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798話 クズ盗賊、実力を見せつける?

 クズリーダーが偉そうな態度で言った。


「という訳でだ。お前らが依頼を先に受けたという事実は変えられねえ。だからよ、こうなったら仕方ねえから共同依頼で妥協してやる」

「「だな!!」」


 妥協などと言っているが最初からそのつもりで来たことをサラ達が気づかないはずがない。

 サラが彼らの問題点を指摘をする。


「事後依頼は禁止のはずです。私達について来て『依頼を達成した』と言ってもギルドは認めないでしょう」


 サラの言葉を聞いてクズ冒険者達が「がはは」と笑う。


「何がおかしいのですか?」

「事後依頼禁止と言っても全てじゃねえ。お前らがギルドに『俺らの力が必要だった。いなければ間違いなく失敗していた』と強く訴えればいい」

「は?」


 サラ達がバカを見る目を向けるが彼らは気づかなかったようだ。


「安心しろ。俺らもお前らを擁護してやっからよ」

「「だな!!」」

「「「「……」」」」


 彼らは一体どの立場からものを言っているのか。

 呆れているサラ達を置いてけぼりにしてクズ冒険者達の話は進む。


「よしっ、決まったな!」


 クズリーダーの叫びにメンバーが「おう!!」と腕を振り上げて応えた。


「……だめだこりゃ」

「ですねっ」



 彼らはそれで話はついたと思ったらしい。


「よしっ、行くぞ!」

「「おう!!」」


 彼らだけで元気いっぱいに叫ぶとダンジョンに向かってゆっくり歩き出す。

 が、すぐに止まった。

 動き自体が止まったわけではなく、その場で足踏みしてサラ達が追いつき、そして追い越すのを待っていた。

 見ればクッズポーズで見守っていた三組のクズパーティもその場で足踏みしていた。

 その光景はとても滑稽であった。



 足踏みして待っていても一向にサラ達がやってこないのでクズパーティが切れた。

 回れ右して戻ってくるなりサラ達を怒鳴りつける。


「ざけんな!なんでついて来ねえ!?俺らが待ってやってんのによ!」

「お前らが受けた依頼だろうが!俺らだけにやらせようとするな!」

「恥を知れ!恥を!」


 サラはチラリとリオの様子を窺ってからクズ冒険者達に顔を向けて言った。


「私達は共同依頼をする気はありません。あなた達がどうしてもこの依頼をやりたいならあなた達だけでどうぞ」


 サラは足踏みする三組のクズパーティに目を向ける。


「あなた達も一緒にどうぞ」


 と、次の瞬間、四組のクズパーティが同時に「ざけんな!!」と叫んだ。

 見事にハモった。

 もしかしたらクズ達は定期的に合同練習をしているのかも知れない。

 それはともかく、


「本当にあなた達は依頼を受ける気があるのですか?」

「それはこっちのセリフだ!」


 サラの問いにクズリーダーが怒鳴りつけるように答えた。


「大親友を自分達で助けたくないのですか?」

「そんなもん知るか!」


 クズリーダーが無意識に本音を口にした。

 その事に誰も気づかずサラ達を非難する。


「これはお前らが受けた依頼だろうが!」

「俺らを頼んじゃねぇ!」

「責任を持って自分達で依頼をこなせ!」


 すかさず、「だな!!!」の大合唱。

 ヴィヴィが呆れた顔で言った。

 と言ってもその顔は仮面で見えないが。


「ぐふ、私達は役立たずと一緒に行動する気はないぞ」


 すかさずクズリーダーが反論する。


「ざけんな!棺桶持ち如きが威張んじゃねえ!」

「足手纏いと一緒に行動する気はありません」


 サラの言葉に再び、「ざけんな!!」の大合唱が起き、思い思いに文句を吐き始める。



「落ち着けえーーー!!」


 クズリーダーのその言葉で彼のクズパーティだけでなく、他の三組のクズパーティも口を閉じた。

 彼は自分の統率力を自慢するかのように「どんなもんだ」という顔をサラ達に向ける。

 クズリーダー自身も一緒になって叫んでいたのだがそのことは忘れてしまったようだ。

 それはともかく、冷静さを取り戻したクズリーダーが偉そうに言った。


「つまりだ。お前らは俺らの実力が知りたいってことだな」

「いえ、実力以前にあなた方が必要ではあり……」


 クズリーダーはサラの言葉を最後まで言わせなかった。


「そもそもよ、お前らにはダンジョン探索で必須の盗賊がいねえんじゃねえのか?」

「それがどうしました?」

「おいおい、ダンジョンを舐めんじゃねえぞ」


 そう言って自分のパーティのクズ盗賊に目を向ける。


「おい!実力を見せてやれ」

「おう!」


 クズ盗賊は元気よく返事すると前に出てきた。

 そして、その場で片膝をつき、周囲を警戒する仕草をする。

 その姿はとても演技くさかった。

 クズ盗賊がポーズを決めるとクズリーダー他、残りの者も周囲を警戒するようなポーズを取る。

 そんなことをやる意味は盗賊以上にない。


「どうだ!?」


 そう言ったクズ盗賊はなんか誇らしげな顔をしていた。

 他のメンバーも誇らしげな顔をしていた。

 サラは彼らにデジャヴを感じた。

 そしてすぐ気付いた。


(ベルダの街で出会ったイケメンズ)


 好意を寄せる女冒険者達に寄生し、武具をアクセサリーと勘違いして格好をつけていた冒険者とは名ばかりの元男娼のひも達のことを。

 ただ、彼らとイケメンズでは大きな違いがあった。

 それは見た目である。

 イケメンズは見た目だけは良く絵になったが目の前の彼らは贔屓目に見ても並である。

 冒険者としての実力は彼らの方が上であろうが、遥かに実力が上であるサラ達の前で格好つけているのは滑稽であった。

 誰も反応しないのでクズ盗賊は感想を求めるようにじっとサラを見つめた。

 仕方なくサラが答える。


「『どうだ』と言われても特に言うことはありません」

「おいおい、この姿かっこいいだろっ?」

「……」


 クズ盗賊はそのポーズに絶対の自信を持っているようだった。

 しかし、盗賊クラスに、いや、冒険者に必要なのはカッコよさではない。

 どんなに格好いいポーズをしようとも実力がなければ意味はない。

 今回の場合、彼は盗賊としての実力を示す必要がある。

 この場で出来ることといえば魔物の接近を知らせるくらいだが、あいにく魔物が近くにいる気配はない。

 リオ達も魔物の気配を感じないので実際近くにはいないだろう。

 証明する手段がないとはいえ、格好で実力を判断しろとは無茶にも程がある。


(一体どういう頭をしているのかしら……いえ、考えたら負けね)

 

「まあ、強いて言うなら……」

「なんだ!?言ってみろ!」


 サラは面倒くさそうな顔をしていたのだが、クズ盗賊はそれに気づかないようで期待した目を向ける。


「普通、そんな格好で周囲を警戒しないのでは」

「ざ、ざけんな!!」


 サラの言葉にクズ盗賊は激怒し、顔を真っ赤にして叫んだ。

 


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