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831話 素材交渉

 叛逆の傭兵団を名乗るクズ達の残党処理は終わった。

 あと、周囲に潜んでいたサンドウォルーも大方片付けたはずだ。

 これでやっと本来の目的である埋葬作業に移ることが出来る。

 ちなみに埋葬するための穴は護衛の魔術士が土魔法で穴を掘った。



 商隊の隊長が乗客に出発が遅れることへの謝罪と「外はひどい有様で気分が悪くなりますので決して馬車から出ないようにして下さい」と注意をした。

 その後、サラの元へやってきた。


「あの、サラさんにご相談があるのですが」

「なんでしょう?」

「皆さんが倒した魔物、特にデザート・リヴァイガなのですが素材を譲って頂けないでしょうか?あ、もちろんそれ相応の代金をお支払いします!」

「それは倒したリオに聞いてください」

「そ、そうですか……」


 隊長はこちらへ歩いてやって来るリオをチラリと見てから何か言いたそうな顔でサラを見る。

 どうやら隊長はリオが苦手のようだった。

 いや、それは隊長だけではない。

 特に今のリオは不機嫌そうな表情をしており、近付き難い雰囲気を出していた。

 サラは隊長の意図を察した。


「私から聞いてみましょうか?」

「そ、そうですか!よろしくお願いします!」


 サラが戻って来たリオに声をかける。


「リオ」

「ん?」

「隊長さんがデザート・リヴァイガの素材を譲って欲しいそうなんですがどうしますか?」


 リオがそばにやって来たヴィヴィのリムーバルバインダーにポールアックスを格納しながら言った。


「どうでもいい」

「そうですか」


 サラが隊長に顔を向ける。

 

「とのことです」

「ありがとうございます!」


 隊長は嬉しそうな顔をしながらデザート・リヴァイガの解体の相談をするため護衛のリーダーの元へ向かった。



 隊長はデザート・リヴァイガの素材を全て回収したかった。

 デザート・リヴァイガの素材はとても価値がある。

 プリミティブは言うまでもなく、その牙と鱗もだ。

 特に鱗は硬く軽いので高級防具の素材として使われるものだった。

 しかし、護衛のリーダーの回答はシビアだった。

 いや、現実がはっきり見えていたと言うべきか。

 解体は護衛全員が出来るがデザート・リヴァイガは別である。

 出来なくはないのだが、流石に三体ともなると時間がかかり、その間に新たな魔物や盗賊がやって来る可能性がある。

 それに全て解体したとしてもそれらを運ぶ手段がない。

 叛逆の傭兵団を名乗るクズ達が使っていた台車を既存の馬達に引かせるにしても流石に全部載せた時のスピード低下は結果を見るまでもない。

 そんなわけでプリミティブと牙は全て回収するとして鱗はリオが上下に両断したもののみとして残りはクズ達の死体と同様に埋めることにした。

 サンドウォルーについてはプリミティブを優先して時間と場所に余裕があればその他の素材を回収することとした。



 デザート・リヴァイガの全長は十メートルを超える大きさだが、そのプリミティブはせいぜい子供の拳程度だ。

 その場所は決まっておらず、鱗が硬くて解体しにくいこともあり探すのは相当大変である。


「リオが斬った場所が探しやすいだろう。まずはそこから探せ!」


 護衛達が「はい」「了解」と返事してデザート・リヴァイガの元へ散っていく。

 まだサンドウォルーが潜んでいるかもしれないので周囲の警戒も怠らない。

 リーダーは上下に両断されたデザート・リヴァイガのプリミティブが一番最初に見つかるだろうと思っていた。


「リーダー!!」


 まだ、解体を始めたばかりであり、声を上げたのが経験の浅い護衛だったので泣き言を言うのかと思った。


「泣き事は聞かんぞ」


 その護衛は首を振る。


「違いますよ!プリミティブが見つかりました!」

「何?」


 その護衛が満面の笑みで手にしたものを掲げる。

 それは確かにプリミティブであった。


「よく見つけたな」

「断面のすぐそばにありました!」

「そうか。運が良かったな」


 その幸運は続き残りのプリミティブもすぐ見つかった。

 どれも断面のすぐそばにあったのだ。

 リーダーが一番早く見つかると思っていた上下に切り裂かれたデザート・リヴァイガのものが一番最後だった。

 他より断面が広いためその分、探す場所が多かったのだ。


「……まさかあいつ、プリミティブの場所がわかってて斬った……そんなわけないか」



 しばらくして街道を旅人や馬車が行き来するようになった。

 これまで通行がなかったのはたまたま、というわけではない。

 その者達の中にはこの商隊が襲撃を受けているのに気づき、事が済むまで遠くから様子を見ていた者達もいた。

 彼らを責めることはできない。

 仮に彼らが襲撃側を上回る戦力を持っており加勢したとしても無傷とはいかないだろう。

 万が一にも自分達が死んでは元も子もない。

 見ず知らずの他人のためにそこまでするお人好しなどそうはいないのである。



 一台の馬車が商隊のそばで停止し、御者が声をかけて来た。


「あんたらすごいな。実は俺、遠くから見てたんだ」


 隊長が対応する。


「そうですか」

「助けに行けなくて済まなかったな。見ての通り、俺には助けに入る余裕がなかったんだ」

「いえ、お気遣いなく。私も同じ立場だったらそうしたでしょう」

「そう言ってもらえると助かる。ところで相談なんだが、」


 彼はただ世間話をしたかったわけではなかった。

 彼も商人で倒した魔物の素材を売って欲しいというものだった。

 埋葬と解体は並行して行っているが、埋葬はクズ達を優先している。

 サンドウォルーの死体などは埋葬どころか解体も終えていないものもあった。

 その商人が求めたのはデザート・リヴァイガだった。

 こちらは優先して素材回収をしたので後は埋葬するだけであった。

 とはいえ、それはあくまでもこの商隊の運搬量を考慮してのことであり、まだまだ価値のある素材は残っている。

 少なくとも二体のデザート・リヴァイガの鱗は丸々残っているのだ。


「ちょっと待ったーーーー!!」

 

 商隊の隊長とその商人とのやり取りに割って入る者達がいた。

 彼らも商人、あるいは儲け話になると思った旅人、更には冒険者か探索者のような者達もいた。

 

「皆さん、落ち着いて下さい」


 商隊の隊長は満面の笑みで彼らと交渉を始めるのだった。

 

 

 商隊はクズ達の埋葬を終えて出発した。

 デザート・リヴァイガとサンドウォルーの死体は交渉した者達が処分することになっている。

 彼らが埋葬まで行うかは不明だが、放っておいても魔物が処理するだろう。


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