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758話 もう一つのウィンド その1

 サラはどこかの街を歩いていた。

 何か違和感を覚えるがそれが何かわからない。

 パーティメンバーを見回す。

 パーティメンバーはリオ、ナック、ローズ、そしてカリスだった。


(おかしくない……おかしくないはずなのに何なのこの違和感は?)


 サラが思考するのを邪魔する者がいた。

 隣を歩くカリスだ。

 カリスが先頭を歩くリオに大声で文句を言っていた。

 リオが無視し続けた結果、カリスの我慢の限界を超えた。

 彼は先頭に出ると行く手を遮った。

 仕方なくリオは歩みを止めた。


「おいリオ!お前いい加減にしろよ!俺を無視しやがって!!」

「……」

「ベルフィがお前をリーダーに指名したが俺は認めてねえ!本来、副リーダーである俺がリーダーになるべきなんだ!だよなっ?」


 そう言ってカリスがナック、ローズに目を向け最後にサラにキメ顔をする。

 カリスのキメ顔を無視しながらサラはベルフィが冒険者を引退したことを思い出す。

 カリスの呼びかけに答えたのはローズだった。


「寝言は寝て言いなっ!」

「な……」


 唖然とするカリスにナックが追い打ちをかける。


「そもそもお前はもう副リーダーどころかウィンドのメンバーですらないだろうが。いつまでウィンドにいる気で俺達について来る気だ」

「おいおいナック。お前までリオの野郎に取り込まれたのかよ」


 その言葉にサラが黒い悪魔を見るかの表情をカリスに向けて言った。


「本当に迷惑ですからどこかに消えてください」


 サラの言葉にカリスは情けない顔をして叫ぶ。


「さらぁ!」

「気持ち悪い!!」


 カリスのショタ真似にサラが本気で叫ぶがカリスには効かぬ!通じぬ!であった。


「大体、俺がパーティを追い出されたのはリオの野郎の陰謀だろ!こいつは俺とお前の仲に嫉妬して……」

「そんなものはありません」

「おいおいサラ。無理しなくていいんだぞ。俺がお前の勇……」

「寝言は寝て言え!」

「さらぁ!」

「ああっうるさい!」


 サラは縋りつこうとするカリスを殴り飛ばした。

 サラに殴られて何故か嬉しそうな顔をするカリスに嫌悪感むき出しの表情でローズが言った。


「カリス、ほんとにいい加減にしなよっ!」

「ローズぅ!」

「気持ち悪いって言ってんだろうっ!」


 ナックもローズに負けず劣らずの嫌悪感むき出しの表情をカリスに向ける。


「おいカリス。お前まさか忘れてねえだろうな?お前の愚行のせいでベルフィが冒険者を引退することになったってことをよ!!」

「そうだよっ!金色のガルザヘッサを討伐出来たからベルフィはあんたの愚行を許したんだよっ。でもねっ!あたいらはあんたの愚行を許してないんだよっ!絶対に許さないんだよっ!!」

「だ、だからそれは違うって言ってんだろ!なっサラ!」


 そう言ってカリスがサラに「擁護を頼むぜ!」と期待に満ちた笑顔を向ける。

 もちろん、サラがカリスを擁護することはなかった。

 不機嫌な顔で容赦なくカリスを断罪する。


「いえ。あなたの愚行が招いた結果です。すべてあなたの責任ですカリス。あなただけが悪いのです」


 カリスは期待した答えをもらえず同情を誘う顔をサラに向ける。


「さらあ!!」

「ああっ!気持ち悪いって言ってるでしょうが!!」


 サラはカリスに蹴りを放つ。

 カリスは嬉しそうな顔をしながらぶっ飛んでいった。


「……あいつ、間違いなくマゾだな」


 ナックの後にローズが続く。


「それも救いようのない、ね」

 

 その様子を冷めた目をして見ていたリオが言った。


「ゴミはほっといて行くぞ」

「ああそうだな」

「わかったよ」

「ええ。さっさと行きましょう」

「ちょ、ちょ待てよ!!」


 諦めることなくついて来るカリスをサラは心底バカにしながら再び襲う違和感に悩んでいた。


(……ローズって私とリオを嫌ってなかったかしら?それに金色のガルザヘッサとの戦いにはもう一人誰かいたような……)


 今のやり取りでサラはベルフィが冒険者を引退した経緯を思い出した。


(カリスのバカが私のそばに張り付いてろくに戦わずベルフィが片腕を失う大怪我を負った)


 そこでリオが役立たずのカリスの代わりに参戦して金色のガルザヘッサを倒したのだ。


(……あれ?リオって“この時から“そんなに強かったかしら……この時?)


 サラは自分が何を言っているのかわからない。

 リオのこともそうだが自分の力にも疑問があった。

 

(私は再生魔法を授かっていたはず。何故ベルフィの腕を治せなかったのかしら……って、あれ?ない?再生魔法がない!?……違う!再生魔法だけじゃない!?全然足りない!私の授かった魔法がこんなに少ないハズはない!ハズはないのに何が足りないのかわからない……)


 サラは混乱する。

 授かった魔法が少ないと思う一方でこれで合っているという感覚もあるのだ。


「さらぁ」


 カリスの気持ち悪いショタ声がサラを思考から抜け出させる。


「悩みがあるならお前の勇者である俺に遠慮なく相談していいんだぞ!」


 サラは自分の蹴りを喰らってもピンピンしているニヤケ顔のカリスに不快感を覚えながらも思う。


(私の蹴りってこんなに弱かったかしら?)


 サラはカリスを全力で蹴った。

 本来、自分が全力で蹴ったらカリスは即死していたはず。

 何故かそんな考えが頭を過ぎった。


(……もしかして、“この私“はナナル様の特訓を受けなかった?)


 一瞬、浮かんだその考えにサラは再び混乱する。


(何故ナナル様のことが頭に浮かんだのかしら?私が六英雄の一人にそんなことしてもらえるわけないのに……でも、受けたような感覚がある……)


 サラは頭のおかしいカリスに関わり過ぎて自分の頭もおかしくなったのではと思った。


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