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730話 遺跡探索者ギルド支部ネプチュー

 重装魔装士達により多くのブレードシャークが倒されたが全滅したわけではないし、漁師達の舟ならエッジフィッシュでも簡単に沈めることができる。

 そんなわけで漁師達が舟を出すことはなく、ネイコの方舟に渡る手段を持っているのは今のところ冒険者ギルドの対抗組織である遺跡探索者ギルドのサンドシップ、ネプチューだけであった。

 当初、ネプチューは浜辺に留まり遺跡探索者ギルド支部としての役割も果たす予定であった。

 その一つが新規会員の募集だ。

 ネプチューが遺跡探索者ギルドの支部を兼ねており新規会員を募集しているとの情報が広まるとこれを機に遺跡探索者ギルドへ入会しようと冒険者達が続々とやって来た。

 探索者となればネイコの方舟探索が出来ると思ったのだ。

 彼らを迎えるため船内にある遺跡探索者ギルドルームへの直通ドアが開放された。

 しかし、そのドアは半日もせず閉じられることとなった。

 何故か。

 それはやって来た冒険者達の中にクズ冒険者がいたからだ。

 ネプチュー支部のギルド職員達は彼ら、異常思考を持つクズ冒険者達の相手をするのに半日しか持たなかったのである。

 ギルド職員達も冒険者の中にクズがいることは先の愚行を話に聞いて知っていたが実際に会った彼らは想像以上だった。

 異常だった。

 もちろん、やってきた者達の中にはマトモな冒険者もいたのだがクズ冒険者を一人相手にするだけで通常の何倍も疲労し、神経を削られた。

 そのうち冒険者は皆クズではないかと疑心暗鬼になった。

 結果、クズ冒険者を何かの間違いで入会させてしまうくらいなら新規会員はいらないという結論に達して早々に入会募集を打ち切ったのだった。

 もちろん、その程度でクズ冒険者達は諦めたりしない。



 閉じられたドアだが探索者カードがあれば開けられるようになっていた。

 冒険者ギルドのものと同様の魔道具で作られているので見た目はそっくりだが、互換性は全くない。

 冒険者カードの内部情報を遺跡探索者ギルドで読み取ることはできないし、逆に探索者カードの内部情報を冒険者ギルドで読み取ることもできない。

 次にクズ冒険者達が何をしたかは説明するまでもないだろう。

 クズ冒険者達は冒険者カードを認証部に当ててドアが開かないと「壊れているぞ!」と怒鳴りドアを叩き始めた。

 壊れているのはドアではなく彼らの頭のほうであった。

 ギルド職員は何度も「冒険者カードでは開きません!」と説明するが理解されないだけでなく、説明のために仕方なくドアを開けると中に強引に侵入しようとする。

 その者達は不法侵入の現行犯としてギルド警備員達にボコられて叩き出されたがそうすると今度は怪我の治療費を払えと莫大な慰謝料を請求する始末である。

 そんなことが何度も起き、もはや手に負えないとカード認証部を格納してはっきり中には入れない事をわからせた、

 つもりであったが彼らはわからなかった。

 彼らはドアを蹴ったり武器で攻撃し始める。

 攻撃を受けたドアだが、ブレードシャークの攻撃を跳ね返すほどの強度を誇るので壊されることはなかった。

 逆に彼らの武器が壊れた。

 すると彼らはその壊れた武器を掲げ「弁償しろ!」という始末であった。



 結局、ネプチューはクズ冒険者が、いや、誰もが近づくことが不可能な海上へと避難することにした。

 その行動に気づき、慌てて船体にしがみついたり進路上に立ち塞がるクズ冒険者達がいた。

 突如始まったクズ冒険者対ネプチューのチキンレース。

 多くのクズ冒険者達は激突する前に逃げ出したが、その場に留まり続ける勇気ある(無謀な)者達もいた。 

 ネプチューが止まることはなく、チキンレースは引き分けに終わった。

 チキンレースを引き分けた勇気ある(無謀な)クズ冒険者達が払った代償は大きかった。

 彼らはネプチューに跳ね飛ばされた。

 勢いよく飛んだクズ冒険者達は何か喚きながら海に落ちて海の魔物エッジフィッシュの餌食となった。

 その衝撃で船体にしがみついていたクズ冒険者達が砂浜に落ちたが全員ではなかった。

 落ちなかった者達は「助けろー!!」と叫んだが助けが来ることはなかった。

 叫び声が船内まで聞こえるわけがないし、聞こえていたとしてもそんな異常行動をとる者達を助けようとは思わないだろう。

 助けたところで新たな問題を起こすのは明らかだ。

 やがて船体にしがみついていたクズ冒険者達は力尽き、海へ落ちたところをまたもエッジフィッシュに襲われ悲鳴を上げながら海に沈み再び姿を見せることはなかった。

 ネプチューはネイコの方舟近くに錨を下ろして停泊し、物資を調達する必要ができた時のみ上陸することにした。



 クズ冒険者達の活躍?により全ての冒険者は探索者達がネイコの方舟攻略するのをじっと見守ることしか出来なくなった。

 マトモな冒険者達のクズ冒険者達への不満が募る一方、クズ冒険者達もクズ冒険者達に不満を募らせていた。

 一見矛盾すると思うかもしれないがそうでもない。

 何故ならクズ冒険者達は自身をクズだと思っていないからである!

 浜辺ではクズ冒険者達の煽りを受けて探索者になれなかったマトモな冒険者達とクズ冒険者達の乱闘があちこちで起こった。

 死者も出たがそれは全てクズ冒険者達であった。

 ここに集まったクズ冒険者達は皆大した力を持っていなかったのである。



 一連の出来事で冒険者の死者は四十名を超えた。

 全てクズ冒険者であった。



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