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794話 入会手続き その1

 ギルド警備員達に連行されて行ったバカ達を見送りながらアリスが言った。


「あのバカ達っ、リーダーって呼ばれる人がいましたけどっ、冒険者じゃないですよねっ?」

「ぐふ、元、の可能性もあるな」

「えっ?でもっ元もありえなくないですかっ?バカ過ぎですしっ、文字もろくに書けなさそうでしたよっ?筆記試験パスしないですよっ」

「ぐふ、冒険者ギルドは選択問題だからな。パスする可能性はゼロではない」


 二人の会話にサラが参加する。


「しかし、それが三人ともなると流石に考えにくいですね」

「またどこかの支部で不正が行われているらしいですよ」


 そう答えたのはいつの間にか来ていたイスティだ。

 嬉しそうな顔をしながらメモ帳に何ごとかメモをしている。


「そうなのですか?」

「ええ。今、本部は必死にその支部を探しているようですが……」

「ですが、なんです?」

「一つじゃないかもしれないみたいです」

「「「「……」」」」

「そんなことより、皆さん合格されたのですよね。入会手続きに向かった方が良くないですか?」

「それもそうですね」

「まあ、私はネタが増えるのは大歓迎なのでこのまま留まって新たな……」


 サラは強引にイスティの話を終わらせる。


「さあリオ、手続きを済ましてしまいましょう。この後の予定もあることですし」

「ああ」



 サラ達は遺跡探索者ギルドに入ると入会手続きを行っているカウンターに向かった。

 バカ達に絡まれて出遅れたこともあり、既に列が出来ていたが冒険者優遇制度を利用する者達がギルドの外まで並んでいたものと比べると大したことはない。

 サラ達はその最後尾に並んだ。

 列を観察しているとその中にクズ臭をプンプンさせるクズらしき者達がいた。

 一般入試は筆記と実技だけで面接はない。

 そのため、実力を伴った性格だけが問題の者達なら探索者になれてもおかしくない。


(試験官は試験中の行動もチェックしていたみたいだけど完全には排除できないと言うことね)



 クズ臭を放つ者達の番になった。

 彼らは誇らしげな顔で手にした番号札をテーブルに置いた。

 いや、叩きつけるという表現の方が正しいか。

 ギルド職員は彼らの粗暴な態度に内心はともかく表面上は一切感情に表すことなくその番号札を受け取った。

 彼らの番号札と合格者の番号一覧を照し合わせて首をひねった。

 そして申し訳なそうな顔をして言った。


「申し訳ありませんが皆さんの番号はないようです」


 ギルド職員に遠回しに不合格だと告げられた彼らだが、驚くことなく平然とした顔で言った。


「ああ。確かに俺らの番号は載ってなかったな」

「はい、ですから……」

「つまり、何かの手違いで抜けたってことだ」

「「だな!」」

「……は?」


 彼らは試験の出来に相当自信があったようだ。

 それで自分達の番号がないのはギルド側に不備があったと判断したようだった。

 しかし、ギルド職員が彼らに合格を告げることはなかった。


「いえ。皆さんは全員不合格となっております。もし、まだ探索者になりたいとお考えでしたら再度試験に挑戦してください。ただ、現状、私どもバイエル支部では入会試験を中止しておりまして、いつ再開するか未定ですのでお急ぎの場合は他の街でお受けすることをお勧めします」


 ギルド職員は丁寧に説明し退場を促したが彼らには理解されなかった。


「おいおい、俺らの話聞いてなかったのか?俺らが不合格なのは間違いだ」

「「だな!」」

「いえ。間違いではありません。皆さん、全員不合格になっております」

「「「ざけんな!!」」」


 彼ら、いや、もうクズでいいだろう、クズ達の叫びがギルド中に響き渡る。

 何事かと皆の注目を浴びるが彼らは気にせず叫んだ。


「「「俺らの力はホンモンだ!俺らが保証する!!」」」


 彼らのクッズポーズを見てギルド職員が初めて本心を表情に現した。

 冷めた表情を。

 そして、待機していたギルド警備員達に指示する。

 

「“また”です。対応をお願いします」


 どうやら彼らのように不合格が信じられず、「合格しているはずだ」とクレームに来る者達が結構いるようだった。

 たちまち彼らのそばにギルド警備員達がやって来て彼らを列からの排除にかかる。


「お前達は不合格だ。さっさとギルドから出て行け!」

「「「ざけんな!」」」

「ふざけているのはお前達だ。お前達のしていることは業務妨害だ!」

「ざけんな!俺らが不合格な訳がねえんだ!」

「俺らは誇り高き冒険者だぞ!」

「だな!」

「なら、こんなところにいないで冒険者ギルドに行け」


 ギルド警備員の正論に彼らはキレた。

 

「ざけんな!俺らの力はな!冒険者だけでは収まり……って、聞けよ!!」


 ギルド警備員達は喚きまくる彼らを力ずくで列から引き摺り出してギルドの外へ連れて行った。

 彼らの姿が消えた後、ギルド職員が列に並んでいる者達に向けて言った。

 

「今、並んでいる皆さんの中もに彼らのようにギルドの手違いで番号が載っていないと考えている方がいらっしゃるかもしれませんので明言しておきます。そんなことは絶対にありません。番号がなかった方達は早々にお引き取りください。もし、また同様のことをする方達がおりましたら先の彼らと同様に業務妨害として衛兵に突き出すことになります」


 その言葉を受けて列から数人が抜けた。

 が、その足はギルドの出口ではなく、受付カウンターへと向かう。


「なんでしょうか?」

「奴らは不合格だったんだろうが俺らは違う!本当にお前らの不手際で不合格にされたんだ!」


 彼の発言の後に受付カウンターに集まって来た不合格者達から「だな!」の大合唱が起きた。

 当然、彼らもギルドから叩き出された。

 


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