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83話 GHはフェミニスト

「ベルフィ、早いねっ。流石だねっ」


 ローズはそう言ったものの、カリスのハッキリしない態度からガールズハンターの討伐に失敗したと気づいていた。

 ベルフィは尋ねてきたローズに済まなそうな顔をして言った。


「ダメだった。やはり一緒に来てくれ」

「ベルフィ、見損なったよっ!あんたはその程度の男だったのかいっ!?」


 ナックがベルフィを擁護する。


「いやいや!違うんだローズ!ガールズハンターのフェミニストぶりが半端ないんだ!」

「言ってる意味がわかりませんが?」


 サラが会話に加わる。


「あのエロスライム、俺達が男だけだとわかると態度をころっと変えやがったんだ。体を真っ赤にして怒りやがってよ。さっきとは比べ物にならないくらい強くなったんだぜ!ファイアアローは全く効かないし。見てくれよ、ベルフィの盾を!」


 サラはそばから離れないカリスから逃れようとナックの言葉をこれ幸いとベルフィのもとへ向かう。

 しかし、カリスはしっかりサラの後をついて来ただけでなく、サラと同じくベルフィの盾を見ようとやって来たリオを「サラに近いぞ!」と言って追い払った。

 サラは内心ため息をつきながらベルフィの一部溶けた盾を見て質問する。


「この盾は魔法がかかっていましたよね?特殊な攻撃を受けたのですか?」

「いや、体当たりをくらっただけだ。それで魔法効果ごと破壊された」

「そうですか。しかし……」

「サラっ!俺の剣も見ろよ!俺の剣も魔法効果が消えちまったところがあるんだ!」


 カリスがベルフィに対抗するように大剣を抜くと、嬉しそうにサラにガールズハンターにやられた場所を見せる。

 サラはそれをチラリと見て言った。


「カリスは剣をダメにされて嬉しいのですか?」

「何言ってんだ、嬉しいわけないだろっ」

「では何故笑ってるのですか?」

「それは……なあ?わかるだろ?」


 カリスがサラにキメ顔をするが、サラには効果がない。


「わからないから聞いているのです」


 サラの機嫌が悪くなって来たのにナックが気づき、声を上げる。


「ともかくだ!奴は女がいるといないとでは強さが全く違うんだ!まるで別物だ!」

「ぐふ。ガールズハンターにそんな能力があるとは聞いたことないな」

「おうっ、俺もだ。てっきり女の服を食べるだけのいい奴……じゃなくてっ大人しい奴だと思ってんだがなっ!」


 ナックはサラとローズの冷たい視線を受けて言い直した。


「別の種類だったということはないのですか?」


 サラが冷めた目のままナックに確認する。


「少なくとも俺には同じに見えた」

「俺もだ」

「もちろん俺もだぜ!サラ!」

「そうですか」


 ベルフィに続いてカリスがキメ顔をして言ったがサラはもちろんスルー。

 ナックが真面目な顔で女性陣に向けて言った。


「というわけで不本意ながら先程のリオの作戦で行くべきだと俺は思う!」

「「は?」」

「……」


 ナックは女性二人の冷たい視線に耐えながら視線をヴィヴィに向ける。


「ヴィヴィもこれはいい機会だと思う」

「ぐふ?」

「素顔をみんなに見せるチャンスだろ。この際だ、素顔だけでなく全てを曝け出そうじゃないか!」

「「「……」」」

「そうなんだ」


 場の雰囲気が最悪な中でリオの言葉がやけに響いた。

 


「ナックの馬鹿話はともかく、今度は全員で挑むぞ」


 ベルフィの言葉にローズが不機嫌そうに舌打ちするが反対はしない。

 それを確認し、サラとヴィヴィを見る。

 

「いいな?」 

「わかりました。それで攻略し易くなるのでしたら」

「ぐふ」

「心配するなサラ!お前は俺が守る!」

「私の事は気にせず、本来の前衛役に集中してください」


 キメ顔で言ったカリスだが、サラの反応の薄さにムッとする。


「楽しみだな」


(楽しみ?リオが?)


 リオの言葉に違和感を覚えるサラ。

 その事をリオの尋ねる前にローズが叫ぶ。

 

「あんたはダメだっ!絶対ダメだよっ!」

「ん?」

「あんたは絶対トラップに引っかかるに決まってるっ!巻き添えなんてごめんだよっ!」

「そうなんだ」

「俺もローズに賛成だ。リオはここに残るべきだ」


 カリスがローズの意見に賛成する。

 

「いやいや、リオはマドマーシュの遺跡でそつなくこなしてただろ」

「どうだかな。多少強くなったのは認める。俺には全然及ばないがなっ」


 カリスはそこで一旦言葉を切り、サラにキメ顔をする。


「だが、それはあくまでも戦士としてだ。ローズの言うとおり単純なトラップにも引っかかる可能性が高い。ここは未探索の迷宮だしなっ」


 カリスはリオの能力に関係なく迷宮探索に反対している事に皆気づいていた。


「おい、カリス。それを言うならリサヴィ自体の参加を反対すべきだろ?サラちゃんやヴィヴィだって迷宮探索の経験は少ないはずだぞ」

「サラは俺が守るっ!なっ?」


 カリスがキメ顔をするが、サラはスルーし、ナックに同意する。


「ナックの言う通りです。私も迷宮には慣れていませんのでそれが理由なら私もリオとここに残ります」

「ちょ、ちょ待てよっ!俺が守るって言ってんだろサラ!」


 サラが面倒臭そうにカリスに目を向ける。


「それでは戦力ダウンです」

「構わねえぜっ!」

「……バカですか?」

「な……」


 サラはカリスのあまりに考えなしの発言にすっ、と正直な気持ちが言葉に出てしまった。

 どう取り繕うか考えていると、


「ぐふ。リオが残るなら私も残ろう」


 とヴィヴィも残る意志を示す。


「おいおいヴィヴィもかよ」

「ぐふ。私はお前達のパーティではない。リーダーと共にあるのは当然だ」

「そうですね」


 ヴィヴィの言葉にサラが頷く。

 話の中心であるリオは、まるで他人事かのように表情にはなんの変化もなかった。


「サラ!お前は一緒に来るんだ!心配するなっ俺が一緒なんだからなっ!」


 カリスの意味不明な説得にサラはうんざりし、もうはっきり言った方がいいかと思ったところで、それに気づいたナックがリオに話を振って逸らそうとする。


「おいっリオ!お前の事だぞ!二人の美少女に、一人は(仮)だが、何か言うことはないのか?」

「ん?……ありがとう?」


 疑問符付きの返事にため息をつくナック。

 そこにベルフィが結論を述べる。

 

「さっきも言った通り全員で攻略する」

「ベルフィ!?」

「リオはダメだ!」


 ローズとカリスの不満顔を見てもベルフィは結論を変えない。


「これは決定だ。ただし、お前達の言うことも一理ある」

「だよなっ!だったら……」

「俺はリオだけでなく、サラとヴィヴィも迷宮探索に不安がある。だからリサヴィは俺達の後を少し離れてついてこい」

「わかった」

「はい」

「ぐふ」

 

 ローズはベルフィの言葉で納得したかは別としてそれ以上何も言わなかったが、カリスは違った。


「ベルフィ!」


 ベルフィは少し疲れた表情でカリスに言った。


「カリス、お前は『サラサラ』言ってないでまず自分の役割をしっかり果たせ」

「なっ!?俺はっ……」

「その通りですね」

「!!」


 カリスはベルフィに反論しようとしたがその前にサラがベルフィに同意するのを見て言葉を失う。


「さらぁ」

「「気持ち悪い!」」


 カリスのショタを模した情けない声にサラとローズの叫び声が見事にハモった。

 こうしてウィンドとリサヴィはラビリンス攻略を再開した。


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