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795話 入会手続き その2

 入会手続きの列は自信過剰の不合格クズ達がいなくなり、三分の二くらいに減った。

 サラが見る限りもうクズは並んでいないようだった。


(やはり受験者の態度もチェックしていて試験が合格に達していてもそちらが問題で落とされた者達がいそうね)


 今度はギルド全体を見渡した。

 探索者の中にもクズはいないように見えた。

 もちろん、探索者全員が品行方正な者達だとは思っていないが、少なくとも先ほどまでいた者達のような強烈なクズ臭を放つ者はいない。

 


 ところで、先ほどギルド職員が言ったように現在、冒険者優遇制度を利用した入会だけでなく、一般の入会試験も中止している。

 そのことはギルドの入口に張り紙がされて明記されていた。

 とはいえ、その張り紙に気づかず、あるいは読まず、はたまた読めず中に入ってくる者達もいた。

 その者達の元へギルド職員が向かい、現在入試試験を中止していることを告げる。

 不満顔をしながらも去って行く者達が大半であったが、中には納得せず居座る者達もいた。

 今、まさにやって来た者達がそうだった。

 彼らはギルド職員の説明を受けても納得せず出ていこうとしない。

 言うまでもなく、彼らはクズ冒険者だった。

 

「まあ、そう言ってやるなって」


 クズらしく他人事のように言って自分達を擁護する。


「別に全員とは言わねえ。俺らだけでいいからよ、なんとか手続きしてくれよ」

「そういうわけにはいきません」

「だからそう言ってやるなって。試験が面倒だって言うならカットすればいいだろ。お前らだって楽できるぞ」

「そりゃあいいぜ!」

「リーダーは優しいな!」

「まあな!」


 彼らのギルド職員思いの提案をギルド職員は拒否した。


「規則は規則です」

「おいおい、規則規則って堅いこと言うなよ」


 そこでクズリーダーがキメ顔をして言った。


「規則ってのはな、破るためにあんだぜ!」

「「だな!」」


 クズリーダーはカッコいいと思って、そして本心からそう思って言ったのだがその言葉は絶対言ってはいけない言葉だった。

 「ギルドの規則なんか守る気はないぜ!」と堂々と宣言する彼らのようなクズを間違っても入会させるわけにはいかない。

 ギルド職員が命令を待っていたギルド警備員達に合図した。

 たちまち、ギルド警備員達がクズ冒険者達を取り囲む。


「な、なんだてめえら!?」

「お前達が探索者になることはない。さっさと出ていけ。二度と来るな」

「「「ざけんな!!」」」

「俺らはな!誇り高き冒険者だぞ!!」

「ならその誇りを持って冒険者の依頼をこなせ」

「「「ざけんな!!」」」


 彼らは正論を言われて何故かキレたがギルド警備員達は相手にしない。


「さあ、わかったらさっさと出ていけ」

「わからなくても出て行け」

「「「ざけんなーっ!」」」


 彼らはクズの誇りを持って(本人達はクズだと思ってないが)必死に抵抗したが、その抵抗も虚しくギルドから叩き出された。

 その後もギルドの外でギルド警備員達と揉めていたようだがやがて静かになった。

 恐らくギルド警備員に業務妨害だとボコられて衛兵に突き出されたのだろう。



 サラ達の番になった。

 一番最初にリオが番号札をギルド職員に渡した。

 番号を照合しているところでギルド職員の表情が微かに変わった。

 ギルド職員はこれまでとは明らかに異なる行動をとった。

 リオの後ろに並ぶサラ達に顔を向けて尋ねる。


「皆さんはお知り合いでパーティを組むつもりですか?」


 そのような質問をサラ達が並んでいる間、尋ねられた者はいない。

 明らかに以前からパーティを組んでいたように見える者達がいたにも拘らずだ。

 サラはギルド職員が自分達がリサヴィであることに気づいたのだと察する。

 そのことには別段驚きはしない。

 皆が冒険者のときと同じ名前とクラスで登録していたからだ。

 サラが代表して意図を尋ねる。


「そのつもりですが何か問題がありましたか?」


 サラの少し困ったような顔を見てギルド職員は周りの注目を集めているのに気づいた。


「あ、いえ。問題ありません。余計なことをお聞きして申し訳ありませんでした」


 それ以上、彼は何も聞かず淡々と入会処理を続けた。



 リオ達全員の手続きが終わり、揃ってギルドを出ようとしたところで別のギルド職員がリオ達のそばにやって来た。


「すみません。少しよろしいでしょうか?皆さんにお話があります」


 恐らくサラ達がリサヴィだと知り何か依頼をしたいのだろうことは見当がつく。

 しかし、サラは休ダンジョンのことが気になっており、今日中に少しでも休ダンジョンの様子を見ておきたかったのでこれ以上、時間を取られたくなかった。

 他の者達の目もあるので言葉を濁し遠回しに拒否する。


「それは急ぎですか?私達はこの後用事があるのですが」

「それはバイエルを出発するということでしょうか?」

「ええ、まあ。でも数日後には戻って来ます」


 サラの返事を聞き、ギルド職員はほっとした表情を見せる。


「そうですか。では、その用事が終わりましたらまた顔を出して頂けませんか?」


 サラは全員の顔を見回してから言った。


「わかりました」

「ではお待ちしております」



 サラは遺跡探索者ギルドを出た後でギルド職員の話は自分達が探しているナンバーズを飲み込んだサンドクリーナーに関係していたかもしれないと思った。

 だが、例えそうであったとしても今は休ダンジョンの方が気になるのでその事を口にすることはなかった。

 他の者達が口にすることもなかった。


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