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801話 クズ冒険者、協力関係を解消する

 サラがリオに通路を塞いだ壁の仕掛けについて尋ねる。


「この仕掛けによく気づきましたね」


 サラの問いにリオは首を傾げる。


「マップに書いてあっただろ」


 そう言われてマップを見ると確かに今いる場所に何か記号のようなものが書かれていた。


「私はこれを見ても壁が動く仕掛けとはわかりませんでした」

「ぐふ、私もトラップか何かがあったことしかわからなかったな」

「わたしもですっ。リオさんはよくわかりましたねっ」

「前にローズがベルフィかナックに説明しているのを思い出した」

「そうですか」

「流石リオさんですっ!」


 通路を閉ざした壁を見ながらアリスが言った。


「階段はこの先なんですよねっ。と言うことはっクズ達は追って来れなくなりましたねっ」

「ぐふ、そうでもないぞ」


 ヴィヴィがマップを見ながら言った。


「そうなんですかっ?」

「ぐふ、遠回りになるが下へ降りる階段へ向かうルートは他にもある」

「そうなんですねっ」

「それに向こう側にも壁を退かす仕掛けがあり解除されるかもしれません」

「それはない」

「え?」


 リオがどうでもいいような口ぶりで言った。


「この壁は元々は閉じられていたものだ。一度階段に辿り着き、そちらから回って来ないとこの最短ルートを使えないようにな」

「そうなんですねっ」

「それもローズから聞いたのですか?」

「ダンジョンとはそういうものだ」

「そういうものって……」


 話していると今できた壁の向こう側からどんどん!と壁を叩く音が聞こえた。

 更に微かに叫び声も聞こえた。

 言うまでもなくクズ冒険者達である。


『おい!てめえ!何やってくれてんだ!?』

『俺らが通れねえだろうが!』

『さっさと開けろ!』

『今すぐ開けるんだ!急げよ!』


 クズ冒険者達の声は当然無視。


「ぐふ、クズ達はマップを持っていないと思うが万が一のこともある。先を急いだほうがいいな」

「諦めてくれるといいんですけどっ」

「そうですね」


 リオ達はクズ冒険者達の抗議を無視して先へと進んだ。



 クズ冒険者達は大混乱に陥っていた。

 リオ達の推測通り、誰もこのダンジョンのマップを用意していなかったからだ。

 ギルドで受付嬢との話を盗み聞きしてその場で寄生することを決めてついて来た三組のクズパーティと異なり、この寄生計画を前もって立てて行動していたクズパーティはマップを用意する時間があった。

 一応、彼らの名誉を守るために代弁すると彼らもこのダンジョンのマップを用意する必要があることくらいは流石にわかっていた。

 だが、メンバーの誰かが用意するだろうと思ったのだ。

 全員がそう思って誰も用意しなかっただけなのである。

 他人に寄生し、他人任せに生きる。

 その結果がこれである。

 ……あれ?名誉守れた?


 それはともかく、各パーティの盗賊だけでなく全員で壁を動かす仕掛けを探したがリオの言うとおりこちら側に壁を動かすスイッチはなかった。

 クズ冒険者達は今後の方針を今すぐ決める必要があった。

 このまま引き返して出口で待ち伏せし、依頼を終えて出てきたリオ達と一緒に冒険者ギルドに戻って「一緒に依頼をこなしたぜ!」と言い張るか、他の道を探してリオ達の後を追うか、この寄生計画自体を断念するか、である。

 断念する案は一瞬で消えた。

 彼らは暇ではない?のでこれまで労力を無駄にしたくなかった。

 悩んだ挙句、彼らは追うことを選択した。

 冒険者ギルドの者達は“何故か“彼らを信用しておらず、彼らとリオ達の意見が食い違えばこれまでの経験上、ギルド職員はリオ達の言い分を信じる可能性が高い。

 どちらの言い分が正しいかの判断を民主的多数決に持ち込めればクズ冒険者達が勝つがギルドは認めないだろう。

 ということで、ギルドに依頼を一緒にやったこと(=ついて行ったこと)を証明するにはどうしても最下層の“通信くん“のあるところまでリオ達と一緒にたどり着き、ギルドにアピールする必要があるのだった。


「報酬は七、三で勘弁してやろうと思ったがこれはもう九、一にしないと気が済まねえぞ!」


 クズリーダーの訳のわからない言葉に疑問を投げかける者はいなかった。

 それどころか、


「これだけの裏切り行為をされたのにリーダーは優し過ぎるぜ!」

「奴らには一でも多いくらいだぜ!」


 などとクズリーダーの意見に皆が賛同したのだった。



 四組のクズパーティは別行動をとり、手分けしてリオ達を探すことになった。

 事実上、クズパーティの協力関係が消滅した瞬間だった。

 ここからは早い者勝ちでリオ達と合流を果たすパーティが少なければ少ないほど自分達の取り分が多くなる。

 皆そのことに気づいていたが誰も口にしなかった。

 

「じゃあ、お互い頑張ろうぜ!」


 クズリーダーの心にもない言葉に皆は「おう!」とこれまた心のこもっていない叫びで応えた。

 こうして彼らは四方へ散っていた。



 クズ冒険者達は報酬を多く得るチャンスが来たことばかりに気を取られ大事なことをすっかり忘れていたようだ。

 リオ達が共同依頼を拒否していたこと、ではない。

 彼らは拒否されるのに慣れっこで全く気にしていなかった。

 では何かと言えば、このダンジョンで既に二組のパーティが消息不明になっていることだ。

 そんな場所でただでさえ大した力を持っていない彼らは戦力分散の愚を犯してしまったのだ。



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