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769話 彼らがやってきた目的

 破壊の剣のメンバー全員が、フォトトナすらも殺意に近い視線を向けているのにゴーイングマイウェイの元冒険者のクズ達は気づかなかった。

 彼らが破壊の剣の前にやって来た目的を話し出す。


「実はよ、俺らリサヴィ派に命を狙われてるかもしれないんだ」

「かもじゃないだろ」


 グースの突っ込みは彼らには聞こえなかったようだ。


「そこでだ。リサヴィ派に狙われている者同士、ここは一緒に行動したほうがいいと考えたってわけだ」

「だな!」

「ふざけるな。お前達と一緒に行動したら俺達も危険だ」

「おいおい、俺らを見捨てるってか!?俺らはな!フルーダの暴走に巻き込まれた被害者なんだぞ!」

「お前らにはな!その責任をとる義務がある!」

「「だな!」」


 一応補足すると最後の「だな!」はその前の言葉を発したクズも叫んでいる。

 一人二役である。

 それに対するグースの言葉は当然賛辞ではなかった。


「馬鹿も休み休み言え!」

「「ざけ……」」

「黙れクズども!!」


 元冒険者のクズ達の怒鳴り声はグースの怒鳴り声に遮られる。

 そこで元冒険者のクズ達は相手にしている者達が格上のAランク冒険者達であることを思い出す。


「そ、そう言ってやるなって」


 卑屈な笑みを浮かべなら元戦士のクズが相変わらずの他人事のようなセリフをはく。

 それに元盗賊のクズが続く。


「そうだぜ。俺らだってただ単に一緒に行動しようと言ってるわけじゃねえ」

「見ての通り俺らのパーティはよ、二人になっちまった。というかリーダーが死んじまったからもうパーティがねえ。そこでだ」


 そう言った後で元戦士のクズがニヤリとして言った。


「俺らをお前らのパーティに入れてくれねえか?」

「「「「は?」」」」


 皆がバカを見る目で元冒険者のクズ達を見る。

 ジットがボソリと呟く。


「……ほんとに休み休みに言ったよこいつら」


 それを気にせず(気づかず)元冒険者のクズ達は話を続ける。


「ギルドで掲示板見たぞ。スッゲー頼りになる戦士を探してんだろう?ここにいるぜ!」


 元戦士のクズがそう言うと隣の元盗賊のクズも負けるものかと続く。


「俺は盗賊だが戦士としても一流だぜ!」

「「俺らが保証する!」」


 と言い放った後、すぐ訂正する。


「「いや!あの冷笑する狂気が保証する!!」」


 そう言ったクズ達の顔はリオに保証された?こともあり自信に満ち溢れていた。

 最初のショックからいち早く立ち直ったグースが冷めた目で尋ねる。


「冷笑……リオがお前達を保証しただと?何の冗談だ」

「おいおい、お前らも聞いてただろ」

「知らん」


 元戦士のクズがため息をついてから言った。


「冷笑する狂気は言ったぞ。俺らはフルーダと同等の可能性を持ってるって。なっ、フォトトナ!」


 彼らがフォトトナに向けてキメ顔をした。


「……」


 彼らがフォトトナを名指ししたことで彼女とリオの会話でそれらしい話が出たことを思い出す。

 リオが「勇者になる可能性ならこのクズ達にもある」というようなことを言ったのを拡大解釈したようだ。

 確かにリオはそう言ったが確率も同じとは言わなかった。

 それをこのクズ達はフルーダと同等かそれ以上と判断したようだった。

 いうまでもなく、破壊の剣の見解は全く異なる。

 このクズ達が勇者になる可能性は限りなくゼロだ。

 そもそもリオはそのセリフの前に彼らのことを「誰でも処理できる」と言ったはずだがその事については全く触れない。

 クズフィルターによって脳に届く前にカットされて聞こえていなかったのかもしれない。

 彼らのポジティブさに皆呆れてものが言えない。


「思い出したか!?」


 その言葉に破壊の剣のメンバーは我に返る。

 グースが言った。


「本当に本気で言ってるのか?一応言っておくが俺達はAランクだぞ。お前達の“最高ランク”といくつ違うと思っている?」


 グースは意味ありげに“最高ランク”と言ったのだが彼らは何も気づかなかったようでそのことについては何を言わずに答えた。


「わかってるぜ。今は俺らより上だ。今はな」


 そこで元冒険者のクズ達は一度フルーダに見下した目を向けてから続ける。


「実はな、俺らはな、冒険者養成学校ではフルーダより成績が上だったんだ!」


 そう言った元戦士のクズとその隣に立つ元盗賊のクズの顔はなんか誇らしげだった。

 本来、ランク絶対主義者である彼らクズが自分達よりランクが上のものに絡むことはない。

 今回、元冒険者のクズ達が自分達の最高ランクCより二つも上の破壊の剣に接触したのは同期のフルーダがいたからだ。

 彼より冒険者養成学校での成績が上だったという過去の実績、たったそれだけのことで大きな態度をとっていたのである!


「「「「……」」」」

「つまり基本スペックは俺らの方が上なんだよ。こいつが今、俺らよりランクが上なのはただ単に運が良かっただけだ!」

「お前らのような優れたメンバーに出会えたからなんだ!」


 そこで元冒険者のクズ達は同情を誘うような表情をする。


「リーダーが、いや、あのクズリーダーがどうしてもって言うからよ、情に負けて奴のパーティに入っちまったんだ!」

「俺もだ!あの時断っていれば俺らは今頃もっと上に行ってたんだ!」

「だな!」


 元冒険者のクズ達は自分達のランクが低かったのは全て死んだメンバーのせいだと力いっぱい訴え始める。

 とても見るに堪えない姿であった。


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