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770話 グースの条件

「もういい!」


 グースが強引に元冒険者のクズ達の愚痴を断ち切ると彼らはまだ言い足りなかったようで不満そうな顔をした。


「つまりこういうことか。お前達の方がフルーダより実力が上だが”Cランクまでしかいけなかった“のはパーティメンバーが悪かっただけだと?お前達自身に悪いところは何もないと?」


 元冒険者のクズ達は元気いっぱいに「「おう!!」」腕を振り上げて答えた。


「だからよ、俺らもお前らと組めばあっという間にAランクに上がってみせるぜ!」

「だな!」

「な?悪い話じゃねーだろ?」


 そう言った後、元戦士のクズがキメ顔をフォトトナに向ける。


「実は俺よ、最初会った時からお前のこといいと思ってたんだ」

「おい抜け駆けすんなよ!実は俺もなんだぜ!」


 そう言って元盗賊のクズが続き、照れたように「へへっ」と鼻の頭を掻く。


「……」


 彼らは自分達のことをかっこいいと思っているようであったがこの世界の一般的な美的感覚から言えば彼らの容姿は普通である。

 また、彼らのポーズはクズが好んでするため“クッズポーズ”との名が広まって皆そのポーズを控えるようになった。

 そのため、このポーズをとる者は自ら「クズです!」と言っているようなものだ。

 彼らはそのことを知らないし、知っていたとしてもクッズポーズは彼らの体にしっかりと染み込んでいるのでやめることは難しいだろう。


「お前らいい加減に……」

「まあ待て」


 前に出ようとしたフルーダをグースが抑えると彼らに冷めた目を向けて言った。

 

「俺達はお前達がいつ言うのかと待っていたが一向に言う気がないようだから俺から言ってやる」

「何のことだ?」


 とぼけるクズ達にグースが言った。


「パーティに入れろというがお前達は冒険者じゃないだろう。とっくにギルドを追放されてるだろうが」

「「な!?」」


 元冒険者のクズ達が心底驚いた表情をする。

 彼らは自分達がフルーダに冒険者をクビになったと語ったことを覚えていなかったようだ。



 元冒険者のクズ達が卑屈な笑みを浮かべながら厚かましい提案をする。

 

「へ、へへっ。よく知ってな。別に隠すつもりじゃなかったんだぜ!パーティに入る確約をもらってから言うつもりだったんだ」

「だな!」

「なるほど。また騙すつもりだったんだな」

「おいおい、そんなこと言うなよ!」

「大親友だろ!」

「誰が大親友だ」

「こんだけ話したんだ。もう大親友と言っても過言じゃねえぜ!」

「だな!」

「過言だクズ」

「「誰がクズだ!誰が!?」」

「あ?」


 グースが睨みつけると元冒険者のクズ達は相手が同期のフルーダではないことに気づき卑屈な笑みで誤魔化す。

 

「ま、まあ、そう言うわけでよ、ギルドでよ、俺らの誤解を解いて冒険者復帰の手助けをしてくれよ!」

「Aランクのお前達が言えばギルドだって誤解に気づくはずだ!」

「だな!」


 話していて気分がよくなった元冒険者のクズ達が調子に乗る。

 クズは調子に乗ると際限がないのだ。

 

「もちろん復帰した時のランクはCだぞ!」

「なんならお前らの力で試験なしでBランクに上げてもいいぞ!」

「だな!」


 楽しそうに「がはは」と笑う元冒険者のクズ達。

 その姿を見下した目で見ていたグースが口を開く。

 その内容は驚くべきものであった。


「お前達が俺の出す条件を飲むのならその願いを叶えてやろう。冒険者ギルドにも話をしてやる」

「「よっしゃー!!」」


 もう冒険者復帰が決まったかのように小躍りして喜ぶ元冒険者のクズ達をフルーダが怒鳴りつけようとした。


「おい!」

「まあ待て。ここは俺に任せておけって」


 グースがフルーダを抑えて元冒険者のクズ達に言った。

 

「喜ぶのは早いぞ。まだ俺の条件を話してないだろ」

「おう、そうだったな」

「なんでも言ってくれ。俺らは同じパーティになるんだからな!」


 グースは元冒険者のクズ達の戯れ事を無視して条件を口にする。


「俺と決闘しろ。デッド・オア・アライブでな」

「「なっ!?」」

「それで俺に勝てばお前達を破壊の剣に入れてやる。いや、その時には俺はいないか。すまないが俺の代わりに奴らの要求をできるだけ叶えてやってくれ」

「わかりました」


 フォトトナが即答した。

 グースがクズ達に負けるとは全く思っていないことがわかる。


「「ちょ、待てよ!」」

「なんだ。無理か。ならさっさと消えろ」

「だからちょ待てよ!」

「……」

「さ、流石によ、メンバー殺して入ったらその後うまくやっていけねえだろう?」


 どうやら彼らはグースに勝てると思っているようだった、

 なんて事は流石のクズ達も考えていないことはその引き攣った笑みを見れば明らかだ。

 自分達が死ぬのをわかっていてそう言いたくないからそのような言い訳をしていると誰にでもわかる。


「俺の条件は変わらない。嫌なら諦めてとっとと消えろ。そして二度と俺達の前に姿を現すな」

「ちょ待てよ!」

「俺らの実力はあの冷笑する狂気が認めてんだぞ!それで十分じゃねえか!」

「「だな!!」」


 一応補足すると最後の「だな!」は今回もその前の言葉を発したクズも叫んでいる。

 一人二役である。

 残念ながら彼の演技を褒める者はいなかった。


「俺達は口だけの奴など信用しない」

「ちょ待てよ!……そうだ!俺達は冒険者養成学校の成績はフルーダより上だったんだぞ!実績もあるぞ!」

「な!フルーダ!」

「……」


 片目をパチパチさせて助けを求めて来た同期のクズ達をフルーダは無視した。


「てめえ!」

「大親友が困ってんのを見捨てんのか!?」


 フルーダに文句を言い始める元冒険者のクズ達にグースが言った。


「何度も言わせるな。口ではなく実力で示せ。過去ではなく今の実力でな」


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