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827話 リオVSデザート・リヴァイガ その1

 傭兵団が全滅した。

 少なくとも見える範囲に動く者はいない。


「ヴィヴィ」


 ヴィヴィはリオの声に応じ乗合馬車の屋根の上の荷台に置いてあったリムーバルバインダーを飛ばしてリオの元へ向かわせる。

 リオはそのふたを開き中から魔道具であるポールアックスを取り出す。

 折り畳まれた柄を伸ばしてはめ込み、半回転させて固定させれば組み立て完了だ。

 全長二メートルを超すポールアックスを両手で構えて言った。


「エリアシールドを解け」


 アリスがエリアシールドを解くと同時にリオが走り出す。

 リオの動きに反応して一体のデザート・リヴァイガが凶悪な牙を見せながら素早い動きで迫る。

 リオはデザート・リヴァイガの噛みつきを寸前でかわしポールアックスをその口目掛けて水平に振る。

 傭兵達は全くダメージを与えることができなかったが魔道具であるポールアックスは何事もないようにデザート・リヴァイガの口を斬り裂き、硬い鱗をも斬り裂く。

 これはリオとポールアックスの力だけではなく、デザート・リヴァイガの突進する勢いも利用している。

 デザート・リヴァイガは自らの力でも自分の身を斬り裂いていたのだ。

 悲鳴を上げたくても既に口が裂けており叫ぶことができない。

 その勢いでリオが吹き飛ばされてもおかしくなかったが、そのまま駆け抜けてデザート・リヴァイガを上下に両断した。


「まず一つ」


 リオはそう呟いた。


「ちょっと待て!今のなんかおかしくなかったか!?」


 叛逆の傭兵団を蹂躙したデザート・リヴァイガの一体をリオがあっさりと倒してしまったのを見て護衛の一人が思わず叫ぶ。


「なんで吹っ飛ばないんだ!?」

「それだけあの魔道具の威力がすごいってことだろ」

「それだけじゃ説明がつかないって言ってんだ!」


 護衛達が言い争う姿を見てリーダーが一喝する。


「無駄口叩くな!呑気に見学している暇などないぞ!!」

「「す、すみません!」」


 護衛達はデザート・リヴァイガの襲撃に備えるが、彼らの出番はないように思えた。

 一体倒されて激怒したのか、一番の強敵と判断したのか、残り二体ともリオに向かっていったのだ。

 左右からデザート・リヴァイガが迫る。

 今度は先ほどと同じ手は使えない。

 どちらか片方を倒せてももう片方に追いつかれ背後から食い千切られるだろう。

 リオは特に悩むことなく右側を相手にすることにした。

 そちらに正面を向けるとタイミングを合わせてジャンプし、ポールアックスを上から振り下ろした。

 アックスの部分がデザート・リヴァイガの頭部、それも脳を直撃し破壊した。

 今の衝撃で頭を地面に叩きつけられたデザート・リヴァイガだが脊髄反射の如く頭を振り上げた。

 リオはその勢いに合わせてポールアックスを手放す。

 空中で逆さの体勢になったところで最後の一体が迫って来るのが見えた。

 左手で短剣を抜くや否や迫るデザート・リヴァイガに放つ。

 その短剣が右目を潰すがデザート・リヴァイガの勢いは止まらない。

 リオは特に慌てることなく半回転し足を地面に向ける。

 デザート・リヴァイガが無防備に背を向けたリオに迫る。

 その凶悪な口がリオを捕らえた、と思われた瞬間、リオは“空を蹴って“上に跳んだ。

 いや、違う。

 リムーバルダガーを足場にして跳んだのだ。

 デザート・リヴァイガにとってリオが上空に逃れるのは想定外だった。

 噛みつきは不発に終わり、悔しそうな怒りの声を発した。

 もちろん、これで終わる気はなく、素早く体を反転させる。

 だが、その直後、リオが再び放った短剣でもう片方の目も潰された。

 怒りとも苦痛とも取れる声を発して暴れるデザート・リヴァイガ。

 ちなみにポールアックスで頭を粉砕された方は息絶えたのか身動きしない。



 着地したリオは両手で長剣を抜き、二刀流の構えでゆっくりとデザート・リヴァイガに向かう。

 両目が潰されて視覚が奪われてもデザート・リヴァイガにはまだ耳がある。熱感知能力もある。

 それらでリオの接近に気づき尻尾を振り回し吹き飛ばそうとしたが、その攻撃は精度が悪く大雑把だ。

 それでも普通の相手ならばどうにかなっただろう。

 しかし、リオは普通ではなかった。

 リオはただ回避するのではなく、鱗の隙間に剣を突き刺し、ダメージを与えていく。

 先ほどまでの力任せの豪快な戦い方とは打って変わり緻密な高等テクニックを用いた戦い方だった。

 手にした武器に応じて臨機応変に戦い方を変化させたのだ。

 その一撃一撃は大したことないが、それでも確実にダメージは蓄積されていく。

 魔道具でもなく魔法もかかっていない武器でデザート・リヴァイガを追い詰めていく。

 それはまるで全くダメージを与えることができず全滅した叛逆の傭兵団の無能さを自らの力を持って証明しているかのようであった。



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