュでの代用も可能。

・乗船出来るのは基本的に探索者のみだが、探索者が身元を保証すれば探索者でなくても乗船できる。

 その者が問題を起こした場合は保証した探索者が責任をとることになる。



 肝心のザッパー号が寄る街だが、リオ達が目指す街に寄ることがわかったため、ザッパー号を利用して向かうことにした。


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