表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
782/863

782話 筆記試験 その1

 遺跡探索者ギルド入会試験当日。

 サラ達が遺跡探索者ギルドにやって来ると多くの者達が集まっていた。

 どうやら彼らも入会試験を受けるためにやって来たようだ。

 ギルド職員が彼らを試験会場へと誘導していた。

 サラ達も説明を受けて遺跡探索者ギルドの二階にある試験会場へ向かった。

 会場には試験官が既におり、やって来た受験者達に席の案内をする。


「席は決められております。ご自分の番号の書かれた席にお座りください」


 サラ達の席は窓際で一列に並んでいたため最初受付順かと思った。

 しかし、他の受験者達はサラ達と反対側のドア側に集中していた。

 サラ達と彼らとの間がぽっかりと空き違和感ありまくりだった。

 すぐこの配置の意図に気づいた。

 サラ達はこの配置によって不利益を被ることはないので不満はなかったが、この配置が気に入らなかった者達が抗議の声を上げた。


「なんだこのおかしな配置は!?」


 文句を言った者達はドア側の列、つまりサラ達から最も離れた位置に席がある者達であった。

 これまでクズを飽きるほど見てきたサラ達は彼らがクズであることを確信していたが、流石に彼らが現役のクズ冒険者なのか、元冒険者のクズなのか、あるいはただのクズなのか、までは見分けることは出来なかった。

 それはともかく、試験官は抗議をする者が出ることをわかっていたようで慌てることなく淡々と言った。


「お答えできません。席の変更は出来ませんので騒がず決められた席にお座り下さい。もうまもなく試験を開始します」


 しかし、彼らは試験官の言うことを聞かず勝手に席を変えた。

 彼らの多くの移動先はサラ達の隣の席だった。

 席に着くなり「よろしくなっ」とキメ顔らしきものを向けて来た。

 何故、彼らがそこまで席に拘るのか?

 言うまでもないかもしれないが一応説明すると彼らは自力で問題を解く気がないのだ。

 いや、ないのは気ではなく、力のほうかもしれない。

 なのでカンニングする気満々であった。

 最初の席ではカンニングする相手がいない(互いにカンニングする側だと察した)ので問題を解けそうなサラ達のそばにやって来たのである。

 もちろん、サラ達の容姿に惹かれたのも理由の一つである。

 この時のヴィヴィだが、魔装着は身につけていたが仮面は外していた。

 魔装具の仮面には望遠機能があり、カンニング道具にも使えるため筆記試験中は着用が禁止されていたのだ。

 そのため、珍しく美しい素顔を晒していたが不機嫌そうな顔をして近づく者達を拒絶していた。

 しかし、その程度でクズが引き下がるはずはなく、ヴィヴィの隣もサラ達に勝るとも劣らずの人気であった。



 試験官が彼らに何度も元の席に戻るよう注意するがクズ達は勝手に座った席から移動しようとしなかった。

 更にサラ達の隣の席を取れなかった者達と争いを始める始末である。

 試験官はため息をついてから彼らに言った。


「ではあなた達は試験を受ける資格なしと判断して失格とします。直ちに部屋から出て行ってください」


 試験官に失格と言われたクズ達が怒りだした。

 脅しとも取れる言葉を試験官に放つが彼は動じなかった。

 試験官はこんなこともあろうかと用意していた笛を吹く。

 たちまち、部屋にギルド警備員が突入して来た。

 やって来るのが異常に早いことから彼らもまたこんなこともあろうかと部屋のすぐそばでスタンバッていたのだろう。

 この時のクズ達だが、会場への武器持ち込みは禁止のため丸腰であった。

 もともと大した力のない彼らなのであっさりとギルド警備員達に捕えられた。

 

「ざけんな!なんで俺らがこんな目に遭うんだ!?あん!?」

「私の指示に従わなかったからです」

「てめえ何様だ!?」


 試験官は冷めた目をしながら言った。


「試験官です」


 試験官の言葉に彼らの一人がキレた。


「それがどうした!俺らはな!誇り高き冒険者だぞ!」


 そう叫んだクズ、いや、クズ冒険者がギルド警備員に押さえられながらも懐から冒険者カードを取り出し自慢げに試験官に見せつける。

 それに倣って他の者達も冒険者カードを見せつける。

 どうやら彼らは簡易面接でクズであることがバレて冒険者優遇制度が利用でなかった者達のようだ。

 それで諦めることなく一般入会試験を受けることにしたようだった。

 試験官は冷めた目をしたまま言った。

 

「では冒険者でのご活躍をお祈りします」


「ざけんな!」の大合唱が起きたがそれだけだ。

 クズ達は必死に抵抗したものの部屋から追い出された。

 クズ達の愚行が行われたのはこの部屋だけではなかった。

 筆記試験会場として用意された部屋はあと二つあったのだが、どちらでも同じような騒ぎが起きたのだ。

 驚くことにこの騒ぎにより試験が始まっていないにも拘らず受験者の半数近くが不合格となった。

 入会試験申込書を提出するときに合格した際の探索者カードを作成するという名目で生体情報をとっていたが、この情報はブラックリスト作成にも利用される。

 今回、指示に従わず失格となったクズ達は問題行動を起こす危険人物としてブラックリストに登録され、探索者になることはできなくなった。

 ブラックリストは全遺跡探索者ギルドで共有されるためバイエル以外で試験を受けようとしても無駄である。

 騒ぎが収まり、予定より遅れたが筆記試験が開始された。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ