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721話 リック・マクーの襲撃 

 前衛のリサヴィは前列がリオとアリス、後列がサラとヴィヴィだった。

 そのすぐ後ろを歩く三組のクズパーティのあるクズリーダーがサラとヴィヴィの間が一番安全であり、なんか威張れそうな気がした。

 何故か間に入ってもサラ達に拒否されるとは全く考えなかった。

 それどころか冒険者の先輩である自分に教えを乞う光景すら浮かんでしまったのだ。

 思ったら実行せずにはいられない。

 

「間に入るぞ」


 そう言ってそのクズリーダーがサラとヴィヴィの間に割り込もうとした。

 次の瞬間、

 

「ぐへっ!?」


 そのクズリーダーはヴィヴィのリムーバルバインダーにど突かれ、宙を舞った。

 あほ面を晒しくるくるくる、と回転しながらクズ冒険者達の頭上を越えるとぼてっ、と地面に落ちて山道をころころと転がり落ちていく。

 

「「リーダー!?」」


 そのクズリーダーのクズパーティの面々が慌てて転がるクズリーダーを追いかけていく。


「がははっ!バカな野郎が!なあ?」


 そう言って別のクズパーティのクズリーダーが彼を真似てサラとヴィヴィの間に入り込もうとする。


「ほへっ!?」


 そのクズリーダーもまたヴィヴィのリムーバルバインダーにど突かれ、宙を舞った。

 あほ面を晒しくるくるくる、と回転しながらクズ冒険者達の頭上を越えるとぼてっ、と地面に落ちて山道をころころと転がり落ちていく。


「「リーダー!?」」


 そのクズリーダーのクズパーティの面々も慌てて転がるクズリーダーを追いかけていく。

 

「ったくバカな奴らだ!自分の実力を知れってんだ!俺はもちろんだいじょ……ぶへっ!?」


 最後のクズリーダーもヴィヴィのリムーバルバインダーにど突かれ、宙を舞った。

 あほ面を晒しくるくるくる、と回転しながらクズ冒険者達の頭上を越えるとぼてっ、と地面に落ちて山道をころころと転がり落ちていく。


「「リーダー!?」」


 そのクズリーダーのクズパーティの面々も慌てて転がるクズリーダーを追いかけていく。

 ヴィヴィがボソリと呟いた。


「ぐふ、ギャグか」


 その後、怒声を上げながら三組のクズパーティが追いかけてきた。

 ヴィヴィにど突かれたクズリーダー達は一応冒険者ではあるし、ヴィヴィが手加減したこともあり大した怪我をしていなかった。

 彼らは追いつくと口々にヴィヴィの悪口を言うがヴィヴィは相手にしない。

 流石に三度も拒否され痛い目も見て学習したようで文句を言うものの割り込もうとする者はいなかった。



 山道に魔物、リック・マクーが六体姿を現した。

 リック・マクーは熊型の魔物、マクーの変異種で同じCランクにカテゴライズされているがマクーより強い。

 特に前足にはマクーより大型の凶悪なかぎ爪を生やしており、魔法がかかっていない鉄製の防具なら容易に斬り裂くことができる。

 リック・マクーに相対するのは前衛のリサヴィである。

 正面から堂々と勝負を挑むその姿にサラ達は寄生するクズ達よりも好感が持てた。

 クズ冒険者達は中衛以降の安全な場所からほぼ同時に叫んだ。


「「「「「「「「「行けー!!」」」」」」」」」


 彼らの号令がなくともリオ達は戦闘を開始する。

 戦いだが特筆することはなく、リサヴィが無傷で勝利した。

 リオ、アリス、サラがあっという間に三体を倒すと残りの三体は逃げて行った。

 クズ冒険者達全員がリサヴィに「追え!」と命じるがもちろん無視。

 その態度に激怒しならがらも彼らの体は次の行動に移っていた。

 倒れたリック・マクーに駆け寄ると手にした武器で一突きしてその武器を天に掲げて叫ぶ。


「「「「「「「「「どったどー!!」」」」」」」」」


 クズスキル、もとい、エクセレントスキル“ごっつあんです”の発動だ。

 その顔は皆誇らしげであった。

 ここで疑問に思った者もいるかもしれない。


「あれ?リサヴィが倒したのは三体だよな。叫び声多くね?」


 と。

 実は一体のリック・マクーに対して複数人が“ごっつあんです”を発動していたのだ。

 幸いにも実際に魔物を倒したリサヴィは自分達のものだと主張しなかった。

 サラはこれで彼らが満足して去ってくれればいいと思って彼らの自由にさせたのだ。

 しかし、彼らは仲良く一体ずつ分けようとはしなかった。

 少しでも多く分前を得ようとクズ同士で醜い争いを始める。

 彼らが争うのを尻目にリオ達は先を進む。

 それに気づいたクズ冒険者の一人が背後から慌てて声をかける。


「ちょ待てよ!“俺が倒した”獲物の解体するのを待てよ!」


 獲物を横取りしただけでなく解体するまで待てというその図々しさには同じクズ冒険者達も流石に呆れてそのクズを非難する。


「ざけんな!それは“俺が倒した”獲物だ!」

「ざけんな!俺んのだ!さっさそこ退きやがれ!」


 ……違った。

 同類であった。

 更なる強者もいた。


「おいサラ!誰の獲物かはっきり言ってやってくれよ!俺のだってな!!」

 

 獲物を奪った相手に判定を求めたのだ。

 「話を合わせろ」と目でぱちぱち合図するのも忘れない。

 名指しされたサラはもちろん無視した。

 その合図だが残念ながらサラの背中には目がついていないので気づかなかった。

 まあ、気づいても結果が変わることはないが。



 クズ冒険者達は究極の選択を迫られた。

 これらの獲物で満足して街へ引き返すか、この先もっと大量の素材が得られることを期待してリサヴィの後を追いかけるか、である。

 クズ冒険者達は第三の選択肢を選んだ。

 各々のパーティ内で素材回収組とリサヴィ同行組に分けることにしたのだ。

 ただでさえ大した力を持っていない彼らが凶悪な魔物が多数棲息するハイト山脈で戦力を分散させるなど正気の沙汰ではないと思うかもしれない。

 だが、思い出して欲しい。

 彼らはクズである。

 元から正気など持ち合わせていないのである!

 彼らは渋々各パーティ獲物一体で妥協した。

 それぞれのクズパーティから一人素材回収のためにその場に残し、残りの者達がリサヴィの後を追った。




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