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818話 言い訳はことごとく論破される

 ヴィヴィがリムーバルバインダーを降ろす。

 ほっとした顔をした盗人クズだったが、すぐ様あほ面にシフトする。

 リムーバルバインダーから降りた盗人クズをヴィヴィがリムーバルバインダーでぶっ飛ばしたのだ。

 地面をゴロゴロ転がった盗人クズはあほ面晒して気絶していた。


「隊長、持ち物検査を」


 ヴィヴィの容赦ない行動に呆気に取られていた隊長はサラの言葉で我に返ると一緒にやって来た護衛達を連れて気絶した盗人クズの元に向かい持ち物を調べる。

 すると出てくる出てくる。


「うお!?それは俺のだ!」

「ああ!それはわたしの!」


 盗人クズのあらゆる場所から次々と盗品が出てきた。

 幸い、ヴィヴィのぶっ飛ばしで壊れたものはなかった。



 あほ面晒して気絶していた盗人クズを殴って起こした。

 激しい痛みで目を覚ました盗人クズは文句を言おうとしたがまたも紐で縛られているのに加えて皆に囲まれた状態であることがわかりそんな気持ちなど一瞬でぶっ飛んだ。

 隊長が盗人クズの尋問を始める。


「あなたの所持品からお客様の持ち物が出て来ました。盗んだことを認めますね?」

「ざ、ざけんな!!」


 盗人クズは車内でリオにボコられた恨みを晴らしたいと思っていた。

 だが、実力差があり過ぎるので直接は無理だと判断し誰でもいいからリオの仲間に仕返しをしようと考えた。

 その標的となったのが彼らクズが格下と思い込んで見下している魔装士、つまりヴィヴィであった。

 仲間のクズの行動を前もって知っていた彼はそのタイミングを見計らって行動を起こした。

 敢えて持ち主がわかりやすいものを選んで盗み、それをリムーバルバインダーにこっそり入れて、それを彼が発見した風を装ってヴィヴィに窃盗の罪を着せるつもりだったのだ。

 だが、彼の計画に狂いが生じた。

 いざリムーバルバインダーに盗品を入れようとしたらふたが開かないのだ。

 彼は偽魔装士、つまりフェランのあらゆる機能をオミットした廉価版魔装具の荷物入れを想定しており簡単に開けられると思っていたのだ。

 彼が盗みをしているのをヴィヴィはリムーバルバインダーの目でしっかりと見ていた。

 ヴィヴィは彼の盗みを護衛達が気づくのを待っていたが森の騒ぎに注意がいって気づかない。

 そんな中、盗人クズがリムーバルバインダーを標的にし、その上に乗ったのを見て自分で対処する決意をし、彼ごとリムーバルバインダーを一瞬で上空へ持ち上げたのである。



 盗人クズは必死に“ク頭脳”を働かせる。

 

「お、俺はその棺桶持ちが荷物置き場でこそこそ何かやってるのを見たんだ!それが気になったんで奴が離れた隙にこっそり中を調べたら客から盗んだもんが入ってたんだ!そうだ!俺がお前らの荷物を取り返してやったんだ!」


 “ク頭脳”をフル回転させてペラペラと嘘を吐きまくった盗人クズは「完璧な説明だぜ!」と心の中で自画自賛する。

 そして調子に乗った。

 クズは調子に乗ると際限がない。


「わかっただろ!こいつが盗人なんだ!」


 盗人クズは紐でぐるぐる巻きにされながらもヴィヴィを器用に指差す。


「俺のもんも盗まれてそん中に入ってんだ!間違いねえぜ!俺が保証する!」


 盗人クズが自信満々の顔をする。

 しかし、どうしたことでしょう!?

 誰も彼の言葉を信じませんでした!!



 隊長はため息をついたあとで言った。


「どこから突っ込めばいいのか悩みますが」

「何言ってんだ!完璧な説明だっただろうが!さっさと縄を解け!そんで棺桶持ちを捕まえろ!よしっ、決まったな!!」


 隊長は「ダメだこりゃ」とでも言うように首を横に振った後、ヴィヴィに顔を向ける。


「念の為お聞きしますがお客様は休憩中に荷物置き場に行きましたか?」

「ぐふ、行ってないな」

「嘘つくんじゃねえ!俺のこの目がちゃんと見てんだよ!!」


 そう言って盗人クズは縛られた苦しい態勢でありながらも器用に自分の目を指差す。

 

「他に見た方はいますか?」

「いるよな!?おう!!」


 盗人クズが自分の呼びかけに自分で応える。

 他に目撃者は一人もいなかった。


「ヴィヴィは私達と一緒にいました」


 サラがそう答えるとすぐさま盗人クズが反論する。


「仲間の証言なんか当てになっかよ!てか、そいつらも共犯だ!おう!」


 またも盗人クズは自分の叫びに自分で応える。

 盗人クズは一人二役をこなして自分に有利に事を運ぼうとするが無駄であった。

 乗客達もサラに同意する。

 

「俺達も一緒にいたぞ」

「ああ」

「その通りよ」


 彼らは美男美女のリオ、サラ、アリス目当てでそばにいたのだが、ところどころでツッコミを入れるヴィヴィの存在を忘れるわけがなかった。

 

「ということです」

「ざけんな!!」


 隊長の言葉に盗人クズは喚いて有耶無耶にしようとしたがもちろん失敗した。

 隊長が次の質問をする。


「仮にですがお客様が盗みを働いたとして」

「仮なんてしなくていいぜ!俺が見てたんだ!俺が保証してんだ!これ以上ないって証拠だろうが!だな!」


 またも一人二役である。

 隊長は盗人クズの戯言を聞き流して尋ねる。


「あなたはよく盗品だとわかりましたね」

「……なに?」


 盗人クズは隊長の言っている意味がわからず首を傾げる。


「リムーバルバインダーの中に盗品が入っていたとのことでしたが、どうやって盗品だと的確に見抜くことができたのですか?」


「う……そ、そりゃ、乗る時見てたからだ!」


 盗人クズの苦しい言い訳はすぐに論破される。


「俺はカバンに入れたままで駅に来たぞ。一度も見せたことない!」

「あたしもよ!」

「ぐ……」


 盗人クズの額から嫌な汗がダラダラ流れ落ちる。

 だが、それでも盗人クズは盗んだことを認めない。

 

「そ、それは……お、俺の直感はよく当たんだよ!」


 その叫びに周囲がしん、となる。

 皆、「なるほどな!」と納得したからだ、

 なんてわけはない。

 あまりに酷い言い訳に呆れて言葉が出なかったのだ。

 盗人クズも流石に今のはまずかったと気付いたようだ。


「だ、大体よ、俺がそんなことする奴に見えんのか!?」


 盗人クズはそう言うと縛られ無様な格好でキメ顔をした。

 だが、その言葉は完全に失言であった。

 次の瞬間、


「見えるわ!」

「見えるぞ!」


 との声が乗客から次々と上がる。

 彼を擁護する声は一つもなかった。


「ざけんなーっ!俺はな!誇り高き冒険者だぞ!その俺が……」

「ありませんでしたよ」

「……あん?」

「あなたの持ち物の中に冒険者カードはありませんでした、と言っているのです」

「な……」


 盗人クズは酷く動揺し口をパクパクさせる。


「ぐふ、仮に冒険者だったとしても元、だろう。今はただのクズだ。盗人クズだ」

「ざけんな!元だろうが冒険者には違いねえだろうが!!」

「ぐふ、そんなわけあるかクズ」

「ざけんなーーーっ!!」


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