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729話 最後の抵抗

 戦い、いや、一方的な殺戮が終わり、探索者のリーダーが呟く。

 

「俺達は冒険者ギルドに失望して退会した。でもよ、冒険者がここまで酷くなっているとは思っていなかったぞ」

「こんなんじゃ確かにアズズ街道警備を俺達探索者に任せたいって言うのも納得だぜ」


 彼らの話を聞いていた真面目な冒険者達は屈辱であったが言い返せない。

 今まさにクズ冒険者達が愚行をまざまざと見せつけたのだ。

「俺達は違うぞ!」と言ったところでこの場で証明する手段はない。

 彼らに出来ることは怒りを鎮めるためにぐっと拳を握ることだけであった。

 その手は強く握り過ぎて血が滲んでいた。

 そんな真面目な冒険者の思いを他所に、「まだまだこんなもんじゃないぜ!」とでも言うように新たな者達が動き出した。

 それはフェラン製の廉価版魔装具を装備した、いわゆる偽魔装士達であった。

 彼らは腕を組み誇らしげな顔をしながら(と言ってもその顔は仮面で口元しか見えないが)、横一列になって探索者達の元へ近づいてきた。


「どぅーむ!近づくなクズども!ぶち殺すぞ!!」


 重装魔装士達が憎しみを込めてその者達を怒鳴りつける。

 彼らはびくっとして足を止めた。

 しかし、偉そうな態度は崩さない。

 その中の一人が口を開いた。


「俺らをそいつらと一緒にするな!俺らは真っ当な誇り高き冒険者だ!」


 それに他の偽魔装士達が「だな!」と声を合わせて叫ぶ。


「どぅーむ!うるさい!さっさと去れ!」

「そんな冷えこと言うなよ。俺達は同じ魔装士じゃねえか」


 その後に偽魔装士達が「だな!」と声を揃えて叫んだ。

 しかし、その言葉は重装魔装士達の逆鱗に触れた。


「どぅーむ!ふざけるな!何が同じだ!偽魔装士どもが!」

「どぅーむ!俺達はお前達を魔装士とは認めていない!!」


 その言葉を聞いて偽魔装士達が一斉に「ざけんな!」と叫ぶ。


「どぅーむ!お前らを見ているだけで殺意が溢れ出して止まらん!」

「どぅーむ!さっさと去れ!それ以上近づいたらアマサーンで攻撃する!」

「どぅーむ!反論は聞かん!言えばアイアンメイデンで串刺しにしてやるぞ!!」


 重装魔装士達は本気だと示すためだろう、左肩にマウントしたリムーバルバインダー、アイアンメイデンがパカっとフタを開き中から凶悪な棘が姿を現した。

 だが、偽魔装士達は重装魔装士達の脅しに屈することはなかった。

 再び歩みを再開したのだ!

 ……いや、何かおかしい。

 偽魔装士達は正面を向いて足を動かしているが、徐々に離れていく。

 なんと後歩きをしているのだった。

 それが彼らの精一杯の抵抗であった。

 言うまでもなく、その行動は滑稽なだけだ。

 偽魔装士達が浜辺から去り、やっとクズ冒険者達の愚行が終焉を迎えたかに見えた。



 浜辺が落ち着いたところで探索者のリーダーが本来の目的を口にする。


「クズ達の邪魔が入って話すのが遅れたが打ち合わせはネプチューで行いたいと思うんだが問題ないか?」

「はい、問題ありません。私もあのサンドシップには興味がありましたから」

「よし、じゃあ船に案内するぜ」

「よろしくお願いします……あ、」


 ロックは一仕事残っている、いや、出来たことに気づいた。


「ん?どうした?」

「すみません、少しだけ待ってください」


 ロックは少し離れたところにいた兵士達の隊長に声をかける。


「隊長、申し訳ありませんがそのクズ達の後始末をお願いできますか。後ほどお礼を致しますので。そうそう、探索者の皆さんが倒しましたブレードシャークもお礼として差し上げます」

「わかった。任せてくれ」


 ブレードシャークはBランクにカテゴライズされる魔物であり、その素材は高く売れる。

 臨時収入が入るとわかり、兵士達の頬が緩む。


「では行きましょう」

「ああ」


 探索者達の後をロックとその護衛達が続く。

 その時だった。

 

「おーい!ロックーっ!!待たせたなぁー!!」


 元気一杯の大声で走って近づいて来る者達がいた。

 先ほどロックに護衛の押し売りをしたクズ冒険者達だった。

 彼らはロックの関係者になりきりネプチューに乗り込む気満々であった。

 それで美味しい思いが出来ると思ったらしい。

 話を合わせろとクズリーダーがロックに向かって目をぱちぱちさせる。

 ロックは意味を理解した。

 理解しただけである。


「船へ急ぎましょう!」


 探索者達はそのクズ冒険者達がロックに絡んでいるところを見ていなかったが、彼らの行動、そしてロックの態度から彼らもクズ冒険者であると察した。

 皆がネプチューに向かって全速力で走り出す。

 ロック達がネプチューに乗り込むとドアは固く閉められた。

 追いつけなかったクズ冒険者達がドンドン!とドアを叩くが開くことはなかった。

 間もなく隊長に指揮された兵士達がそのクズ冒険者達を包囲した。


「今度は逃さんぞ」


 クズ冒険者達は諦めが悪く必死に抵抗する。

 

「ちょ待てよ!俺らはロックの大親友なんだ!」

「護衛の依頼を受けてんだ!ホントだぞ!」

「嘘だと思うなら今すぐロックをここへ呼んでこい!急げよ!」


 兵士達は誰も彼らの言葉に耳を貸さなかった。



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