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786話 情報収集に冒険者ギルドへ向かおう

 サラは一人冒険者ギルドに向かっていた。

 話は少し前に遡る。



 宿屋に戻り、サラは今後のことを考えていた。

 探索者の合格発表まで時間がある。

 その間の時間を有効活用すべきだと思い、ナンバーズを飲み込んだと思われるサンドクリーナーの情報がないか冒険者ギルドで調べることを再度提案する。


「任せる」


 リオの回答は予想通りだった。

 「やめとけ」と言われる可能性もあったのでまだマシなほうであった。

 その後でリオは首を傾げおかしなことを言い出した。


「俺はなんで冒険者になったんだ?“あれほど大嫌い”だったはずなのに」

「大嫌いだったのですか?」

「そうみたいだ。冒険者のことを考えるとムカつく」


 リオは他人事のように言った。

 これはクズが自分達を擁護するときに客観的に述べるのとは意味が違う。

 リオは過去の記憶を失っているのでそのような話し方になるのだ。


「ムカつく、ですか」


 リオは益々感情を表に現すようになってきた。

 無感情だったリオが感情を取り戻すことは本来であれば喜ぶべきことのはずだがサラは不安にしかならなかった。

 サラはそう思いつつ言葉にしたのは別のことだ。


「冒険者になった理由ですが、あなたと同じく金色のガルザヘッサを仇と追っていたウィンドと行動を共にするためでしょう。彼らが行動を共にするなら冒険者になれと言ったのではないですか?」

「そうなのか?」

「私に聞かれても困ります。あなたのことです」

「なるほど」

「『なるほど』ではありません」


 サラは丁度いい機会だと思い、リオが何を思い出したのか尋ねてみることにした。

 サラは慎重に言葉を選びながら尋ねる。


「さっきの『冒険者が大嫌いだった』ということもそうですが、失った記憶が蘇って来ているのですか?」

「そうだな」

「それは一体どんな……」


 サラの言葉をリオは拒絶するかのように遮った。


「その代わりと言ってはなんだがそれまでの記憶が曖昧になって来ている」


 その言葉にアリスが驚いた顔で尋ねる。


「えっ?そんなことがあるんですかっ?」

「あるんだろ。実際そうなんだから」

「そうですかっ」


 リオが考えながら続ける。


「もしかしたらだが」

「何ですか!?」


 リオはサラをじっと見ながら言った。


「サラ、お前にどつかれ過ぎたせいかもしれない」


 リオの期待外れの答えにサラはがっくりしながら言った。


「……私は冗談を言っているつもりはありませんが」

「ぐふ、冗談とは言い切れんぞ。お前はリオをどつきまくっていたからな」

「他人事のように言わないでください!あなただってどついていたでしょうが!」

「ぐふ!失礼な!お前とでは桁が違うわ!」

「くっ……」


 そこでアリスが「あっ」と呟いた。


「どうしました?」

「そう言えばっ」


 アリスが考えながら続ける。


「わたしっ、サラさんにどつかれてからっ失言が多くなった気がしますっ」

「それは最初からです」


 サラは考える素振りも見せず即答した。


「ぐふぐふ」

「酷いですっ」



 サラはリオが自分の記憶について語る気がないと悟り話を戻す。


「冒険者ギルドに行く件ですがヴィヴィはどうです?」

「ぐふ、私はやめておこう。ここの魔装士達は偉そうにしているからな。冒険者達の反感を買っている。特にクズ冒険者達は魔装士を自分達より格下だと思っているからな。八つ当たりされかねない。もちろん、返り討ちにするがそうなるとわかっていて向かうほど私は好戦的ではない」

「あなたはいつも偉そうにしていますし、好戦的ですけどね」

「ぐふ、もう一つ理由ができたな。今の言葉で私の繊細な心が傷ついた」

「そんなもの最初から持ってないでしょうが!」

「ぐふぐふ」


 サラは最後の一人、アリスに顔を向ける。


「アリスはどうですか?」

「わたしも断りますっ」

「理由を聞いても?」

「説明するまでもないと思うんですけどっ」


 アリスはそこで一旦言葉を切り、ヴィヴィを見ながら続けた。


「本性を現したヴィヴィさんをっリオさんと二人きりにさせるなんてできませんっ」

「ぐふ……」


 アリスはハイト山脈の山道をショートカットする際、ヴィヴィがリオに抱えられて運ばれた事を言っているのだ。

 リオが勝手にやったことなのだがアリスの中ではヴィヴィがそう仕向けたことになっているようであった。

 ヴィヴィはアリスの視線を無視してサラに言った。


「ぐふ、そもそも一人で行けないとか、子供か」

「なんですって!?」


 こうして皆に冒険者ギルドへ行くことを拒否され、サラは一人で向かうことになったのだった。


(というか。これはリオのためなのになんで私だけが苦労しなきゃならないのよ!)


 そう思ったものの、自分から口にしてしまった手前、後には引けない。

 そんなことをしようものならヴィヴィにまた嫌味を言われるに違いない。

 出かけようとするサラの背にヴィヴィが声をかけて来た。


「ぐふ、ギルドで暴れるなよ」

「サラさんは短気ですからねっ」


 サラはその言葉を聞こえなかったフリをする。

 だが、確かにクズに絡まれたらぶっ飛ばすことになるかもしれない。

 少しでもその可能性を減らそうと目立たないようにフードを深く被り顔を隠すことにした。


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