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772話 青の斬撃

「さあ終わりにするか」


 フルーダがゆっくりと迫る。

 元盗賊のクズは後退しながら“ク頭脳”をフル回転させいい案が浮かぶまでの時間を稼ごうとする。


「へ、へへっ。そんなこと言うなよ。なっ?わかんだろ?」

「わかるか。オレはバカだがクズじゃない」

「ざけんなーっ!!」

「……」

「ちょ、ちょ待てって!……そ、そうだ!これでちょうどいいじゃないか!」

「何がだ?」

「ほれ、この通り俺一人になった!つまりだ!募集定員ピッタシじゃないか!」


 そう言った元盗賊のクズはとても素晴らしい考えだと思ったようで誇らしげな顔をしたがフルーダはそうは思わない。

 今の提案の問題点を指摘する。


「お前は実力を証明していない」

「さっき見せただろ!?俺の投剣凄かっただろ!?」

「全然ダメだ」

「そんなこと言うなよ!このまま決闘したらお前は当初の予定通り死ななきゃならないんだぞ!それでいいのか!?」


 またも訳のわからないこと言い出した元盗賊のクズ。

 冗談の様に思えるが本人は至って本気であった。


「すまなかったな」


 元盗賊のクズは突然出たフルーダの謝罪の言葉を自分の都合のいいように捉える。

 

「わかってくれたか!?じゃあ、これからは同じパーティ……」

「会話などしようと思わずさっさと殺しておくべきだった」

「な……」

「お前から少しくらい謝罪の言葉が出ればと思ったがそんなものはなかったようだな。そんなものをクズのお前に期待したために恥の上塗りをさせてしまった」


 フルーダの頭の中でリオの言った言葉が蘇った。

 不本意だがその言葉がこの場に最適と思い引用することにした。


「ここでお前を殺すのはお前のためでもある。これ以上愚行を繰り返さないためにな」

「そ、それならお前らと一緒に行動すれば解決だろ!よしっ、決まっ……」

「そんな未来はない」

「そんなこと言うなよ!大親友だろ!?」

「そんなものになった覚えもない」

「だからそんなこと言うなって!よしっ決まったな!!」


 元盗賊のクズは今度は中断させまいと早口で言い切った。

 最後まで言えたことに満足げな顔をする彼にフルーダが冷めた目を向けながら言った。


「そうか。やっと死ぬ覚悟が決まったか」

「そうじゃねーよ!お前は理解力がねえのかよ!?そこまでバカなのかよ!?」

「お前にだけは言われたくない」

「ざけんな!」


 流石に彼もフルーダが手を抜く(死んでくれる)気がないことにやっと気づいた。

 死が目前であることを悟るがまだ諦めはしない。

 “ク頭脳“をフル回転させて必死に死から逃れる策を練る。

 過去の記憶を辿り、閃いた。


「そ、そうだ!俺の嫁を知ってるか!?」

「……」

「お、お前も知ってる奴なんだ!」


 そう言うと元盗賊のクズがフルーダにその嫁の名を告げた。

 その女性は冒険者養成学校の同期の一人でフルーダが恋心を抱いていた者だった。

 フルーダはその頃のことを思い出す。


(そういえば誰が好きだとかいう話をしたことがあったな。こいつよくそんなこと覚えていたな)


 元盗賊のクズが悲愴な表情をして同情を誘おうとする。


「ガキもいんだよ!可愛い息子がな!なあ、わかんだろ!?」


 フルーダはその言葉を聞いて少し驚いた顔する。


「まさかその子供の名前は」

「知ってるのか!?」


 フルーダは真剣な顔で子供の名を口にする。


「クズ太郎か?」


 元盗賊のクズが大きく頷いて叫ぶ。


「そうだ!クズ太郎だ!よく知ってたな!俺が死んだら嫁だけじゃなく息子のクズ太郎も可哀想だ……ろ……?」


 元盗賊のクズは言葉を発している途中で周囲の様子が変だと気づく。

 それで彼はフルーダが言った息子の名が絶対つけるはずのない名であることに気づく。

 鎌をかけられたのだと察した。 

 元盗賊のクズは悲愴な表情から一変して顔を真っ赤にするとフルーダを怒鳴りつけた。


「てめえ騙しやがったな!!何がクズ太郎だ!?」

「最初に騙したのはお前だろ。オレもまさかこんなのにひっかかるとは思わなかったぞ。お前、オレよりバカだろ」

「ざけんなー!!」


 フルーダはクズに落ちた同期が喚きまくる情けない姿を見ているうちに体の中で何かがぷちっと切れた気がした。

 フルーダが彼に剣の切先を向ける。


「お前に未来は必要ない。過去に、いい思い出の中だけに生きろ」


 そう言った直後、その剣の刀身が青白く輝いた。

 フルーダの剣は魔道具ではあったがこんな光を放つ機能はなかった。

 その光を見てフォトトナが思わず叫ぶ。


「まさかあれはラグナ!?」


 グース、ジットも驚きの声を上げる。


「何だと!?」

「ま、間違いない!確かにあの光の色はラグナだよ!」


 元盗賊のクズはフルーダの手にした剣の刀身が青白く輝くのを見て、それがラグナの光だとは気付かなかったが流石に危険なものであることだけはわかった。

 

「わ、わかった!諦める!お前らのパーティに入る件は諦める!なかったことにしてやる!だからここで決闘は終わりだ!しゅーーーりょーーーー!!」


 もちろん、フルーダは終了にしない。

 後退りしながらフルーダから距離を取ろうとする元盗賊のクズが必死に命乞いする。


「ちょ、ちょ待てよー!俺は冒険者養成学校の同期だぞ!お、お前の大親友だぞ!大親友の俺を殺すのか!?そんなことしねえよな!?なあーーーーー……」


 叫んでいる途中で元盗賊のクズの首が宙を舞った。

 叫ぶ表情をした元盗賊のクズの首が地面に落ちてころころ転がる。

 遅れてパタンとその体が倒れた。

 こうしてフルーダとクズ二匹との決闘は終わった。



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