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763話 運命の強制力 その2

 今のリオの言葉の変化をサラだけでなく破壊の剣のメンバーも正確に理解した。

 リオはフルーダと決闘するだけで終わらせる気がない。

 破壊の剣のメンバー全員がダーゲットなのだと。

 リオの宣言を聞いた直後、彼らの体は目に見えない何かに縛られたかのように急激に重くなった。

 息苦しくもなった。



 フルーダを激しい後悔が襲っていた。

 冒険者養成学校の同期という、ただそれだけで元冒険者のクズ達の言うことを疑うことなく信じてしまったことを。


(相手はブラッディクラッケンをほぼタイマンで倒したという化け物だ。実際対峙してみてはっきりわかった。俺じゃ勝てない。俺が死ぬのは自業自得だ。だが、俺の暴走がメンバーにまで迷惑をかけることになってしまった!)


「どうしたクズリーダー」

「!!」


 フルーダはクズリーダー呼ばわりされてかっとなったがじっと耐える。

 そんな彼にリオは見下した目を向けながら続ける。


「お前は最初サラの話を信じなかったよな。何故今更信じる気になった?パーティメンバーが信じたからか?もしそうならお前には自分の意思はないのか?」

「く……」


 リオが立て続けにフルーダを挑発する。

 それに必死に耐えるフルーダ。

 リオの煽りは尚も続く。


「そういえばお前達は俺達がリサヴィだと思っているようだがな、俺達は自らリサヴィと名乗っていないぞ」

「な……」

「いや!お前達はリサヴィだろ!」


 たまらずグースが口を出す。

 リオはグースを無視して続ける。


「仮に俺達がリサヴィだったとしてもだ。お前の大親友のクズ達が本当のことを言っている可能性はゼロじゃない。その可能性をそんなあっさり捨てていいのか?」


 リオはゼロではないと言ったがどう見てもゼロだ。

 誰にでもわかることだった。


「リオ!もういいではありませんか!」


 リオがサラを見た。

 とても冷めた目だった。


「サラ、お前はさっきの謝罪で許したのか?納得したのか?」


 サラは思わず曖昧な返事をしてしまう。


「え、ええ、まあ……」


 リオはヴィヴィとアリスを見た。

 

「お前達はどうだ?」


 最初に答えたのはアリスだった。

 

「もちろんっ、許しませんよっ!リオさんが納得するまでっ」

「アリス!?」

「ぐふ、リーダーはお前だ。好きにするがいい」

「ヴィヴィ!?あなたまで!」


 リオがサラを見る。

 

「ということで納得したのはお前だけだ」

「リオ、私は……」

「納得した奴は黙ってろ」

「な……」


 リオはもう話すことはないとでも言うように顔をサラからフルーダに向ける。


「なあ、クズリーダー、いや、Aランククズリーダー。何故クズ友を最後まで信じてやらない?あんな見事なあほ面晒す奴らなどそうはいないぞ」


 そのあほ面晒してクッズポーズをとり続ける元冒険者のクズ達は今だピクリとも動かない。


「お、お前……!」

「最後まで自分の意思を通せよ。なあAランククズリーダー様。クズ友の言葉を最後まで信じて俺と戦え。そして、死ね」


 リオの最後の言葉。

 それはまるで死神に死を宣告されたかのようだった。

 フルーダだけでなく、メンバー全員の心に死の恐怖を刻み込む。

 この恐怖はフルモロ大迷宮で魔族と対峙した時の比ではなかった。

 返事をしないフルーダを見てリオはため息をつく。


「お前、ほんとにAランク冒険者か?」


 そこでリオがくすり、と笑った。


「そういえば、お前のパーティはなんと言ったか。ああ、“クズの剣”だったな。そのまんまじゃないか」

「い、言わせておけば!!」


 リオの度重なる挑発に加え、パーティ名までバカにされてついにフルーダの忍耐の限界を超えた。


「いいだ……がっ!?」


 フルーダの言葉を中断させたのはフォトトナの拳だった。


「フォ、フォトトナ!?」

「ここは私に任せてください。皆はフルーダがこれ以上バカなことをしないよう押さえていてください」

「お前何をする気だ!?」


 フォトトナはフルーダの問いに答えず、リオの前に出ると土下座した。


「フォトトナ!?」


 フルーダが悲痛な声でその名を叫ぶ。


「……フォトトナ?」


 リオは首を傾げながら土下座するフォトトナに問う。


「何やってんだお前」

「彼を止められなかった責任は私にあります」

「おいっそれなら俺達も……」

「あなた達はその愚か者を押さえていなさい!」

「わ、わかった」

「は、放せ!やめろよフォトトナー!!」


 暴れるフルーダをグースとジットが押さえる。

 リオがゆっくりとフォトトナの前に歩み寄る。

 そして片足を上げるとその頭を踏みつけた。

 頭を地面にぶつける鈍い音がした。


「くっ……」

「謝るならちゃんと地面に頭を擦りつけろよ」

「てめえっ!」


 リオはフルーダの怒りの声を聞き流し、薄笑いをしながら首を傾げる。


「おかしいな。俺が悪者なのか?クズ呼ばわりされ、盗人呼ばわりまでされた被害者のはずなんだが」

「……いえ。何も間違っていません。あなたは何も悪くありません。悪いのは私達です」


 リオに頭を押さえつけられながらフォトトナが苦しそうに答えた。


「リオォ!!貴様ぁ!!」


 グースが押さえつけているフルーダを怒鳴りつける。


「いい加減にしろ!!」

「なんで止める!?俺が奴と決闘すれば済むことだろう!?」

「済まないからこうしてんだ馬鹿野郎!」

「な、なに?」

「まだわからないのか!?決闘すればお前が勝とうが負けようが俺達の名声は地に落ちる!」

「お、俺達?」

「そうだ。お前だけじゃない。俺達だ。決闘すれば結果がどうであれクズに騙された愚かなパーティ、という決して拭い去れない汚名が破壊の剣に残るんだ!」

「そ、そんな……」


 ジットが追撃する。


「それだけじゃない。リサヴィ派にも狙われるよ」

「!!」


 リサヴィに心酔しリサヴィ派を名乗ってクズ抹殺を行う者達がいる。

 フルーダは以前にグースが笑いながらリサヴィ派の話をしていたのを思い出す。


「あいつらはクズを殺すためなら死をも恐れぬ特攻をするらしいぜ」


 それが他人事ではなくなる。

 フルーダは決闘して負けたら死んで終わりだが、残ったメンバーは違う。

 彼らもリオの標的にされているが直接喧嘩を売ったわけではないので決闘を回避できる可能性は高い。

 だが、リオは破壊の剣のことを“クズの剣”と呼んだ。

 パーティメンバーもクズ認定したのだ。

 そのことをこの騒ぎで集まってきた者達が聞いている。

 その中にリサヴィ派がいないとは限らない。

 いなくてもその噂はたちまち広がるだろう。

 リサヴィ派と名乗ってはいるが実際に彼らが心酔しているのはリオだ。

 そのリオにクズ認定された者達が彼らのターゲットにされないわけがない。

 それも抹殺の最優先候補になることだろう。

 Aランク冒険者である彼らが簡単に殺されることはないだろうが昼夜襲われ続ければいずれ限界がくる。

 そのことに気づき愕然とするフルーダにグースが言った。


「ここはフォトトナに任せるしかない」

 


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