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734話 天空のクズ

 依頼を受けたパーティは苦戦したもののガドターク退治に成功した。

 すべてのガドタークが倒れたのを見て見学パーティがナンパをやめて動き出した。

 皆真剣な表情で走り出す。

 それぞれが倒れたガドタークの元にたどり着くと手にした武器で一突きし、その武器を天に掲げて叫んだ。


「「とったどーっ!!」」

「とったわーっ!!」


 そう叫んだ見学パーティ、いや、もうクズパーティでいいだろう、クズパーティの面々の顔は皆誇らしげだった。

 クズリーダーが誇らしげな顔を依頼を受けたパーティに向けて言った。


「止めは俺らが刺した!だから俺らのもんだ!!」


 クズリーダーにクズ盗賊、クズ女戦士も続く。


「依頼もちゃんと共同依頼だってギルドに説明しろよ!」

「わかってるわね!?」


 クズ冒険者達は言いたい放題であった。

 当然のことながら実際にガドタークを倒した依頼を受けたパーティが納得するわけがない。


「ふざけんな!」

「やっぱりお前らクズか!!」

「「「ざけんな!!」」」


 クズ冒険者達は見事にハモった。

 きっとこのときのために毎日ハモる練習をしていたのだろう。

 クズ冒険者達はお得意のクズロジックを展開して相手を丸め込もうとする。

 当然、理解されない。

 埒が明かないと見たクズリーダーがその様子を呆れた表情で見ていた新たに現れたパーティに声をかける。


「お前らも俺らのもんだって思うだろ!なっ!?」


 クズリーダーが「話を合わせろ」と目をパチパチして合図する。


「そんなわけないでしょう」


 戦士の格好をした女神官はクズリーダーの合図に気づかなかったのか発言を素っ気なく否定した。


「「「ざけんな!!」」」


 クズ冒険者達は何故か彼らが話を合わせることに疑いを持っておらず、次に発する言葉まで用意していたのにそれが無駄になり激怒する。

 クズリーダーがまだ手にしていた武器で脅そうとしたがやめた。

 依頼を受けたパーティは戦闘直後で疲労しており今なら戦って勝つ自信があった。

 問題は新たに現れたパーティだ。

 男戦士はガドタークを瞬殺するほどの力を持っている。

 他の者達も相当の手練に見えた。

 ただし、魔装士は除く。(彼らにはどの魔装士もフェラン製のあらゆる機能をオミットした魔装具を装備した、いわゆる偽魔装士にしか見えないのだ)

 クズリーダーは仕方なく妥協してやることにした。


「わかった。その二体はお前らにくれてやる」

「何がくれてやるだ!もとから俺らのだ!」


 クズリーダーは反論を無視し、戦士の格好をした女神官に目を向ける。

 まだ諦めてなかったのか格好をつけながら話を続ける。


「だが、こいつは譲れんぞ」


 そう言うと男戦士が瞬殺したガドタークを指さす。

 戦士の格好をした女神官が呆れ顔をしていたが彼は気づかなかったようで偉そうな態度で続ける。


「こいつはな、だらしねえそいつらの代わりに俺らが倒してやるつもりだったんだ。それをお前らが横取りした!俺らから獲物を奪ったんだ!だから返してもらう。反論の余地はねえぞ!!」

「だな!」

「だね!」


 戦士の格好をした女神官はため息をついて言った。


「よくまあそんな嘘をぬけぬけと。私達には逃げ出す準備をしていたようにしか見えませんでしたが」

「ざけんな!俺らの行動を勝手に決めつけんな!」

「そうよ!よく勘違いされるけどそんなことをするわけないじゃない!」

「俺達は誇り高き冒険者だぞ!」

「だな!」

「だね!」

「埃まみれ、の間違いでしょう」

「「「ざけんな!!」」」


 クズパーティが女神官に向かってクズロジックを展開し始めた時だった。

 今まで黙っていた男戦士が前に出た。

 それを見て女神官が慌てる。


「ちょっとリ……」


 男戦士は女神官の言葉を遮ってクズ冒険者達に言った。


「いい加減黙れクズ」

「「「誰がクズだ(よ)!誰が!!」」」

「ぐふ、お前らだ」

「黙れ棺桶持ち風情が!」

「そうだぞ!お前は俺らのおこぼれ貰うしか能のないクズ冒険者だろうが!!」

「ぐふ、クズはお前達だぞ」

「「「ざけんな!!」」」


 クズリーダーは男戦士に睨まれ窮地に立ってた。

 戦いになったら間違いなく負ける。死ぬ。

 どうにか戦いを避け言葉だけで彼らを屈服させられないかと必死に知恵を絞る。


「お、お前らさっきから聞いてれば年長者である俺らへの態度が悪すぎんぞ!!」


 クズリーダーが冒険者ランクを口にしなかったのは彼らが冒険者かわからないし、そうだったとしても彼らの方がランクが上である可能性が高かったからだ。

 彼らの見た目から自分達の方が年上だと確信し、年長者を敬うよう働きかけて彼らを抑えこもうとしたのだが、


「それがどうしたクズ」


 男戦士には全く効果なく見事に失敗した。

 

「て、てめえ……!」


 クズリーダーは「まだ終わらんよ!」と他に手はないかと必死に“ク頭脳”を働かせる。

 その頭にあるパーティの名が思い浮かんだ。

 次の瞬間、彼はそのパーティの大親友になった。

 クズリーダーが勝利を確信した顔を男戦士に向ける。


「俺らに逆らうとどうなるかわかってんのか!?俺らのバックにはなあ、あのリサヴィがついてんだぞ!!」

「「「「……」」」」

「お、ビビったか!?そりゃそうだろうよ!なんせよ、俺らの大親友リサヴィはあのSランクの魔物、ブラッディクラッケンを倒したんだからな!お前らなんか……」

「うるさい。もう消えろ」

「なん……ぐへっ!?」


 クズリーダーは男戦士のハイキックを食らい、怒り顔があほ面になって空高く飛んでいきそのまま落ちて来なかった。

 どうやらそばに立っていた木の枝にでも引っかかったようだ。

 自慢のクズリーダーがあっさり倒されてクズパーティに動揺が広がる。

 しかし、本人達は気づかれていないと思って強気な発言を繰り返す。


「ざ、ざけんなよ!てめえらリーダーの言葉を聞いてなかったのか!?俺らはリサヴィの大親友なんだぞ!……ぐへっ!?」


 喚いていたクズ盗賊が魔装士のリムーバルバインダーにどつかれ、あほ面を晒しながら高く飛び、姿を消した。

 彼もまた木の枝にでも引っかかったのか落ちてこなかった。

 クズパーティ最後の一人となったクズ女戦士は怯えながらもクズとしての誇りを胸に勇敢にも一方的に暴力を振るう彼らに立ち向かう。


「あ、あなた達っ、こんなことをしてっ、た、ただで済むと思っているの!?あたし達はリサヴィの大親友だって言ってるの聞こえてないの!?難聴なの!?まさかリサヴィを知らないとか言わないわよね!?」

「「「「……」」」」

「ね、ねえ、ちょっと……」


 男戦士は無言でそのクズ女冒険者に近づく。

 クズ女冒険者は怯えながら後退する。


「ちょ、ちょ待ってよ!ま、まさか、あなた、か弱い女のあたしにまで暴力振るうつもりじゃ、じゃないわよねっ?ねっ?」


 クズ女冒険者が男戦士に媚びた笑みを向ける。

 彼女の容姿は性格に反していい。

 美女と言っていいだろう。

 これが街中で一般男性、あるいはモテない男冒険者に向けたものなら相手はくらっと来たかもしれない。

 しかし、彼女は木の上に消えた、人の獲物を奪おうとしたクズ冒険者達の仲間だとわかっている。

 根がクズだとバレバレである。

 それでも相手が女好きであればまだワンチャンあったかもしれないが相手が悪かった。

 彼女の行動は全く効果がなかった。


「ね、ねえ……」

「うるさい」

「ちょ……あへっ!?」


 哀れ、クズ女冒険者も男戦士に蹴り飛ばされて木の上に消えた。



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