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726話 浜辺のごっつあんです祭り

 ロックは彼らの言葉を完全に信じることはできないがだからと言って確かめる術はない。

 はっきりとわかるのは彼らは相当の手練であるということだ。

 

(カルハンは遺跡探索者ギルドに出資していますから魔装具を貸すこともあるかもしれないですが、アイアンメイデンの操作、連携……間違いなく彼らは軍でもトップクラスの腕前だったはず……それを軍はみすみす手放した?)


 疑いは晴れないが、ブレードシャークを容易に倒す彼らが協力してくれるのは大変助かる。

 海の魔物退治は人より呼吸の必要ないオートマタ(ゴーレム)が最適解と言えた。

 彼らが魔物の数を減らしてくれればそれだけ財宝を引き上げやすくなる。


「皆さんのことを信じましょう」

「どぅーむ。信じてくれて何よりだ」


 重装魔装士が背後に控えるアマサーンが掴んでいるブレードシャークの死体を指差して言った。


「どぅーむ。これらは手土産だ。受け取ってくれ」

「どぅーむ。他にも倒したが、それらが浜辺に流れ着いたら好きにして構わない」

「これはご丁寧に……」


 ロックが重装魔装士達にお礼を言っている時だった。


「危ねえー!どけー!!」


 ロック達のやりとりを見ていた者達の中から突然そう叫びながら飛び出してくる者達がいた。

 格好から冒険者であろう。

 彼らは優れた冒険者なのだろう、なんらかの危険をいち早く察知したようでその表情は真剣そのものだ。

 彼らが向かった先はアマサーン、いや、それらが引っ張って来たブレードシャークだった。

 彼らは手にした各々の武器をブレードシャークに一当てするとその武器を天高く掲げて叫んだ。


「「「とったどーっ!!」」」


 ……訂正する。

 彼らは優れた冒険者などではなくクズ冒険者であった。

 目の前の獲物を見て無意識に飛び出してクズスキル、いや、エクセレントスキル“ごっつあんです”を発動したのだった。

「この獲物は俺のもんだ!」と主張するようにクズ冒険者達はキメ顔をアマサーンに向けた。

 彼らにはオートマタと人間の区別がつかないようであった。

 確かにアマサーンは人の姿をしているが近くで見れば人ではないとわかるはずだ。

 だが、彼らには見分けがつかなかったようでアマサーンに対して人間を相手にするのと同じ対応をした。

 その誇らしげな顔が宙を舞う。

 武器を持って近づいて来た見知らぬ彼らをアマサーンは敵と認識して攻撃した。

 右腕に内蔵したブレードを振るってその首を斬り飛ばしたのだ。

 クズ冒険者達は皆ごっつあんですのポーズを維持したままぱたん、と倒れた。

 誇らしげな顔をした首がころころ砂浜を転がる。

 その表情から自分達が死んだことに気づかなかったようだ。

 それを見て見物人の中から悲鳴が上がった。

 おそらく街の住人だろう。

 クズ冒険者達の愚行を見て重装魔装士の一人が吐き捨てる。


「どぅーむ。噂以上だ……!?」


 重装魔装士の言葉が途中で止まったのはクズ冒険者達の愚行はまだ終わりではなかったからだ。


「どけえーっ!!」


 と叫びながらクズ冒険者の第二陣が現れたのだ。


「「「「とったどー!!」」」」


 彼らもまたアマサーンに敵と認識されて首を刎ねられた。

 重装魔装士達が呆れ顔(と言っても仮面で顔は見えないが)でクズ冒険者達の愚行を罵ろうとした。


「どぅーむ。こいつらクズ仲間が死ぬのを見ていなかったの……」


 彼が言葉を最後まで口にする前に第三陣が出現した。


「危ない!俺らに任せろー!!」


 彼らもまた奇声を上げながらブレードシャークに駆け寄るとその体をひと突きする。


「「「とったどー!!」」」


 言うまでもなく彼らもアマサーンに敵と認識されて首を刎ねられた。


「どぅーむ。話を聞け!アマサーンは……」


 またも彼が言葉を最後まで口にする前に第四陣の突撃が始まった。

 彼らもアマサーンに敵と認識されて首を刎ねられた。

 

「「「……」」」


 重装魔装士達は更に突撃してくるクズ冒険者達の姿を見て説明するのを諦めた。

 クズ冒険者達がブレードシャークの元へ向かってはアマサーンに首を刎ねられる。

 ブレードシャークの死体のそばには先に突撃して来たクズ冒険者達の死体が大量に転がっているのだが彼らにはその姿が目に入っていないようだった。

 横取りすべき獲物の姿しか目に入っていないようであった。

 その姿に探索者のリーダーがボソリと呟いた。


「……あのクズ達は一体なんなんだ?自殺願望者か?それとも禁止薬物でもやってるのか?」


 そう思ったのは彼だけでなく、その場にいる誰もがそう思った。

 ……いや、クズ冒険者は除く。

 探索者よりはクズ冒険者を多く見ているロックも違和感を覚えていた。

 彼らの行動はこれまでのクズ冒険者と比べても明らかに異常であった。


(クズスキルが体に染み込んでいるとしても既に何人も目の前で死んでいるのです。流石に危険だとわかりストップするはず。少なくとも別のクズ行為を選択するはず……それをしないということは本当に彼らは禁止薬物でもやっているのでは?)


 重装魔装士達、探索者達、そしてロックとその護衛達は黙ってクズ冒険者達の突撃が収まるのを待った。

 ちなみに重装魔装士達はアマサーンの行動を変更する気は全くなかった。



 クズ冒険者達の突撃は第六陣で終了した。

 この愚行で戦死……いや、死亡したクズ冒険者の数はなんと二十一人にも上った。



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