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811話 ダンジョンからの帰還

 地下六階層の元セーフティルームに三組のパーティがやって来た。

 リサヴィも来ており、ここで彼に引き継ぎを行うことになっていた。

 サラは彼らが皆リオに尊敬の眼差しを向けているのが気になった。

 余程の強行軍、恐らく休憩をろくに取らずにやって来たであろうことは彼らの疲労状態から容易に推測できる。

 戦闘で負った怪我の治療もそこそこに速度を優先したようだった。

 それでもリオに会えたことがよほど嬉しかったらしくその瞳は生き生きとしていた。

 そんな目を向けられてもリオの表情は全く変わらなかった。

 ちなみに彼らはリサヴィとの交代要員として先行しただけで後から増援がやって来ることになっている。

 先に述べたようにモーグは長期間放置するとクイーンモーグが誕生する。

 一体たりとも見逃してはならない状況であり彼らだけダンジョンを見回りモーグを一掃するのは厳しい。

 サラとアリスが彼らの怪我の治療をした。

 その間に他の者が冒険者ギルドから預かっていた魔道具セーフティくんを設置し、この部屋は再びセーフティルームとなった。

 それらが終わった後でサラは彼らにダンジョンの状況を尋ねた。

 彼らはここへ来るまでに何体ものポーンモーグとスレイブモーグと遭遇し倒してきたとのことだった。

 一つ気になったのは地下一階層に入ってすぐにスレイブモーグの集団と遭遇したことだ。

 サラは彼らの話を一通り聞き終えた後でそのことを確認する。


「一階層でスレイブモーグに遭遇したとのことですが本当にスレイブモーグでしたか?」


 このダンジョンにはポーンモーグとモーグの種と同化したクズ冒険者のスレイブモーグがいる。

 そして、それ以外にサラ達に寄生すべく後を追ってきたクズ冒険者達もいたはずだ。

 全員がスレイブモーグになった可能性は否定できないが、そうでない可能性も否定できない。

 サラの問いかけにあるパーティのリーダーが笑みを浮かべながら言った。


「ああ、間違いない。言葉は通じなかったし、情報通りクッズポーズまでとったからな」

「あなた達から聞いた通り新しいタイプのスレイブモーグだったわ」


 女魔術士がリーダーの補足をした。

 彼女がファイアボールで先制攻撃を仕掛けて残りの者達が生き残りに止めをさした。

 サラ達のアドバイスに従い、魔法攻撃主体で倒したとのことだ。


「それっ、ただのクズだったってことはないですかっ?」


 サラが思った事をアリスが口にする。

 しかし、彼らは笑いながら全員がそれを否定する。


「ぐふ、クズは人の話を聞かないから言葉が通じないぞ」


 ヴィヴィの指摘にも動じない。


「仮に奴らがただのクズだったとしてもやむを得ない状況だったんだ」

「どういうことです?」

「さっき言った通りだ。奴ら、祈りと同等の効果を持つクッズポーズを取ったんだ」

「強化される前に倒さないと面倒になるだろ」


 ヴィヴィが彼らの間違いを指摘する。


「ぐふ、クイーンモーグは既にいないのだ。祈りのポーズをしたところで強化されることはないぞ」


「ああ、なるほど」

「確かに言われてみればそうだったな」

「すっかり失念していたな」


 ヴィヴィの言葉を聞いても彼らの顔には間違えて人を殺してしまったかもしれない、という不安も後悔も全く浮かんで来なかった。

 サラ達は彼らのこれまでの言動から彼らがリサヴィ派であることを確信する。

 リサヴィ派にとっては魔物もクズも同じ抹殺すべき対象なのだ。

 サラはこれ以上、質問しても無駄だと判断した。

 サラはクズ擁護派ではないのだ。


「では後は彼らに任せて帰りましょう」

「ああ」


 リサヴィは彼らに盛大に見送られてその場から去った。



 地下一階層の出口付近で先ほどの交代要員達が話していたモーグと同化したらしい冒険者達の死体があった。

 ファイアボールの直撃を受けて皆こんがりと焼けている。

 あまり見ていて気持ちいいものではない。

 倒れた者達の中には腕を組んだポーズをしたまま息絶えた者がいた。

 恐らく元は仁王立ちしてクッズポーズをとっていたのだろう。

 ファイアボールを受けて尚クッズポーズをとり続けた彼の意思の強さにサラ達は痺れて憧れた、

 なんてわけはなく、呆れてため息をついた。



 ダンジョンを出ると外には冒険者ギルドの偵察隊が周囲を警備していた。

 リサヴィの姿を見てほっとした表情を見せる。

 交代要員達がやって来る前にある一組のパーティが偵察隊の制止を振り切ってダンジョンに入っていったらしく、その者達の事を聞かれた。

 サラ達の頭に先程見た、交代要員達がスレイブモーグと判断して退治した冒険者達の姿が思い浮かんだ。

 ヴィヴィが表情一つ変えずに答えた。

 と言ってもその顔は仮面で見えないので誰にも気づかれなかったが。


「ぐふ、それらしい者達は見ていないな。まあ、もしかしたら倒れていたスレイブモーグの中に紛れ込んでいたかもしれないがな」

「そうか」


 偵察隊の隊長はそれ以上尋ねてこなかった。

 彼らもその者達がクズ冒険者だとわかっていたのだろう。

 もしかしたらリサヴィが“処理”したと思ったのかもしれない。

 サラは何を言っても誤解を生みそうだったので話に参加することはなかった。



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