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800話 リオ、クズ盗賊と遊ぶ

 このダンジョンはこれまで休ダンジョンに認定されていたが活ダンジョンに変わっているかもしれない。

 その中をクズ冒険者達は遠足にでも来ているかのように大声で雑談しながらついてくる。

 サラ達に「ダンジョンを舐めるな」と言った彼らであるが、彼らの方がダンジョンを舐めているとしか思えない。

 その行動を見ているとそもそもダンジョン探索をしたことがあるのかも怪しくなってくる。


「ヴィヴィ」


 リオがマップを見ながらヴィヴィに声をかけた。


「ぐふ?」

「クズ達はマップを持っているように見えるか?」

「ぐふ……」


 リオがヴィヴィに尋ねたのはリムーバルバインダーの目で背後を監視していると思ったからだ。

 ヴィヴィは首を横に振った。


「ぐふ、少なくとも奴らがマップを手にしたところを見ていないな」

「私も見ていませんね」

「わたしもですっ」


 サラとアリスもヴィヴィに同意する。


「やはり、持っていない可能性が高いな」


 リオの呟きにアリスが少し驚いた表情をする。

 リオ達は依頼を受けたこともありギルドから支給されたが、既に踏破されたダンジョンのマップなら手に入れるのはそれほど難しくないはずなのだ。


「でもっ、このダンジョンを探索する気だったんですよねっ?そんなことってあるんですかっ?」

「ぐふ、相手はクズだぞ。常識は通じない」

「彼らは基本、他者に寄生して生きる者達です。私達にくっついて行くので必要ないと思ったのでしょう」

「あっ、確かにっ」


 ここでサラはリオにその質問をした理由を尋ねる。


「それでリオ、クズ達がマップを持っているかいないか知ってどうするのです?」


 リオはその問いにくすり、と笑って言った。


「見せてもらおうと思ってな。奴らご自慢の盗賊の腕を」

「腕、ですか」


 サラは先の行動で十分理解したつもりだったがリオはそうではなかったようだ。

 確かにインシャドウはお粗末だったが鍵開けやトラップ解除は優秀という可能性もある。



「おい、おめえら!そろそろ休憩しねーか?」


 背後からそんな声が聞こえてきた。

 言うまでもなく遠足組だ。

 彼らは一緒に依頼を受けていると思い込んでいるようであった。

 思い込むのは自由だがリサヴィが付き合う理由はない。

 リオ達は誰一人として返事しなかった。

 無視された遠足組は激怒してわめき散らす。

 リオはマップを見ながら言った。


「ヴィヴィ、少し距離を離せ」

「ぐふ?クズ達だな。離すだけでいいのか?」

「ああ」

「ぐふ」


 ヴィヴィが右肩にマウントされたリムーバルバインダーをパージし、後方へ飛ばした。

 そのリムーバルバインダーが遠足組の先頭を歩くクズ達の鼻先を掠める。

 突然の威嚇に遠足組は驚いて思わず足を止める。

 が、すぐさま頭に血が昇りわめき散らかす。

 ヴィヴィは彼らの抗議を無視して威嚇を繰り返して足止めする。

 リオ達と遠足組との距離が二十メートルほど離れた。



 リオがあるドアの前で止まった。

 そしてそのドアを開け中へ入っていく。

 クズ達と遊んでいたリムーバルバインダーを回収したヴィヴィが最後に入る。

 そこでリオが内側から鍵をかけた。


「リオ?」


 リオはサラの疑問を込めた呼びかけに答える代わりに反対側にあるドアを指差す。

 そしてそちらへ歩き出す。


「ぐふ、ロックをかけなくていいのか?」


 ロックは施錠魔法だ。

 この魔法は盗賊のスキルでは解錠できない盗賊泣かせの魔法である。

 ちなみに対抗魔法のアンロックはこの施錠魔法を解くだけでなく、通常の鍵も解錠する。

 これも盗賊泣かせの魔法である。

 リオは首を横に振った。


「それじゃ盗賊の腕を試せないし、予定が狂うかもしれない」

「ぐふ?予定?」

「後をついて来てもらわないと困る」

「ぐふ、なるほどな。分散されると動きが読み難くなるということか」

「ああ」


 皆、リオが先に言ったとおり盗賊の腕を試すつもりだと理解した。

 サラはリオの不真面目な行動に不満だったがそのことを口にしなかった。

 誰もリオに反対する声を上げなかった。

 しばらくしてリオ達が入ってきたドアの外からガチャガチャどんどんと音が聞こえた。

 遠足組だ。

 彼らはドアに鍵がかかっていることを知り「ドアを開けろ!」と怒鳴りだす。

 しかし、その時には既にリオ達は反対側のドアから部屋を出ていた。



 下へ降りる階段のそばまで来てリオが突然、足を止めた。


「どうしました?」


 リオはサラの問いに答えず、無言で周囲を見渡した後で近くの壁を触り出す。

 リオはしばらく壁に触れていたが、その手がピタリと止まった。


「これだな」


 リオがそう呟いた時、リオ達がやって来た方向から喚き声が聞こえてきた。

 遠足組だ。

 盗賊のスキルで鍵を解錠し、リオ達の足跡を辿って追って来たようだ。


「鍵開けることができたんですねっ」

「ぐふ。まだー階層だからな。奴らでも解錠できる難易度なのだろうし、そうでなくては困る」

「なるほどっ」


 リオがヴィヴィに尋ねる。


「クズ達の数はどうだ?揃っているか?」

「ぐふ……ああ、問題ない。仲良く一緒にいるぞ」

「そうか」


 そう言うとリオがサラ達に手招きする。

 皆、リオの意図はわからなかったが指示に従いリオの元に集まる。

 リオは皆が集まったのを確認し、壁をぐっと押した。

 するとその部分がボコっと凹んだ。

 リオが押したのは壁に偽装されたスイッチだった。

 やって来た方向の頭上からゆっくりと壁が降りてきて通路を塞いでいく。

 それに気づいたクズ冒険者達の中から何人かが飛び出して来た。

 先頭を走るのはクズ盗賊だった。

 彼らは必死の形相で全力疾走したがその努力は報われなかった。

 彼らがたどり着く前に壁が完全に通路を塞いだ。



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