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788話 クズ包囲網を破れ!

 サラは彼らと共同依頼を受ける気がないことをわからせるため冷たく言い放った。


「私に構っていないで自分達でできる依頼を受けたらどうですか?色々ありますよ」

「だから一緒に受けてやるって言ってんだろ」

「ですから自分達“だけ“でしてくださいと言っているのです」

「安心しろ!俺らはCラーーーーーーーーンク!冒険者だ!!」

「「おう!!」」


 クズリーダーの言葉にメンバーが元気よく腕を振り上げて続く。


(やはりクズには言葉が通じないわね)


「理解力がないようなので何度も繰り返しになりますが、自分達“だけ”で達成できる依頼を選んだらどうですか」


 今度は意味を理解できたようだが彼らの答えはズレていた。


「俺らはな、今、後輩育成に目覚めてんだよ」


 サラが先ほどリッキー退治の依頼書を取ろうとしたことから自分達より下のランクだと思い込んで上から目線で話しかけてくる。


「先輩が後輩のお前らに力を貸してやるって言ってんだ。素直に先輩の言うこと聞いとけ」

「「だな!」」

「結構です」


 クズ冒険者が呆れた顔で言った。


「お前なあ、リッキー退治なんて依頼料も達成ポイントもスズメの涙だぞ」

「しかも失敗率も高えんだ。やめとけって」

「俺らが一緒に受けてやるって言ってんだぞ」

「ここはよ、涙を流して喜んで『よろしくお願いします』って俺らに感謝すべきところだぞ」

「結構です」

「そう言ってやるなって」


 いつものように他人事のように語るクズ冒険者。

 そこへ別のクズパーティが割り込んできた。


「よしわかった!俺らが一緒に受けてやるぜ!」


 彼は一体何がわかったのか?

 尋ねる間もなく更に別のクズパーティが割り込んできた。


「いや俺らが受けてやるぜ!」


 クズ冒険者達はサラ(のパーティ)の奪い合いを始めた。

 サラは自分の正体を明かしていないし、彼らがサラの正体、あるいは実力を見抜いたようにも見えない。

 彼らはどうあっても自分達だけで依頼を受ける気はないようだった。

 そのことに別段驚きはしない。

 何故なら彼らはクズ冒険者だからだ。

 人の力を利用し、おいしいところだけ持っていく。

 そうすることだけを常に考えて生きているのがクズ冒険者なのだ。

 サラはクズ冒険者達を監視していたギルド警備員達に目を向けた。

 彼らはクズ冒険者達を排除するタイミングを測りかねているようだった。

 今追い払おうとしても「依頼を見てんだ!」と言われれば強く出れないからだ。

 少なくともクズ冒険者達を依頼掲示板から引き離す必要があるだろう。

 サラがギルド警備員達に声をかける。


「ここにはマトモな冒険者はいないのですか?」


 それに答えたのはギルド警備員ではなかった。

 誰がサラと一緒の依頼を受けるかで言い争いをしていたクズ冒険者達だった。


「おいおい、お前の正面にいるだろう」

「ここにもいるぞ」

「俺らもだぞ」


 サラを取り囲んでいたクズ冒険者達が次々と「俺はマトモな冒険者だぞ!」と名乗りを上げる。

 彼らは本気で言っているようだった。


「……ダメだこりゃ」


(これはみんなを連れてこなくて正解だったわ。私と違い短気だから間違いなく今頃乱闘になっていたわ。いえ、一面血の海になっていたわね)


 クズ冒険者達に影響されてか、サラも自分を客観的に見ることができなくなっていたようである。

 それはともかく、

 そう思うことでサラは自分の心を落ち着かせることに成功した。

 サラは依頼掲示板がある壁とクズ冒険者達で四方を囲まれて身動きが取れない状態だ。

 もちろん、サラの力を持ってすればクズ包囲網を突破するのは容易だ。

 仮にクズ冒険者達をボコったとしてもギルドはクズ冒険者達が全面的に悪いとわかっているのでサラに罪に問うことはないだろう。

 だが、その事を後でヴィヴィ達に知られれば「お前のほうが短気だったな」とか言われることは間違いないのでその選択を選びたくなかった。

 となると、このクズ包囲網を突破するための方法はただ一つしかなかった。

 それもあまりしたくなかったもう猶予はなかった。

 クズ冒険者の何人かがサラの素顔に興味を持ち下から覗き込もうとしたのだ。


(やるしかないわね)


 サラは彼らに背を向けると依頼掲示板のある壁を蹴って上空へと飛んだ。

 片手でフードを押さえて顔を隠しながらクズ包囲網を易々と飛び越えて着地すると受付カウンターへ直行した。



「すみません。壁を蹴ってしまいました。緊急事態でしたので」


 受付嬢はサラの行動に驚いた顔をしていたが心からの笑顔で迎える。


「いえ、大丈夫ですよ。こちらこそご迷惑をおかけしまして申し訳ありません」


 受付嬢の笑顔には先ほど結果的にだがクズに絡まれていた同僚の受付嬢を救った感謝も込められていた。

 

「それでご用件はなんでしょうか?」

「ちょっと聞きたいことがあるのですが」


 その問いに答えたのは受付嬢ではなかった。


「何でも言ってみろ!」


 そう言ったのはクズ包囲網を破るためにサラがとった突拍子のない行動に驚きあほ面晒して見送ったクズ冒険者の一人だ。

 彼はいち早く我に返ると慌ててサラの後を追っかけてきたのだった。

 それを皮切りに同じくサラを追って来たクズ冒険者達がやって来て次々と声をかける。

 受付嬢との会話を邪魔されたサラが彼らに文句を言おうとしたときだった。

 クズ冒険者達が依頼掲示板から離れ、流石にもう言い訳はできないだろうとギルド警備員達が行動を起こした。


「いい加減にしろクズども!」


 クズ冒険者達の愚行にうんざりしていたのだろう、言葉を飾ることなくクズ呼ばわりした。

 もちろん、クズの自覚のないクズ冒険者達は激怒する。 


「ざけんな!」

「誰がクズだ!誰が!?」


 クズ冒険者達は必死に抵抗したがギルド職員から、

 

「これ以上、業務妨害するならあなた達のことを本部に報告します!さあ冒険者カードを出してください!」


 と言われ、クズ冒険者達は文句を言いながらも渋々引き下がった。

 しかし、彼らはこれまで数えきれないほど「クズ!」と呼ばれながらもクズであることを自覚することなくクズ行為を続けてきた強者達である。

 この程度で彼らのクズ心が折れたりはしない。

 サラがやってきた時座っていた席に戻り次のチャンスを待つのであった!



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