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732話 ホスティの苦悩 その2

 ホスティが疑問を口にする。


「そもそもおかしいだろ!ゴンダスの野郎はマルコの領主が『直々に取り調べる』と言って強引に連れて行ったんだぞ!向こうの取り調べが終わり次第、こちらに引き渡すことになっていただろうが!!」


 ホスティが再び机をどん!!と叩き八つ当たりをした。

 ホスティは本当はゴンダスをマルコの領主に渡したくなかった。

 だが、あまり強く出てレリティア王国との関係が悪くなることを恐れた。

 今のレリティア王国の国王は冒険者ギルドを嫌っていた。

 いや、冒険者ギルドだけでなくジュアス教団も嫌っていた。

 その理由はシンプルだ。

 現国王は支配欲が強く、自分の国に思い通りに動かない組織が存在するのが我慢出来ないのだ。

 先のカシウスのダンジョンの管理についても最終的には冒険者ギルドとレリティア王国共同で管理することになったがこの結果にも不満たらたらであった。 

 とはいえ、この二つの組織を追い出すことができないのも事実だった。

 レリティア王国は大国とはいえ、国内で起きる大小様々な事件を全て自国の軍隊だけで解決するのは厳しい。

 いくら嫌っていようと冒険者ギルドとジュアス教団の協力は不可欠なのである。

 ホスティは国王と余計な摩擦が生じないようマルコ側での取り調べが終わった後で引き渡すことを条件に引き下がったのである。


「そのゴンダスは本物なのか?偽物ってことはないのか?」


 シージンはホスティに叩かれた机の心配をしながら答える。


「現在、マルコの領主に問い合わせ中です。もうしばらくお待ちください」

「急いでくれ!」

「承知いたしました」



 それから数日後、シージンがホスティにゴンダスについて報告にやった来た。


「ホスティ様、ゴンダスの件ですが残念ながら本当のようです。ゴンダスは脱走を計ったようです」


 今、冒険者ギルドが信用を失いかけている原因の多くはゴンダスにある。

 そのゴンダスが自分の行いを反省するどころかまだ冒険者ギルドの信用を落とし続けている。

 ホスティの心が怒りで膨れ上がる。


「あのクズが!!それでいつのことだ!?」

「二ヶ月以上前とのことです」

「二ヶ月以上前だと!?」


 ホスティは領主に月に最低一回はゴンダスの引き渡しの要求をしていたが、その都度「まだ調べることがある」と断られていた。


「あの野郎!嘘ついてやがったのか!!本当にゴンダスの野郎は脱走したのか!?領主もゴンダスの悪事に関与していたはずだ!それが露見するのを恐れて逃したんじゃねえのか!?」

「領主が不正に関与したかについては証拠がありません。限りなく黒に近いグレーですが。それと領主が逃したとは思えません。この世から消えて頂いた方が一番証拠が残りませんので。私はあの領主は時を見計らってゴンダスを殺すつもりだったと思っています」


 シージンが静かに訂正する。

 

「確かにそっちの方が納得できるか」


 ホスティが首を捻る。


「だが、それなら奴は厳重に見張られていたはずだ。誰か脱走を手助けした奴がいるんじゃないのか?」

「はい、そのようです」

「あんなクズを危険を顧みず脱走させるなんてどんなもの好きだ」

「それにつきましてはわかっておりません。領主は脱走したことがバレるのを恐れてあまり調査していなかったようです」


 ホスティはマルコの領主に向かって舌打ちをする。

 

「それでゴンダスの居場所はわかったのか?」


 シージンが頭を下げる。


「申し訳ありません。彼の行なっていたセミナーとやらは一箇所に固定せず転々と移動していたようなのです」

「そうか」

「引き続き調査致します」

「ああ。頼む。出来るだけ早く解決したい。俺達はゴンダス如きに構っている暇はないのだ」

「魔族、でございますね」

「そうだ。出現情報が各地より寄せられている。奴らが本格的に動き出そうとしているのかもしれんのだ!……!!……まさか……」


 シージンがホスティの先を続ける。


「魔族が既に我々に攻撃を仕掛けているのかもしれない、ですね」

「その通りだ」


 冒険者ギルドは魔族に支配された暗黒時代に抵抗し、再び人類のもとにこの地を取り戻したレジスタンス組織が元になっている。

 魔族にとっては憎らしい仇敵と言える。

 魔族は圧倒的な力を持っていたが勇者の前に敗れた。

 勇者がいなければ魔族を追い払うことは出来ず、レジスタンスは全滅し、今もこの地は魔族に支配されていただろう。

 その勇者がいないにも拘らず魔族は表立って行動を起こしていない。

 これまでの出来事は魔族側が冒険者の信頼を失わせ人類の結束力を削ごうとしているのはでないかとホスティは思えてきた。


(……いや、それだけじゃねえ。魔族が頻繁に現れるようになってんだ。一人くらい勇者が現れたっておかしくないんじゃないのか?……勇者が現れないのはそれに相応しい者達を魔族が先回りして葬っているんじゃ……)


 ホスティはその考えに至り恐ろしくなった。


(もし……もし、そうだとしてどうやってだ?どうやって勇者候補を探すというのだ?……まさか人類に裏切り者がいるのか?……ゴンダス!奴が魔族に魂を売ったのか!?)


 ホスティの考えは半分正解だった。

 ゴンダスは相手が魔族と知らず協力していたのだ。



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