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828話 リオVSデザート・リヴァイガ その2

誤字を修正しました。

 デザート・リヴァイガはBランクにカテゴライズされている魔物で決して弱くはない。

 あまり参考にはならないだろうが、四十名を超す叛逆の傭兵団を壊滅に追いやっているのだ。

 そもそもBランクの魔物三体を魔道具を持っているとはいえ、たった一人で相手するなど普通ではない。

 リオの戦う姿に護衛達は周囲の警戒を忘れ思わず見とれてしまう。

 そこへリーダーの叱咤が飛ぶ。


「周囲を警戒しろと何度言ったらわかるんだ!」


 そう言ってリーダーが何もない空間に剣を振るった。

 直後、悲鳴と共にサンドウォルーが姿を現した。

 そのサンドウォルーは今の一撃が致命傷でその場に倒れる。


「まだいるぞ!油断するな!!」


 護衛達ははっ、として周囲を警戒する。

 リーダーのいう通り姿は見えないが周囲から微かに魔物の気配がした。



 擬態して周囲に溶け込み、気配を消して商隊に近づいて来たサンドウォルーをサラが剣で斬り倒した。

 本当はサラもデザート・リヴァイガ退治に加わる予定だったのだが、リオがあっという間に二体倒してしまい、最後の一体も戦いを優勢に進めていたので商隊の守りに参加していた。

 ちなみにヴィヴィはリオへの武器提供のみでアリスに至っては長時間エリアシールドを張った疲れからか乗合馬車の中から出てこない。


「サラさん、助かります!」


 隊長が周囲を気にしながらサラのそばにやって来て感謝を述べる。

 

「いえ、大したことはありません」

「しかし、神官様の使う魔法、エリアシールドですか。素晴らしかったですね」

「そうですね。ただ、神官なら誰でも使えるわけではありません」

「ええ。それは存じております」

「同じパーティの私が言うのもなんですがアリスのエリアシールドは強力です。普通はあそこまで強力なものを広範囲に張ることはできませんのでそこは勘違いしないでください」

「そうなんですね」

「ええ。私にも無理です」

「ええっ!?サラさんにもですか!?」

「ええ」


 それはお世辞ではなく本当のことだ。

 サラはどちらかといえば攻撃魔法の方が得意で、アリスは回復、防御系の魔法に秀でている。



 サラがこの騒ぎの中で全く動じていない馬達に感心しながら言った。


 「それにしてもよく調教された馬ですね。あれだけの騒ぎが起きても暴れたりしないなんて」

 

 馬達はデザート・リヴァイガがエリアシールドにぶつかって来た時も全く動じていなかった。


「ええ。この馬達は場慣れしているといいますか、商売をしていますと魔物や盗賊に襲われたりしますので」

「そうですか。それだけあなた達を信頼しているということですね」


 隊長は笑いながら言った。


「そうだといいのですが案外、神経が図太いだけかもしれません」


 ふとサラは隊長が外に出ていることに疑問を覚えた。

 彼も戦う気のようで剣を手にしていたが、正直に言ってあまり強そうには見えない。

 冒険者基準で言えばFランク、せいぜいEランク相当ではないだろうか。

 デザート・リヴァイガは言うまでもなく、Cランクにカテゴライズされるサンドウォルーを相手にするのも厳しいだろう。


「隊長も馬車の中に避難していたほうがいいのでは?」

「ま、まあそうなんですが……」 


 どうやらクズ達が逃げ回る情けない姿を見て何か思うところがあったようだ。

 そこへ護衛のリーダーがやって来た。


「サラの言う通りだ。ここは俺達に任せてくれ」

「そ、そうですか」


 リーダーにもそう言われて隊長はちょっとほっとした顔をしながら馬車の中に入って行った。


「サラ、手助け感謝する。正直戦力に不安があったのだ」


 ここで商隊専属の護衛達について補足しておこう。

 実はクズの不意打ちで重傷を負った者やリオに抗議をした者を含め、半数近くが実戦経験の浅い者達であった。

 前回の護衛中にベテランが怪我を負って参加できなくなり、やむなく今回の構成になったのだ。

 リーダーはしみじみ思った。


(技術的には問題ないと思っていたが実戦でここまで酷いとは思わなかったな。戻ったら実戦形式の訓練を増やすか)


 リーダーの厳しい表情を見て何かを悟ったのか護衛達に魔物を警戒するのとは別の意味で緊張が走った。



 デザート・リヴァイガの体力はまだ十分残っていた。

 だが、リオに全く勝てる気がせず死の恐怖を感じはじめていた。

 その感情はついに限界に達し、その場から逃走を図った。

 リオは見下した目をその後ろ姿に向けながら剣を収める。


「ヴィヴィ」


 再びリオの前にリムーバルバインダーがやってきた。

 リオはその中から今度は弓矢を取り出した。

 矢には魔法がかかっていないが、弓自体が魔法強化されているため射程と貫通力がはね上がっている。

 リオは逃げていくデザート・リヴァイガに向かって矢を放った。

 その体に刺さり悲鳴を上げる。

 無意識に頭部を持ち上げた。

 リオはその瞬間を逃さず更なる一撃を放つ。

 狙い違わず、その矢が頭を、脳を貫き破壊した。

 デザート・リヴァイガはしばらくフラフラと動いていたがやがて動きを止めた。



「まじかよ。あいつ一人で三体とも倒しちまった……」

「あいつは一体なんなんだ!?」


 護衛達の言葉にリーダーが答えた。


「リオだ。あのリサヴィのな」

「リサヴィ!?」


 この時、初めて護衛達はリオ達がリサヴィであると知った。

 

「じゃあ、あいつがあの冷笑する狂気!?」

「そうだ」

「で、でもリーダー!あいつら探索者だって言ってたじゃないか!」

「探索者でもあるということだ」

「なんで隠してたんだ!?」

「詮索するな。何か理由があるのだろう。そんなことよりまだ終わりじゃないぞ!気を緩めるな!」


「了解!」と返事して周囲の警戒を行う。

 護衛達は更に近くに潜んでいた四体のサンドウォルーを発見し、仕留めた。

 こうして戦いは終わったかに見えた。

 しかし、まだだ。

 まだ一幕残っていた。

 “彼ら”がこのまま終わるわけがないのだ!


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