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754話 クズ達の言い訳

  サラ達が商人に事情を聞いている時だった。


「わりいわりい、手間取っちまってよ」


 そう言って走って駆けつけて来たのは逃げたはずのクズ冒険者達であった。

 彼らの表情は護衛対象を囮にして逃げたとはとても思えないほど堂々としていた。

 商人は怒りで言葉がすぐに出てこず口をぱくぱくさせる。

 彼の代わりにサラが言った。


「護衛対象を置いて逃げて行った癖によく戻って来れましたね。それもそんな堂々とした態度で」


 クズリーダーがサラの言葉を心外だという顔をしながら否定する。


「おいおい、そんなひでえことするかよ。戦いに夢中でよ、うっかり逃げるガルザヘッサを追いかけて持ち場を離れちまっただけだ。悪かったな。危険な思いさせてよ!」


 クズリーダーが笑いながら商人に謝罪する。

 仮に今の話が本当だとしても護衛として大失態である。

 失格である。

 とてもヘラヘラ笑いながら謝って済まされるようなものではない。

 だが、彼らはそうは思わなかったようだ。


「だがよ、護衛を一人残してたんだぜ。やられて奴らのエサになっちまったがな」

「奴一人では荷が重すぎたようだな」

「だが命を張ってお前を守ったんだ。それで許してやってくれよ!」

「よしっ決まったな!」


 クズ冒険者達は仲間を一人失ったというのに全く悲しそうに見えなかった。

 商人はその言葉を聞いてクズ冒険者達を怒鳴りつける。


「何が護衛に置いてっただ!!あのクズは護衛するどころか依頼人である私から魔道具を奪おうとして殺されただけだ!」

「ざけんな!俺の仲間を!死を賭した勇気ある行動を貶めんじゃねえ!」

「ふざけてるのはお前達だ!何が勇気ある行動だ!?お前達もそうだ!何平然とした顔で戻って来てるんだ!?私を囮にして!更にヒキヨセ草まで投げつけて逃げやがったくせに!」

「「「ざけんな!」」」


 クズ冒険者達は商人を怒鳴りつけた後、サラ達に言った。


「おい、お前ら!こいつの言うことなんか信じんじゃねーぞ!」


 クズリーダーにメンバーが続く。


「信じるなら俺らのほうだ!」

「なんてったって俺らは誇り高き冒険者なんだからな!」

「どっちを信じるかは言うまでもないだろう!」

「だな!」

「ふざけるな!お前らクズ冒険者のせいで護衛依頼を受けれないと怒ってたがお前らがそのクズ冒険者じゃないか!!受けられなくて当然だ!!」

「「「ざけんなーー!!」」」


 彼らは商人を無視し、サラ達に言った。


「俺らを信じろ!俺らの事は俺らが保証する!!」


 クズリーダーがそう言うとクズ冒険者達は揃って腕を組んで仁王立ちしてキメ顔をする。

 言うまでもなく効果は全くなかった。

 サラは冷めた目をクズ冒険者達に向けて言った。


「もちろん、そちらの商人を信じます」

「だろ!?」

「聞いたか貧乏商人!……ん?」


 何故か自分達を信じることを疑っていなかったクズ冒険者達は途中まで話したところで遅まきながらサラの言った事が理解できた。

 クズ冒険者達は顔を真っ赤にして怒り出す。


「「「ざけんな!」」」


 ヴィヴィが冷めた目で言った。

 と言っても顔は仮面で見えないが。


「ぐふ、私はお前達が護衛対象のこの男を盾にして逃げていくのを見たぞ」


 クズ盗賊がヴィヴィの言葉に即反論する。


「嘘つくんじゃねーぞ棺桶持ちが!俺が周囲に人がいないの確認してんだよ!」


 クズ盗賊は自白したとも気づかず偉そうな態度でそう言い放った。

 他のメンバーもクズ盗賊に倣って偉そうな態度をとっていたが、サラ達の表情を見てクズリーダーがクズ盗賊の失言に気づいた。


「馬鹿野郎!お前は何をほざいてんだ!それじゃ俺らが本当に逃げたみてえじゃねえか!」


 クズリーダーに怒鳴られクズ盗賊は失言したことに気づく。


「す、すまねえリーダー!」

「今のはよ、こいつが興奮してうっかりないことをしゃべっちまっただけだ。本当に俺らは逃げてねーぜ。この俺が保証する!」


 そう言ったクズリーダーが再びクッズポーズをするとそれにメンバーも倣う。

 ヴィヴィはその行動をスルーして言った。


「ぐふ、残念だったな。魔装具には望遠機能があってな、お前達のクズ行為をしっかりと見ていたのだ」

「ざけんな!荷物持ちにそんな機能ねーわ!」


 クズリーダーがそう叫んだあと「がはは!」と笑い出す。

 その後にメンバーも「がはは!」と続く。


「ぐふ、お前達が言っているのは廉価版魔装具のことだな。“本物の”魔装具には標準装備されているのだ」

「「「な……」」」


 クズ冒険者達は言い逃れ出来ないとわかりちょっとだけ罪を認める。


「確かに最後だけちょっとお茶目なことをしたかもしれねえ」


 その発言は商人の神経を逆撫でするだけだった。


「何がお茶目だ!そんな言葉で済まされるかクズどもが!!」

「黙れ!ここまでは助けてやっただろう!それは紛れもない事実だ!それで十分だろうが!!」

「「だな!!」」

「十分なわけあるか馬鹿野郎!!」


 クズ冒険者達は当たり前のことを言われてキレた。


「「「ざけんな!!」」」


 クズ冒険者達は開き直る。


「仮にだ、仮に俺らが犠牲になったところでな!」

「もちろんなったりしないがな!」

「お前一人生き残って何ができる!?あん!?全滅だろうが全滅!誰も助からねえんだよ!」


 確かにその通りかもしれない。

 しかし、


「だからと言って護衛対象を囮にして逃げていいわけがありません」


 サラの言葉に商人が深く同意して引き継ぐ。


「その通りです!大体、なんで護衛のお前達まで私の結界に避難したんだ!?包囲される前に倒していればよかっただろうが!」


 商人の正論にクズ冒険者達はすぐさま反論する。


「ざけんな!あんな安い金で命を張れるか!」

「おう!いくら積んだって命張るか!」

「積んだ金はもらうがな!」


 クズ冒険者達はもう本音ダダ漏れであった。

 商人は彼らの異常思考について行けない。


「こいつら緊張を解そうとギャグを言ってるのか?」


 と思わなくもなかったが、その表情は冗談を言っているものではないし、冗談を言っていい場面でもない。

 もちろん、リサヴィは彼らが本気で言っているとわかっていた。

 数々のクズと出会い積みたくもない経験を積みまくったお陰である!

 彼らは自分達の言葉によほど自信があるらしく「どうだ!」と言わんばかりのドヤ顔であった。

 商人が悔しい顔をして言った。


「私はなんて見る目がなかったんだ!こんなクズどもを信頼してしまったなんて!!」

「「「誰がクズだ!誰が!?」」」


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