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740話 待ち伏せクズ その1

 薬草や魔物から得られた素材などは冒険者ギルド以外でも買い取ってもらえる。

 本来、冒険者ならば特別な理由がない限り冒険者ギルド一択であろう。

 理由は単純明快だ。

 その素材を集める依頼があれば即依頼達成となり報酬(素材代+依頼料)と依頼達成ポイントが手に入るので絶対お得なのだ。

 その依頼がなくても買取価格は他の店と大差は無いので、そのまま冒険者ギルドに買い取ってもらった方が売る店を探す手間が省ける。

 もちろん、一軒一軒店を回って一番高く買い取ってくれるところを探す者達もいるがそれは少数である。



 リオ達は荷物が多くなり過ぎたのと手持ちが寂しくなってきたので入手した素材を売り払う店を探していた。

 とはいえ、リオ達は貧乏なわけではない。

 冒険者ギルドの口座に大金を預けている。

 確認はしていないがロックに売り払ったブラッディクラッケン等の素材の代金もロックが各口座に振り込んでいるはずである。

 たんにリオが冒険者ギルドを嫌って行かないだけだ。

 素材を冒険者ギルド以外に売ることに反対する者はいない。

 皆、冒険者ランクを上げることに興味がないからだ。

 サラが反対しない理由は自分達の行動を他の者達クズに知られたくないという思いもあった。

 とはいえ、これはあまりうまくいっていない。

 何せリサヴィは皆美形揃いでよく目立つ。

 リサヴィだと知らなくてもクズその他が寄ってくるのである。

 サラとしてはフードで顔を隠したいところだがリオとアリスにその気はないようだった。

 サラだけ隠しても意味はなく、自意識過剰と言われるだけだ。

 そんなわけで今も行き交う者達の視線を浴びていたが当のリオは全く気にしていないようであった。


「ぐふ、あそこはどうだ?」


 ヴィヴィが前方に見える道具屋らしい店を指差す。


「そうだな」


 リオ達はその店に向かった。



 リオ達が店のそばにやってきた時、近くの路地に隠れていた一組のパーティが姿を現すとばっと店の前を塞いだ。

 ヴィヴィがボソリと呟く。


「ぐふ、また待ち伏せか。好きだなここのクズ達は」


 ヴィヴィは彼らを即クズ判定したがサラは保留とした。

 それはともかく、サラが彼らに文句を言う。


「邪魔です」

「そう言ってやるなって」


 彼らのリーダーが当事者なのに他人事のように言った。


「あなたも含めて言っています」


 サラが彼も当事者であることを指摘するがその声は届かなかったようだ。


「実はお前らにいい話を持って来てやったんだ」

「必要ありません」

「だからそう言ってやるなって」


 またも他人事のように言うとリーダーを含めてメンバー全員が腕を組んで仁王立ちした。

 そしてリーダーが言った。


「俺らは冒険者だ!それも誇り高き冒険者だ!」


 リーダーを含め皆、誇らしげな顔をしていた。

 クッズポーズをとったことで彼らがクズ冒険者であると確定した。


「そうですか。邪魔ですから退いてください」


 サラの言葉を聞いてクズリーダーがわざとらしくため息をつく。


「おいおい、俺の話聞いてたか?」

「それはこっちのセリフです」


 サラがクズリーダーを睨みつけると彼は何を勘違いしたのか少し顔を赤めてキメ顔で返してきた。


「……だめだこりゃ」

「ですねっ」


 サラの呟きにアリスが同意した。



 クズリーダーはサラ達が迷惑顔をしているにも拘らず話を続ける。


「これはお前らにも悪い話じゃないんだぞ」

「聞かないと損だぞ!」

「だな!」


 サラはチラリとリオの様子を窺う。

 特に怒ってはいないようだが油断は出来ない。

 いつ爆発するかわからないのだ。

 この街とその周辺で何度も騒ぎを起こしているのでこれ以上の騒ぎは勘弁してほしかった。

 サラはリオに「ここは私に任せて」と目で合図する。

 それが通じたのかリオはすっと空を見上げた。

 サラが目の前でキメ顔をしているクズリーダーに言った。


「では話を聞いたら退いてください」


 クズリーダーはキメ顔を維持しながら話し出す。


「お前らこの店に素材を売りに来たんだろ?」

「それが何か?」

「てことはだ。お前らは冒険者じゃないってことだ」

「「「「……」」」」

「何故わかったかってか?それはな、俺はそこらの脳筋冒険者とは違うってことだ」


 クズリーダーが自分のこめかみを軽く突く。


「俺は腕だけじゃなくここも優れてんだ」

「「「「……」」」」

「おお、謎解きがまだだったな。そうせかすなって」


 クズリーダーが気持ち良さそうな顔して叫ぶ。


「冒険者ならな、冒険者ギルドに売っぱらうはずだ!!」


 焦らした割に別段驚くべきものではなかった。

 誰でも思いつくものであった。

 しかし、彼らのメンバーはそう思わなかったようだ。


「流石だぜリーダー!」

「やっぱ俺らのリーダーは違うぜ!」


 クズパーティのメンバーがクズリーダーをヨイショする。

 クズリーダーは満更もでない顔をしながら続ける。


「てことでお前らは傭兵だ」


 サラは自慢げな顔をするクズリーダーの間違いを指摘せず先を促す。


「それで?」

「そこでだ。お前らが売ろうとしてる素材を俺らが代わりに冒険者ギルドで売ってやる」

「必要ありません」


 サラは即拒否をしたがクズリーダーの耳には届かなかったようだ。


「もちろん、タダじゃねえ。俺らは誇り高き冒険者だが手間賃はしっかり貰わねえとな」

「「だな!」」


 サラは素っ気なく言った。


「必要ありません」


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