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776話 偽魔導士、散る

 サラは背中にリオ達の冷たい視線を感じながらも気づかぬ風を装い八つ当たり気味の視線を残存偽魔装士達に向ける。

 銅貨を握っていた偽魔装士達は慌ててそれをポケットに突っ込んだ。


「さっきのクズと同じ目に会いたくなければそこを退きなさい」


 偽魔装士達がばばっと左右に分かれて道を開けた。

 もちろん、それで終わらない。

 彼らはリオ達の後をついて来たのだ。

 それも誇らしげな顔で。

 と言ってもその顔は仮面で口元しか見えなかったが。

 彼らはリサヴィに寄生する事を諦めていなかった。

 それどころかサラの強さを見て「このパーティは当たりだ!」とパーティ入りする思いを強くしたのであった!

 


 リオ達は街の入口にやって来た。

 先の偽魔装士達とのやり取りを見ていたらしい門番が後ろをついて来た偽魔装士達にチラリと視線を送ってからリオ達に同情の言葉をかけて来た。


「災難だったな」


 その言葉に反応したのはリオ達ではなかった。


「本当だぜ!探索者ギルドの奴らめ!」


 偽魔装士達が反応したのだ。

 彼らは被害者ぶって遺跡探索者ギルドの文句を言い始める。

 呆れた顔をする門番にリオが尋ねた。


「いくらだ?」


 リオに街の入場料を聞かれ門番は改めてリオ達の姿を見て首を傾げる。


「お前達、冒険者でも探索者でもないのか?傭兵か何かか?」


 冒険者は冒険者カードを見せれば入場料を払わなくて済むし、バイエルのように遺跡探索者ギルドがある街なら探索者カードでも無料で街に入ることが出来る。

 門番の問いにはサラが答えた。


「まあ、そんなところです」


 冒険者である事を明らかにしないのはオッフルの一件以来、リオが冒険者ギルドを嫌っているのもあるがクズ対策でもある。

 クズ達の情報網はバカに出来ない。

 リオ達の意思とは関係なくこれまで数えきれないほどのクズがリサヴィと関わって散っていったが未だリサヴィを利用できると考え近づいてくる者達がいるのだ。

 ちなみにその者達は例外なく自分達をクズだと思っていない。

 サラ達はもう十分過ぎるほどクズを堪能したので出来るだけクズとのエンカウント率を下げたいのだ。

 そのため門番であろうとリサヴィだと知られない方がいいと思ったのだ。

 今回は更に既にエンカウントしてしまい後をついて来た偽魔導士達にも入場料を払うところと見せて冒険者ではないと思わせてパーティ入りを諦めさせる狙いがあった。

 余計な出費になるがサラ達にとって入場料など端金であり痛くも痒くもない。

 門番は訝しげな表情をしながらもそれ以上尋ねずに入場料を口にする。

 リオ達がその金額を払い街へ入った。


 偽魔導士達だが、残念ながらサラの願いは叶わなかった。

 彼らは寄生出来れば冒険者出なくても構わないと思っていたのだ。

 それどころか冒険者である自分達の方が格上だと思い込む始末であった。

 彼らの頭の中にはサラに吹っ飛ばされた者のことは一切記憶に残っていなかったのである!

 サラ達に続き偽魔装士達がなんか偉そうな態度で門番に冒険者カードを見せつけながら街へ入っていく。

 いや、行こうとしたが門番に止められた。

 彼らが最初、この街にやって来たときは冒険者カードを見せればすんなり中に入れたのに今回拒否されて怒り出す。


「なんで邪魔しやがる!?」

「これが見えねえのか!?俺達は冒険者だぞ!」


 門番は彼らの冒険者カードを見ながら言った。


「クズは通せん」

「「「誰がクズだ!?誰が!?」」」

「お前らだお前ら」

「「「ざけんな!!」」」


 門番は冷めた目で彼らの冒険者カードを指差す。


「お前らこそそれが見えないのか?」

「自分のカードをよく見ろ」


 言われて彼らは自分達の冒険者カードに捺印が加えられていることに気づく。

 捺印は、


 クズ


 であった。


 「誰がやりやがった!?」


 やったのは遺跡探索者ギルドだ。

 その捺印は彼らクズのためにわざわざ特注したもので彼らをボコって気絶させた際に彼らの所持品から冒険者カードを探してその捺印を押したのだ。

 しかし、彼らはその特別待遇が気に入らなかったようだ。

 怒り狂う偽魔装士達に門番の一人が面倒臭そうな顔をしながら言った。


「その捺印がしてある者は冒険者の特権適用外だ」

「「「ざけんな!」」」


 彼らはその捺印を必死に擦って消そうとするがそのインクは特殊で擦ったくらいでは消えない。


「どうしても中に入りたかったら入場料を払え」


 そう言って提示された額はリオ達が払った額の十倍であった。

 これは門番が私腹を肥やそうとしているのではない。

 余分に得た金は先程の荷馬車の運送費に充てられるのである。

 当然のことながら偽魔装士達は納得しない。


「高過ぎんだろうが!ぼったくりかよ!?」

「お前達は危険人物だから当然だ」

「「「ざけんな!!」」」

「無理にとは言わん。嫌ならさっさと別の街にでも行け。クズども」


 かっときた偽魔装士達が門番に脅しをかける。


「お前らの暴挙を冒険者ギルドに訴えるぞ!」

「それでもいいのか!?あん!?」


 彼らの脅しに門番は投げらやりに答える。


「訴える訴えろ」

「よしっ!その言葉忘れんなよ!」


 彼らは堂々とした態度で街の中に入ろうとした。

 それを見て門番達は彼らを蹴り飛ばした。

 悲鳴を上げ地面を転がる偽魔装士達。

 

「いってえなあ!何しやがる!?」

「言った言葉には責任を持て!」


 門番達が偽魔装士達に見下した目を向けながら言った。


「誰がこの街のギルドに訴えろと言った」

「他の街へ行って訴えろ」

「「「ざけんな!」」」

「この街の冒険者ギルドに訴えたかったらまず入場料を払え。お前らの訴えが認められれば返金してやる」

「よしっわかったっ。俺らの訴えが認められなかったら金を払ってやる」


 彼らの一人が偉そうにそう言うとまた街へ入ろうとする。


「勝手にルールをつくるな」


 門番達は再び偽魔装士達を蹴り飛ばし、彼らは悲鳴を上げながら地面を転がった。



 偽魔装士の一人がこれまでのデカい態度から打って変わって卑屈な笑みを浮かべながら門番達に交渉を始める。


「なあ、これは何かの間違いなんだ」


 それに他の偽魔装士達も続く。


「その通りだ!」

「俺らが保証する!!」


 一人がそういうと皆が倣ったかのように腕を組んで仁王立ちしてキメ顔を門番達に向ける。

 と言ってもそのキメ顔は仮面で口元しか見えなかった。

 残念ながら効果はなかった。

 仮面がなくても同じ結果だっただろう。


「お前らクズはみんなそう言う」

「「「誰がクズだ!?誰が!?」」」

「お前らだお前ら」

「「「ざけんな!!」」」


 偽魔装士達は遺跡探索者ギルド相手に行ったようにクズロジックを展開して門番達を説得しようとするが当然失敗に終わる。

 門番は街を守るのが仕事である。

 頭がおかしいとわかっていながら街に入れて問題を起こされたら自分達が責任を問われる可能性があるため強制排除することにした。


「お前らのような話が通じない頭のおかしい奴らは金をいくら出そうと街には入れん!さっさと消えろ!これ以上、訳のわからんことを喚くなら敵対行為として強制排除する!」


 偽魔装士達は門番のその言葉を聞いても退かなかった。

 ただの脅しと思ったようで更に大声を出して喚いた。

 門番達はギルド警備員達やサラのように手加減をしなかった。

 門番の一人が腰に吊るした剣の柄を握ったかと思うとすぐさま一閃し、クズロジックを喚きまくる偽魔装士の一人の首を刎ねた。

 それを見て非難する別の偽魔装士を他の門番が同じように首を刎ねる。

 それらを見て残りの偽魔装士は悲鳴を上げて逃げ出した。



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