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771話 フルーダVS同期のクズ

 どうやっても条件を変えられないと悟った彼らは必死に“ク頭脳”を働かせた。


「わかった。その代わり俺らも条件をつけさせてもらう」

「お前達にそんな権利はない」

「まあそう言ってやるなって」

「話くらい聞いてやったらどうだ?」


 またも自分達のことなのに他人事のように言う元冒険者のクズ達。


「……」


 彼らは沈黙を了承と判断してその条件を口にした。


「決闘相手は俺らに選ばせてくれ」

「なんだと?」

「パーティ内の決闘はダメじゃなかったのか?」


 ジットの問いに元冒険者のクズの一人が偉そうに言った。


「そうだが、それしかないというなら仕方ない」

「それで誰を選ぶんだ?」


 グースの問いに元冒険者のクズ達はニヤリと笑い、二人揃ってフルーダを指差した。

 それに対してフルーダは沈黙を保つ。

 元冒険者のクズ達は自慢げに理由を語る。


「そもそも今回の元凶はこいつだ」


 元戦士のクズは自分達が嘘をついてフルーダに助けを求めた事実など全くないかのように堂々と言い切った。


「「「「……」」」」


 元盗賊のクズも続く。


「それによ、フルーダがいなくなればパーティメンバーの数も丁度いいじゃねえか」


 グースが元盗賊のクズを見て言った。


「お前は盗賊だろ。俺がいなくなった方がパーティのバランスはいいぞ」


 グースの指摘は元盗賊のクズには聞こえなかったようで無反応だった。

 このやり取りの間、ずっと沈黙を保っていたフルーダが口を開いた。


「いいだろう。その決闘受けてやる。オレも皆に迷惑をかけた落とし前を自分でつけたいと思っていたところだ」

「言うまでもないが決闘は二対一だぞ」


 元冒険者のクズ達は情けないことを何故か偉そうな態度で言った。

 その理由を続けて話す。


「潜在能力は冒険者養成学校の成績からいっても俺らの方が上だと明らかだが、今はお前の方がランクも経験も上だからな」

「クズリーダーのせいで遠回りしまったからな」

「だがここからは最短距離で一気にAランクまで突き進むぜ!」

「だな!!」


 彼らは自分達の実力不足をまたも死んた者達のせいにした。

 何ごとも人のせいにできてとても幸せそうだった。

 フルーダは元冒険者のクズ達の提案に反対しなかった。


「構わないぞ。いや、そのほうがオレも助かる。どちらか逃す心配もないからな」

「「よしっ決まったな!!」」


 そう言うと二人がフルーダのそばにやってきた。

 何しにきたのかと警戒していると耳を疑うようなことを口にした。


「ここはよ、同期のよしみで頼むぜ」

「だな!」

「は?何を頼むんだ?」

「おいおい、決まってんだろ。ちょっと手加減してくれればいいんだよ」


 このクズ達はデッドオアアライブの意味をわかっていないようだった。

 手加減しろ、イコール、死んでくれ、である。

 いや、わかってて言っているのかもしれない。

 何故なら彼らはクズである。

 クズは自分ファーストであり、他人の事など全く気にしないからだ。


「寝言は寝て言え」

「はははっ。そう言ってやるなって」

「頼んだぞ!」


 彼らは何故かフルーダの言葉を冗談だと思ったようだった。

 決闘の位置へ歩き出した彼らのその顔はあるはずのない未来を思い浮かべとってもうれしそうだった。

 決闘の立ち会い人はそのやり取りを見ていた冒険者が引き受けた。



 フルーダと元冒険者のクズ二人による変則的な決闘が始まった。

 元冒険者のクズ達は「手加減頼むぞ!」と目をパチパチさせながら向かってきた。

 その姿を見てフルーダは心底自分の愚かさを恥じた。

 

(……リオの言う通りだ。オレは大バカだ。こんなクズ達のことを同期というだけで疑いもなく信じてしまったなんて)


 こいつらはゴンダスに騙されて洗脳されただけかもしれない、との考えが頭を過ったが、例えそうだとしてももう元には戻らないし、決して許されないことをしたのだ。 

 フルーダは自分を、そして破壊の剣を危機に追いやった元凶である冒険者養成学校の同期のクズ達に憎しみの目を向ける。

 もちろんクズ達がその憎しみに気づくはずもなく、フルーダが手加減する(自分達のために死んでくれる)と信じていち早くフルーダの元にやって来た元戦士のクズが力いっぱい剣を振った。

 フルーダはその剣をあっさりかわすと空振りして隙だらけの元戦士のクズに容赦ない一撃を放つ。

 直後、元戦士のクズの首が驚いた顔をしながら宙を舞った。

 インシャドウで近づいていた元盗賊のクズは元戦士のクズが死んでも気にしなかった。

 それどころかいい囮になったと喜んだのだった。

 元盗賊のクズがフルーダの死角から短剣を放つ。

 彼は勝利を確信するがフルーダはその短剣をあっさり剣で弾き返した。

 もし彼が接近戦を挑んでいたらそこで決闘は終了していたであろう。

 元盗賊のクズは今ので致命傷を与えられなかったことを考えてフルーダに接近戦を挑もうとしていたが致命傷を与えるどころか、あっさり弾かれたのを見て慌ててフルーダから距離をとる。

 そしてすぐさまフルーダを非難する。


「話が違うだろ!手を抜って言っただろうが!お前はやっぱりバカだな!それも大バカだ!!」


 フルーダは追撃して元盗賊のクズの首を刎ねてもよかったが、これが最期だからと会話に乗る。


「バカはお前だ。デッドオアアライブで手を抜いたら死ぬだろ」

「それでいいだろうが!」

「……」


 元盗賊のクズはクズロジックでフルーダを責める。


「お前一人の犠牲で俺ら二人が幸せになるんだぞ!こんな単純な計算もできないのかよお前は!?」

「……そうか。だが、もうお前一人だからその計算は成り立たないぞ」

「あ……」


 元盗賊のクズが見事なあほ面を晒した。


 

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