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737話 欲望に忠実なクズ達

 リサヴィにはクズコレクター能力者が二人もいる?

 当然、このまま何事もなく終わるわけはなかった。

 草むらに隠れていた一組のクズパーティが近づいてきたサラとアリスの容姿に見惚れた。

 サラ達が前を通り過ぎようとしたとき、欲望を抑えられなくなった。

 本来の目的を忘れて草むらから飛び出すとリオ達の前に姿を現した。

 クズリーダーが一歩前に出て言った。


「びっくりさせて悪かったな!突然現れたんで驚いただろう!」


 そう言ったクズリーダーとクズメンバーはなんか誇らしげな顔をしていた。

 隠れているのはバレバレだったのだが彼らは完璧に気配を消せていたと思っていたようだ。

 サラ達が事実を言わなかったのでクズリーダーは勘違いしたまま自慢げに話を続ける。


「だが、安心しろ!俺らは冒険者だ!それも誇り高き冒険者だ!」


 クズリーダーの言葉にクズメンバーが「おう!」と元気いっぱい叫びながら片腕を天に向かって突き上げる。

 彼らは今まで草むらに隠れていたので体中に草や葉が付いて汚れていた。

 “誇り高き”ではなく“埃まみれ”の間違いではないだろうか、とサラ達は思った。

 それはともかく、


「はあそうですか」


 リオが沈黙しているので代わりにサラが素っ気なく答えた。

 そのどうでもいいような態度にクズリーダーは腹が立ったがこれからパーティメンバーになる(クズ達の妄想)なので我慢して本題を口にする。


「おい、女ども。お前らも冒険者だろ。俺らのパーティに入れてやる!そこのカッコつけてる奴なんかより俺らと一緒にいた方が絶対いいぞ!俺が保証する!!」


 カッコつけていると言われたリオであるが普通に歩いていただけであり、今も自然体で立っているだけだ。

 一方、そう言ったクズリーダーとそのメンバーは腕を組んで仁王立ちしキメ顔をサラとアリスに向けていた。

 どう見てもカッコつけているのは彼らのほうであった。

 ただ、それが本当にカッコいいかは判断に迷うところではあった。


「邪魔です」


 サラが再び素っ気なく言うと元々気が短いクズ冒険者達は怒り出した。

 クズリーダーが必殺の呪文を放つ。


「ざけんな!俺らはCラーーーーーーーンク冒険……」


 クズリーダーが元気よく叫んでいる途中でリオが割り込んだ。

 

「うるさい黙れクズ」

「者だぞっ!……って、誰がクズだ!誰が!!」

「お前らだお前ら」


 リオが即答し、クズリーダーは激怒する。


「ざけんな!!」


 クズリーダーが怒りに任せて殴りかかってきた。

 しかし、リオはその拳が届く前に蹴りを放つ。


「ぐへっ!?」


 クズリーダーがあほ面を晒しながらぶっ飛んで先程まで潜んでいた街道脇の草むらに消えた。


「「リーダー!?」」


 そのクズパーティのメンバーが怒りを露わに剣を抜いた。

 しかし、抜いただけで終わった。

 残存クズは一振りする間もなくヴィヴィのリムーバルバインダーとリオが再び放った蹴りでぶっ飛び、クズリーダーと同じく先程まで潜んでいた草むらに消えた。

 サラがため息をついてから言った。


「あなた達は短気過ぎます」

「そうか」


 リオはどうでもいいように言った。


「ぐふ、お前に言われるのは心外だ」

「なんですって!?」



 リオ達は歩みを再開した。

 草むらに隠れている他のクズパーティがリオ達の前に姿を現すことはなかった。

 門番達はリオ達がクズ冒険者達をぶっ飛ばしたのを見ていたが特に何も言わなかった。

 彼らもクズ冒険者達に困っていたのか、街の外の出来事だったからか。

 おそらく両方であろう。



 そこは南部都市国家連合に属するある都市国家の街であった。

 当初予定していたムルトそばの森よりカルハンに近く、結果を見ればリオの判断は正しかったと言えよう。

 リオ達はその容姿が目を引くのでリサヴィだと気づかれなくても目立つ。

 そんなわけでまたもクズに絡まれることになる。

 リオ達が宿の一階にある酒場で食事をしていると見た目からクズ冒険者、あるいはただのクズだとわかる集団がやって来た。

 

「おい!ここに体売るなかなかいい女の冒険者がいるって聞いて来てやったぞ!出てこい!」


 リオ達のことを体を売る冒険者だと思いこんだ者達の話を彼らは信じていたのだ。

 クズの言葉に誰も返事しなかった。

 彼らは店の中を見回し、サラとアリスを見つけた。(男のリオは対象外だった)

 いやらしい笑みを浮かべながらリサヴィのテーブルにやってきた。


「お前らのことだろ!いるならちゃんと返事しろ!」

「違います」

「ですねっ」


 サラとアリスは否定したが、クズリーダーの耳には、いや、脳には到達しなかったようで勝手に話を進める。


「安心しろ。俺を満足させたら金払ってやる」

「俺もだ!」

「だな!」


 つまり、ヤっておいて満足しなかったら金を払わないと言っているのだ。

 いや、違う。

 絶対満足したとは言わないだろうからタダでヤる、と宣言しているのだ。

 何が安心なのかは彼、いや、彼らのみ知るところだ。

 ヴィヴィがため息をついて言った。


「ぐふ、街の外にいた奴らといい、この街にはクズが多いな」

「「「誰がクズだ!誰が!?」」」


 クズリーダーの知る魔装士は偽魔装士であった。

 つまり、雑魚であった。

 その雑魚に馬鹿にされ彼は頭にきた。


「何荷物持ちが偉そうにしてんだ!!あん!?」


 このクズリーダーはめっぽう気が短かった。

 ヴィヴィを殴るために向かってきた。

 だがそれより早く壁に立てかけていたリムーバルバインダーが動いた。

 ヴィヴィとクズリーダーの間にリムーバルバインダーが強引に割り込んだ。

 結果、クズリーダーは全力でリムーバルバインダーを殴りつけることになった。

 店内に何かが派手に砕ける音がしたかと思った次の瞬間、クズリーダーから悲鳴が上がった。

 リムーバルバインダーを思いっきりぶん殴って拳が砕けたのだ。

 砕けた手をもう片方の手で押さえながらヴィヴィを睨みつける。

 その顔は痛みで涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

 

「て、てめえ!やりやがったな!!荷物持ちのくせに!!」

「ぐふ、汚い顔を向けるな。飯がまずくなる」


 ヴィヴィ自身は食事をしていないのだが、そう言うと反撃をおこなった。

 そう、今のはただ攻撃を防いだだけでヴィヴィからはまだ攻撃していない。

 リムーバルバインダーに顎を撃ち抜かれてクズリーダーの泣き怒り顔があほ面に変化する。

 そのままくるくるくる、と宙を回りながらクズメンバーを巻き込み派手に倒れた。

 悲鳴を上げるクズメンバー達。

 そこでリオが席を立った。


「リオ!?」


 リオはドアのそばにいた客に向かって言った。


「ドアを開けろ」


 リオの淡々とした声。

 そこには威圧するものはなかった。

 なかったはずなのだが、命じられた者はせかされるようにすぐ席を立つとドアを開けた。

 リオが悶えていたクズ冒険者達を一人ずつ蹴り飛ばす。

 コントロール抜群で皆、あほ面晒しながら(クズリーダーは二度目)くるくるくると回転しながら宙を舞い、そのまま店の外へ消えた。

 店の外でちょっとした騒ぎが起きた。

 

『うわっ突然人が飛んできたっ!』

『いや、よく見ろ!人じゃない!クズだ!』

『ホントだ!クズ達だ!』

『誰か衛兵呼んでこい!!』

『俺行ってくるぜ!!』



 リオがテーブルを叩くとクズ達に向けていた視線がリオに集まる。

 リオは無表情で言った。


「俺達に構うな」


 客の中にはリオ達がリサヴィだと気づいた者達もいた。

 彼らが活躍した話を聞きたいと思っていた者もいた。

 しかし、今の言葉を聞いて話しかけるのを断念するのだった。



 その後、事情を聞きに衛兵達がやって来た。

 クズリーダーはともかく、他の者達はまだ手を出してきていなかったので「ちょっとやり過ぎかも」とサラは心配していたが、店にいた者達が擁護したこともあり、リオ達が罪に問われることはなかった。

 ただ、一番の理由はサラ達があのリサヴィだとわかったからだろう。


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