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779話 入会試験手続き その1

 遺跡探索者ギルドの入口は大きく作られている。

 それはリムーバルバインダーを装備した魔装士を基準に設計しているからだ。

 中にいた探索者だが約三分の一が魔装士であった。

 それも偽魔装士ではなく、“本物“の魔装士であった。

 偽魔装士が一人もいないのは偽魔装士は探索者になれないからだ。

 昨日はそれを知らずにやってきた偽魔装士達がいた。

 彼らは事実を知っても納得せず、抗議し続けた。

 対応したギルド職員をはじめギルド警備員達は彼らを説得しようとしたが相手は偽魔装士であると同時にクズであった。(必ずしも偽魔装士=クズではないのだ)

 クズロジックを展開する彼らと会話が成立するはずもなく、最終的には強硬手段をとり彼らを街の外に捨てたのであった。



 冒険者専用の受付カウンターの隣が一般入会用の受付カウンターであった。


「確かに誰も並んでいませんね」

「ああ」


 リオはどうでもいいように返事した。

 リオは探索者にどうしてもなりたいわけではない。

 カリスの愚行で失ったナンバーズを手に入れたいだけなのだ。

 そのためには探索者になっていた方が何かと便利かもしれない、とその程度の気持ちなのだ。

 ちなみに冒険者優遇制度を利用すると試験が免除されるだけでなく、冒険者ランクと実績を考慮してランクが決定される。

 冒険者であっても申請しなければ一般の入会試験を合格する必要があり、合格しても最低ランクのFから始まることになる。

 遺跡探索者ギルドは神官を優遇する制度はないのでサラとアリスもFから始めることになる。

 ヴィヴィは冒険者専用の受付カウンターでギルド職員とクズ冒険者達が何やら揉めているのを見て言った。


「ぐふ、列が動かなかったのはあのクズ達が原因だな」

「ですねっ」


 考えるまでもなく、クズ冒険者達がクズロジックを展開してギルド職員を困らせているのだ。

 彼らが昨日の偽魔装士達と同じ運命を辿るのは時間の問題のように思われた。

 遺跡探索者ギルドに入ってきたサラとアリスの美しい姿を見て冒険者専用の受付カウンターに並んでいた冒険者の多くが一斉に腕を組んで仁王立ちしキメ顔を向けた。

 その行動をとったのは言うまでもなくクズ冒険者である。

 リオも美形なのだが好意を向ける者は誰もいなかった。

 無表情ながらもどことなく冷酷な印象を与えていたからかもしれない。



 リオ達が誰も並んでいないガラガラの一般入会用の受付カウンターへと向かう。

 サラ達はクズ冒険者達を無視したが彼らはお構いなしに自慢のキメ顔を見せようとサラ達の動きに合わせて体の向きを変える。

 その行為は無駄に終わったかに見えたがそうでもなかった。

 その奇行はギルドにいた探索者達の目を楽しませたのだ。

 カウンターでリオ達を受付嬢が笑顔で迎えた。


「いらっしゃいませ。こちらは一般入会用でございます。冒険者優遇制度を利用しての入会手続きはできませんがよろしいですか?」

「はい」

「承知しました。では探索者について簡単にご説明しますね」

 

 受付嬢から説明を受けた後、入会試験申込書とペンを受け取った。

 ちなみに冒険者優遇制度を利用するのであれば、冒険者ランク、パーティ名、挑んだダンジョン、これまでに倒した魔物など冒険者の実績も記入する必要がある。


「ご記入にはあちらのテーブルをご利用ください」


 受付嬢に示されたテーブルには先客がいた。

 三人組でテーブルの上に置かれていた入会試験申込書には名前だけ書かれて後は空欄だった。

 名前を記入したところで中断しリュックの中身の点検を始めたようだった。

 それも全員がである。

 

「ぐふ、今ここでやることではないだろう」

「ですねっ」


 サラ達は彼らの行動が理解できないが所詮他人事なので相手にせず自分達の申込書の空欄を埋めていく。

 サラは書いている途中で彼らのねっとりしたいやらしい視線を感じたが無視した。 

 サラがすべての項目を書き終えた時だった。

 その上に何かの紙を乗せられた。

 名前だけ書かれた入会試験申込書だった。

 サラが乗せた者達に顔を向けると彼らは腕を組んで仁王立ちしてキメ顔をしていた。

 つまり先客の彼らはクズであった。

 サラはクッズポーズについては何も言わず事実だけ述べる。


「邪魔です」

「そう言ってやるなって」


 彼らの一人が何故か誰かを庇うかのように言い、サラが退かした彼らの入会試験申込書を再びサラの申込書の上に乗せた。

 

「邪魔です」

「だらからそう言ってやるなって」


 またも他人事のようにそう言うと自慢のキメ顔をしながら言った。


「ちょっと頼みがあんだよ」

「「だな!」」

「は?」


 サラのあらゆる頼み事拒否する気満々の表情を見ても彼らは何も感じなかったらしく先を続ける。


「俺らちょっと手が離せなくてな。代わりによ、申込書を読んでくれねえか。そんで俺らが言う通りに書いてくれ」

「は?」


 サラは更に拒絶する表情をするがやっぱり彼らには通じなかった。

 彼らは何故かサラが協力すると思ったようで再びリュックの中身の点検をする、

 フリを始めた。

 そしてサラに命令する。


「さっさと読め!」

「急げよ!」


 サラは察した。

 彼らはろくに文字の読み書きができないのだと。

 にも拘わらず探索者になろうとやってきたのだと。

 サラは彼らの楽観的で行き当たりばったりというか考えなしの行動に呆れた。


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