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787話 クズ冒険者は楽して儲けたい

 現在、バイエルには冒険者が多く集まっていた。

 その多くは遺跡探索者ギルドへの入会が目的であり冒険者ギルドの依頼を受ける気がなかった。

 にも拘らず彼らの中には冒険者ギルドが提供するタダの茶や菓子目当てに冒険者ギルドに居座る者達がいた。

 いうまでもなくその者達はクズ冒険者である。

 ギルドにとって彼らは資産を食い潰すだけの害虫以外の何者でもなかったが、「依頼を検討してるところだ!」と嘘だとわかっていてもそう言われれば強く出れないし、追い出したとしても今度は住人や遺跡探索者ギルドに迷惑をかける可能性が高い。

 実際、何度も抗議が来ていた。

 冒険者ギルドは彼らクズ冒険者達にほとほと参っていた。



 サラは冒険者ギルドに入ってすぐ来たことを後悔した。

 クズ臭がプンプンしたからだ。

 冒険者達だが、依頼掲示板の前には誰もおらず、テーブルに足を乗せて乱暴に座った状態で遺跡探索者ギルドの悪口を言っていた。

 彼らは遺跡探索者ギルドの入会試験に落ちた、あるいは冒険者優遇制度が受けられなかった者達でその中には先の抗議活動に参加していた者達もいた。

 神経の図太さがAランク並みである彼らは何知らぬ顔でやって来てギルド警備員にその件を追及されても白を切り通したのである。



 サラの見る限りまともな冒険者は一人も見当たらなかった。

 クズが集まるからまともな冒険者がいないのか、まともな冒険者がいないからクズが集まるのか。


(これはあれね。卵が先か鶏が先か)


 ギルド職員達は心なしか元気がないように見える。

 受付カウンターでクズ冒険者の相手をしている受付嬢の顔色は悪かった。

 いつ吐いてもおかしくない状態だった。



 サラがやって来たことに気づいたクズ冒険者の一人が椅子から立ち上がるとサラに向かって腕を組んで仁王立ちしキメ顔をした。

 いわゆるクッズポーズである。

 今のサラは顔をフードで隠しているので美人だからというわけではなく、誰彼構わずやって来る者達全員にやっているのだろう。

 彼の行動で他のクズ冒険者達もサラに気づき、遺跡探索者ギルドの悪口を言うのをやめて一斉に立ち上がると彼らもクッズポーズをサラに向けた。

 受付カウンターにいたクズ冒険者達もである。

 サラは彼らを無視して依頼掲示板へ向かう。

 それを見てクズ冒険者達がゾロゾロと依頼掲示板へ集まってくる。

 クッズポーズをしたままで、である!

 受付カウンターにいたクズ冒険者達も向かったため、その隙に気分の悪そうだった受付嬢は別の者と交代した。



 遺跡探索者ギルド前で騒ぎまくっていたクズ冒険者達は「冒険者ギルドに依頼がない」と言っていたが、依頼掲示板には各種あらゆる依頼がずらりと並んでいた。

 よりどりみどりでないものを探す方が難しい。

 これであの場にいたクズ冒険者達が探索者に寄生しようとしていたことが証明された。

 ……まあ、彼らの言動を見れば証明などする必要もないことではあったが。


(……ナンバーズを飲み込んだサンドクリーナーに関係しそうな依頼はないわね)


 ギルド警備員がサラに寄生しようするクズ冒険者達を注意するが「依頼を見てんだよ!何が悪い!?」と珍しくクズロジックではなく、それらしい理由で返され反論できなかった。

 もちろん、彼らが本気で依頼を探しているわけではないとわかっているが、百パーセント確信しているがそれを証明することができないので渋々引き下がった。

 その姿を見てクズ冒険者達が一斉に腕を振り上げ勝利を喜び合う。

 それはともかく、サラである。

 クッズポーズしながら一人のクズ冒険者がサラに声をかけてきた。


「おい、一人なら俺らのパーティに入れてやらんでもないぞ。もちろん、ランクによるけどな」

「結構です。既にパーティに入っています」


 その言葉を聞いて彼らの目の色が変わった。

 サラは寄生する気満々でしつこく話しかけてくるクズ冒険者達を追い払うために依頼掲示板に貼り出されていた依頼書の一つに手を伸ばした。

 その依頼は人気がない、いや、皆に不評であるリッキー退治でランクはF。

 この依頼を受けられるのはDランクまでだが、Dランク冒険者であれば別の依頼を受けるだろう。

 これで彼らがサラをEランク以下だと思い失望して去っていくのを期待した。

 だが、サラの願いは叶わなかった。

 サラの予想以上に彼らのクズレベルは高かったのだ。

 横から伸びた手がサラの手を追い越して先にその依頼書に触れた。

 勢い余り依頼掲示板をばんっ、と強く叩く音がギルド内に響く。

 サラから依頼を奪い取る形になった彼だが、リッキー退治をやりたかったわけではない。

 サラの邪魔をするのが目的だ。

 そのクズ冒険者はサラにリッキー退治の依頼書を奪われないように手でしっかり押さえつけながらが言った。


「おいおい、こんな誰も喜ばねえ依頼やってどうすんだ」


 そんなわけはない。

 少なくとも依頼を出した者達は喜ぶはずだ。

 彼らのいう“誰も”とは寄生する自分達のことを指していることがわかる。

 それを皮切りにクズ冒険者達が次々とサラに非難の声を浴びせる。

 あるクズ冒険者が依頼書を剥ぎ取ってサラの前に突き出した。


「こいつにしろ。俺らのパーティも参加して“監督“してやるからよっ」

「「だな!」」


 つまり彼はサラ達と共同依頼を受け「何もせずただじっと見ているだけで報酬をもらうぜ!」と言っているのだ。

 ちなみにその依頼のランクはCだった。

 サラをDランクと判断したというより自分達が“監督しやすい”依頼を選んだようだ。

 正直者の彼のことをサラは何故か尊敬しなかった。



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