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755話 クズ達の分前

 ところで、彼らクズ冒険者達は「護衛依頼をそのギルド所属ではないから受けられなかった」と言ってこの商人に直接護衛の交渉をしていたがそれは嘘だった。

 彼らはブラックリストに載っていたのだ。

 どこのギルドでも護衛依頼を受けられない状況になっていた。

 しかも、今度クズ行為をしたら退会させると警告されていたのである。

 今回のことをこの商人は間違いなく冒険者ギルドに告げ口(報告)するだろう。

 そうなれば間違いなく退会処分となる。

 彼らはそれだけはなんとしても阻止しなければならない。

 それにはこの商人に消えてもらうのが一番手っ取り早いがそれは困難であった。

 ガルザヘッサを瞬殺したサラ達がいるからだ。

 サラ達との実力差は圧倒的であり、戦いになったらクズ冒険者達に勝ち目はない。

 ならば何とかして商人を説得して失態(クズ行為)を無かった事にするしかない。

 クズリーダーは高速で“ク頭脳”をフル回転させる。

 そして一つの作戦を叩き出した。

 クズリーダーの顔が怒り顔から一転笑顔になる。


「まあ、落ち着けって」


 彼の突然の変化に商人が気味悪がるが構わず続ける。


「俺らは今回の戦いでお互い大切なものを失い冷静さを失っていた。俺達は大切な仲間を失い、お前は荷物を無くした。もちろん損失的には俺達の方が大きい。人の命は何ものにも代えられねえからな!」


 人の命は何ものにも代えられない。

 その言葉を否定する気はないが、先程、その仲間の死をあっさり流した者と同一人物とは思えない言葉であった。

 まさに“おまいう”であった。

 しかし、彼は全くそう思っていないようであった。


「だがよ、俺達は涙を飲んで水に流してやる。だからよ、お前も水に流せ」


 クズリーダーにクズ冒険者達も続く。


「だからお前もギルドに余計なこと言うんじゃねーぞ!」

「よしっ、決まったな!」


 もちろん、決まらない。

 

「ふざけんな!勝手なことばっか言うなクズどもが!!」


 商人の怒りにクズ冒険者達も負けずに怒鳴り返す。


「「「ざけんなー!!」」」

「いつまでもぐだぐだ言うんじゃねー!!」

「多数決で決まったことを蒸し返すんじゃねえ!!」

「貧乏商人は黙って言うこと聞いてればいいんだ!!」

「「だな!!」」


 クズ冒険者達はそれで商人が冒険者ギルドに告げ口(報告)しないと思ったらしい。

 クズリーダーがサラ達に顔を向ける。


「よしっ!次はお前らだ!素材の分配について話し合うぞ!!」

「「おう!!」」

「「「……」」」


 一応補足すると「おう!!」と元気よく返事したのはクズ冒険者達のみだ。



 さて、彼らのいう素材の配分だが、彼らは襲撃して来た魔物を一体も倒していない。

 彼らと話し合う余地などひとかけらもないはずだが彼らはそう思っていないようだった。


「おい!棺桶持ち!」


 クズリーダーがヴィヴィを睨んだ。

 彼にとって魔装士とは戦闘に全く役に立たない偽魔装士のことだった。

 クズには自分より弱い(と思った)相手にはデカい態度で接しなければならないという厳しい規則があるのだ!

 ヴィヴィは今回戦闘には参加していなかった。

 その場に着いた時には戦いは終了していたのだ。

 そのため、クズリーダーの思い込みが修正されることはなかったのである。


「俺らが来る前に“俺らの獲物“からプリミティブを抜き取ってただろう!」

「……」


 ヴィヴィがプリミティブを抜き取っていたことは事実だ。

 ガルザヘッサの全ての素材を回収するのは時間がかかるし面倒だったので素材の中で一番高価なプリミティブだけ回収していたのだった。

 クズ盗賊がクズリーダーに続く。

 当然彼も高圧的な態度だ。


「誤魔化そうたって無駄だぞ!こっちはちゃんとこの目で見てたんだからな!」


 そう言って自分の目を指差すクズ盗賊の顔はとっても偉そうだった。

 クズリーダーが手をヴィヴィに差し出す。


「ほれ、出せ。コソ泥が!」

「ぐふ、コソ泥はお前達だ。何もやっていないだろう」

「「「ざけんな!」」」

「ぐふ、すまん。何もしてないわけではなかったな。護衛対象を囮にして逃げたのだったな」

「「「ざけんな!」」」


 彼らはヴィヴィの正論を無視して素材が自分達のものである主張をする。


「これらの魔物はな!俺らが集めてやったんだぞ!!」

「「だな!!」」


 その言葉にクズ冒険者達以外が呆れた。


「ものはいいようですね」

「ですねっ」


 皆が呆れた顔をしているにも拘らず彼らだけはそれが納得顔に見えた。

 彼らクズの能力のひとつ、“現実を妄想で上書きする”能力が発動したようだ。


「わかったらさっさと出せ!」

「急げよ!」


 ヴィヴィは相手にしてられないとクズ冒険者達を無視する。

 ガルザヘッサの死体を街道上に放置すると他の者に迷惑がかかると思い、リムーバルバインダーでぶん殴って森の中に飛ばし始める。

 それを見てクズ冒険者達が激怒する。


「てめえ無視すんな!それに今の獲物はまだ素材を全て取り終わってねえだろうが!」

「素人かてめえ!」


 クズ冒険者の一人がこれ以上、素材を無駄にしてなるものかと自ら素材を回収するためガルザヘッサの死体に不用意に近づく。

 ヴィヴィはそのガルザヘッサをそのクズ冒険者を巻き込むようにしてぶっ飛ばす。


「ぐへっ!?」


 そのクズ冒険者がガルザヘッサの死体を抱くような形で共に森の中へ消えた。


「て、てめえ!」


 クズリーダーが武器を構えるより早くヴィヴィがクズリーダーをリムーバルバインダーでぶっ飛ばす。


「あべっ!?」


 あほ面晒して気絶したクズリーダーはくるくるくる、と回転しながら先のクズ冒険者と異なり一人寂しく森の中に消えた。

 クズパーティ最後の一人、クズ盗賊がヴィヴィの圧倒的暴力に屈せず勇気を振り絞って立ち向かう。

 彼は怯えた声でヴィヴィを怒鳴りつける。


「て、てめえ!よ、よくもリーダー達を!」


 そう言った直後、リムーバルバインダーが彼の鼻先を掠めた。


「ひっ……」


 彼は驚いた拍子に尻餅をつく。


「いでっ!!」


 しこたま尻を打ち悲鳴を上げる。

 しかし、どうしたことでしょう!?

 誰からも彼を心配する声は上がりませんでした!



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