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727話 クズ冒険者達は諦めたくない その1

 クズ冒険者達の愚行は終わっていなかった。

 腕を組んで前後移動するおかしな集団がいた。

 重装魔装士達はその者達の奇行に気づき、先のクズ達のように突撃するかどうか悩んでいるのだと悟る。

 躊躇していることからその者達は今までのクズとは違い多少は話が通じると思った重装魔装士達はその者達に向かってこれまで邪魔が入って最後まで言えなかった言葉を口にする。


「どぅーむ。このオートマタ、アマサーンは武器を手にして近づく者達を敵と判断して攻撃する!」

「どぅーむ!死にたくなければ去れ!!」


 その言葉を聞いたクズ冒険者達は重装魔装士達の警告に従い素直に浜辺から去った、

 なんてわけはなかった。

 前後移動を続けながらブレードシャークの素材を得る方法はないかと必死に“ク頭脳”を働かせる。

 その目にブレードシャークのそばに転がるクズ冒険者達の死体が目に入った。

 次の瞬間、

 クズ冒険者達は死んだクズ冒険者達の大親友になった。

 名前すら知らないがそんなことは彼らには関係ない。


「「「「お前ら〜!」」」」


 クズ冒険者達はアマサーンに攻撃されないように武器を収めたまま死んだクズ冒険者達の元の慎重に近づくとその体を抱きしめる。

 そして大親友の死を悲しみ涙を流しながら彼らを殺したオートマタを操っている重装魔装士達を非難して賠償金を求め出す。

 その顔は悲しみと憎しみに満ちていた。

 が、その手は大親友の死体を漁っていた。

 このようなクズ行為に慣れているのだろう、視線を重装魔装士達に向けながら手に入れた所持品を懐へ入れていく。

 リュックごとはぎ取り担ぐ者もいた。

 そして大親友達を殺した賠償金の額を実際に口にする時には皆満面の笑みを浮かべていた。

 それを見て重装魔装士の一人が呆れた声で呟いた。


「……どぅーむ。噂通り、本当に冒険者はクズばっかりだな」


 ロックは冒険者ではない。

 だが、彼が憧れた冒険者が馬鹿にされるのは悔しかった。

 リサヴィのような信頼できる冒険者の方が大半なのだ。

 クズ行為を行なっているのはごく一部の冒険者なのだ。

 そのごく一部がこの場に多く集まり愚行を繰り返しているだけなのだ。

 とはいえ、それを証明する方法はない。

 今は探索者とはいえ、元冒険者であったロックの知人達もクズ冒険者達の愚行には我慢出来なかったようだ。

 クズ冒険者達に向かって何か言おうとした重装魔装士達に「俺に任せろ」と手で合図する。

 それに気づき重装魔装士達は後ろに下がる。

 探索者達が賠償金を求めるクズ冒険者達に問いかけた。


「その死んだクズ達はお前らの知り合いだったのか?」


「そうだ!」と皆が答える。

 クズである事を否定する者はいなかった。


「そうか」

「わかったら賠償金を払え!」

「大親友が止めを刺したブレードシャークは当然俺らがもらう!」


 そこで「だな!」と声を揃えて叫ぶ。

 その態度に腹を立てた重装魔装士達が左腕のリムーバルバインダー、アイアンメイデンを使おうとした。

 それに探索者のリーダーがいち早く気づいた。

 

「落ち着けって!」


 探索者のリーダーが重装魔装士達を止めるのを見てクズ冒険者達は自分達が攻撃されそうになったことに気づく。

 だが、その場を離れようとはしない。

 探索者のリーダーが再度尋ねる。


「もう一度聞く。そのクズ達は本当に全員お前達の大親友だったのか?」

「おう!こいつらは大親友だったぜ!」


 疑いを晴らすためにクズ冒険者達が涙を流し始める。

 こんなこともあろうかと自在に涙を流せる訓練をしていたのである!

 しかし、クズ冒険者達の悲しむ演技は長続きしなかった。

 大親友達から漁ったもののことを思い出し、その顔はすぐに満面の笑みに変わったのだ。

 大親友達が死んだことを喜んでいるようにしか見えなかった。

 そのことに彼らだけが気づかなかった。

 探索者のリーダーはそのことを指摘せずに尋ねる。


「じゃあ、その大親友とやらの名前は当然言えるな?」

「な、なに!?」


 動揺するクズ冒険者達に構わず探索者のリーダーは転がっている首のない死体の一つを指差した。

 

「そのクズの名は?」


 クズリーダーは脊髄反射でその者の名を叫んだ。


「クズ太郎だ!」


 探索者のリーダーは突っ込むことなく別のクズ冒険者の死体を指差す。


「こいつは?」

「クズ二郎だ!」


 その後、「クズ三郎!」「クズ四郎!」と適当な名が続いた。

 探索者のリーダーが呆れた顔をして言った。


「いや、お前らの名前は聞いてないぞ」


 直後、クズ冒険者達から「ざけんな!」の大合唱が起きた。


「お前達が救いようのない嘘つきだとハッキリした。いや、最初からか」


 クズ冒険者達が「ざけんな!」と声を揃えて叫ぶ。

 だが、叫んだところで追い込まれた状況から脱することはできない。

 大親友の死体から漁った物で満足して去るという考えはなく、なんとかブレードシャークの素材も手に入れられないかと必死に“ク頭脳”を働かせ新たな作戦を考える。

 そして勝利の方程式?を叩き出した。


「だ、大体だな!お前らがここにやって来れたのは俺らの大親友であるリサヴィの力があってこそだぞ!」

「「「だな!」」」

「俺らの大親友がブラッディクラッケンを倒したからお前らはここにやってこれたんだ。そのことを理解してねえんじゃねえか!?あん!?」

「その通りだ!ブレードシャーク程度の魔物を倒したくらいでいい気になってんじゃねえ!」

「ではブレードシャーク程度の素材はいらないでしょう」


 ロックの言葉に彼らは声を揃えて叫んだ。


「「「「それはそれ!これはこれだ!!」」」」


 ロックは呆れ顔をしながら確認する。


「あなた達はリサヴィの皆さんのことも『大親友』と言っていますが本当ですか?」

「てめえ!俺らを馬鹿にしてんのか!?」

「俺らが嘘をつくような奴に見えんのか!?」


 そう言った者を含め彼らは一斉に腕を組んで仁王立ちするとキメ顔をロックに向けた。

 既にクズ冒険者達の大親友と嘘をついたことをすっかり忘れているようであった。

 ロックは真顔で答えた。


「見えます」

「「「「ざけんな!!」」」」


 クズ冒険者達は声を揃えた叫んだ。



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