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735話 そっけない冒険者達

「人ってあんなに飛ぶんだな」などとどうでもいいことを考えていた依頼を受けたパーティの面々はそのぶっ飛ばした者達の視線を感じてはっと我に返る。

 リーダーが助けてくれた彼らに礼を言う。


「ありがとう助かった」


 それに残りの者達が続く。


「ありがとうな」

「本当に助かったわ」


 その後、彼らは聞かれもしないのにこれまでの経緯を話し始める。


「俺達はこの森に棲むガドタークが最近街道にまで出没するということでその退治の依頼を受けたんだが、街を出る前にあんた達がさっきぶっ飛ばした女がやって来て『仲間と逸れて一人じゃ依頼を受けられないので仲間に入れて欲しい』って弱々しい顔して言って来たからついOKしてしまったんだ」

「そしたら街を出た途端、残りの奴らが『おっ、こんなとこにいたのか』ってすっげーわざとらしい言葉をかけながら合流して来たんだ」


 女魔術士がリーダーと盗賊に冷めた目を向ける。


「あんた達があの女の色香に惑わされただけでしょ!私は最初からあの女なんか怪しそうだったから連れて行くのに反対してたのに情けない!」

「ちょ、お、お前余計なこと言うなよ!」

「パーティの恥だぞ!」

「何がパーティの恥よ!私を巻き込まないでよ!あんた達の恥よ!!」

「「う……」」


 彼らが揉めだし、これまで黙って聞いていた戦士の格好をした女神官が間に割って入る。


「ケンカは後にしてください」


 その声で三人は恥ずかしそうに頭を下げる。

 続きを聞きたいとは言っていないのだがリーダーがその先を続ける。


「あいつら『安心しろ。危なくなったら手助けしてやるから』とか言ってたんだけどよ、結果はあんたらが見た通りだ。手助けどころか邪魔ばかりした挙句に俺達の獲物を取るクズだったってわけだ」


 そこで彼らは彼らを助けてくれた者達のことをなにも知らないことに気付いた。


「お前達も冒険者か?」

「ええ」


 戦士の格好をした女神官が答えた。


「そういえばまだお互い名乗ってなかったな」

「私達は名乗るほどのものではありません」


 戦士の格好をした女神官がさらりと名乗るのを拒否した。


「いや、でもよ……」


 そこへ男戦士が話に割り込んだ。


「そんなことよりここから街は近いのか?」


 リーダーはどこか不機嫌そうに見える男戦士にやや圧倒されながら答えた。


「え?あ、ああ。ここをまっすぐ進むと街道に出るから右へ進めば数時間で着く」


 男戦士はそれだけ聞くと「もうお前達には用はない」とでも言うかのようにリーダーが指さした方へスタスタと歩き始める。

 その後を女戦士と魔装士が続く。


「では私達はこれで」


 戦士の格好をした女神官がそう声をかけてそのあとに続いた。

 依頼を受けたパーティは彼らのそっけない態度に呆気に取られた。

 リーダーがいち早く我に返り最後尾を歩く戦士の格好をした女神官の背に向かって声をかける。


「ちょっと待ってくれ!あんたらが倒したガドタークはどうすんだ!?」

「好きにしてください」

「そ、そうか。それは助かるが、あのクズ冒険者達はどうすればいい!?」


 その問いに答えたのは魔装士だった。


「ぐふ。好きにすればいいだろう。助けたければ助ければいい。まあ、感謝はされないと思うがな」


 こうしてそのパーティは去っていった。



 依頼を受けたパーティのリーダーが彼らの後姿を見送りながら言った。


「一体あいつら何者なんだ?自分達で倒した獲物もあっさり譲るなんて」

「ガドターク程度じゃ獲物だと思ってないのかもな」

「でも実際すごかったわ。あの戦士の人」


 盗賊が彼らの正体について思い当たる。


「なあ、もしかしてあいつらさ、あのクズ達が『大親友』って言ってたリサヴィじゃないのか?」

「ええ!?」

「リサヴィだと!?」

「ああ。リサヴィのメンバーは美男美女だって聞く。それにカルハン製の魔装具を装備した魔装士。あいつの盾の操作テクニックもすごかった。話に聞くリサヴィと一致する」

「あっ、じゃあ私を治療してくれたのがサラ!?鉄拳制裁の!?」

「恐らくな」

「でももう一人神官がいるんじゃなかったか?アリ、なんとかいう女神官」

「神官服着てなかっただけだろ。あのメイスを持ってた戦士、の格好をしてたのがアリ、なんとかだろう」

「確かに言われて見れば彼女、戦士にしてはちょっと違和感があったわね」

「確かにな」

「でもなんで正体隠すのかな?」

「ここにいるって知られたくないんだろ。クズが寄ってくるって話だから」

「ああ、なるほど。クズに絡まれた今だからその辛さよくわかるわ」


 女魔術士がうんうん、頷く。

 リーダーが雑談を切り上げる。


「そろそろ獲物の解体しようぜ」

「そうだな。あんまぐずぐずしてると新手の魔物が現れるかもしれない」

「木の上で寝てるクズも目覚めるかもしれないしな」

「そうね」


 そこで女魔術士が二人に嫌味ったらしく尋ねる。


「でもあの女はここに残していいの?」

「い、いいに決まってるだろあんなクズ女!」

「あ、ああ!」

「ほんとに?」

「し、しつこいな!」

「そういうの嫌われるぞ!」

「なんですって!?」



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