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720話 望まぬ同行人達

 マトモな冒険者達のお陰でリサヴィはクズ冒険者達から解放され、そのままフェランを後にした。

 もちろん、その程度でクズ冒険者達が諦めるわけはなかった。

 街を出てしばらくして岩陰から一組のクズパーティが姿を現した。

 彼らはすぐに近づいて来たりせず注意深く周囲を見回す。

 おそらく彼らを排除するであろうマトモな冒険者達が追ってこないか確認しているのだろう。

 もし、ここにヤーべがいたならば、


「あははっ!サラ!クズが向こうからやってきましたよ!誰も見てませんからさっさと片付けてしまいましょう!」


 などと言い、小躍りしながら向かって行っていったに違いない。

 しかし、世間でどう思われていようとリサヴィは自ら進んでクズ抹殺などしていないのである。

 やってきたクズ冒険者達はその事を知っているのかそれとも自分達をクズだと思っていないのか、恐らく後者であろうが、邪魔者がいないとわかるとリサヴィに近づき、馴れ馴れしく話しかけて来た。

 

「おいおいリサヴィ、遅刻だぞ!いつまで待たせんだ?」


 相変わらず訳のわからないことを言うクズ冒険者達をサラ達は無視するが、彼らはそういう扱いをされるのは慣れっこなのだろう、気にした様子もなく当然のような態度で後をついて来る。

 クズの待ち伏せはこれで終わりではなかった。

 その後、同様のことが二回起きた。

 つまり三組のクズパーティがリサヴィの後をついてくることになったのだ。

 彼らクズ冒険者達は互いを牽制しながらサラに(一番話が通じると思ったのかリーダーだと勘違いしているのかはわからないが)訳のわからないこと言い始めた。


「おいサラ、ブラッディクラッケン倒した報酬だけどよ、大親友である俺らも貰うぞ!」

「その前にサーギンも退治したんだろ。俺らにもよこせよ!」

「おいおい、順番が違うだろ。まずはアズズ街道で倒した魔物の素材を売ったもんがあるだろうが!」

「がははは!確かにな!」


 リサヴィは彼らとは全く面識がないのだが大親友になっていた。

 サラは彼らを一目見て大した実力はないとわかった。

 言っても無駄だとは思ったが一応彼らに警告をする。


「私達はハイト山脈を越えます。危険な魔物が多数棲息していて危険ですからあなた達は帰った方がいいですよ」


 しかし、彼らクズが人の言うことを聞くわけがない。

 「がはは」と笑いながら言った。


「なら尚更俺らが必要だろうが!」

「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」

「安心しろ!俺らの力はホンモンだ!!」


 そう言うと彼らは皆合図もなく立ち止まり、腕を組んで仁王立ちしてキメ顔をして言った。

 

「「「「「「「「「俺らが保証する!!」」」」」」」」」


 しかし、リサヴィの誰も彼らの方を見ていなかった。

 それだけでなく、彼らが立ち止まったときもリオ達は歩みを止めなかったので距離が開いた。

 彼らはポーズを解いて慌てて走って追いかける。

 そして追い抜くと前を塞ぎ、再びクッズポーズをしながら偉そうに言った。


「安心しろ!俺らがバッチリ後衛を務めてやるぜ!」

「おう!背後から奇襲を受けたらお前らと代わってやるしな!」

「お前ら安心して戦えるぞ!」


 つまり、彼らは戦う気はゼロだと堂々と宣言したのだ。


「……だめだこりゃ」

「ですねっ」


 サラが呟き、アリスが続いた。



 リオがじっとクズを見ていた。

 基本、リオはあらゆることに無関心であり人に対してもそうだ。

 そのリオが何故かクズをじっと見ている。

 特定のクズではなく全員を見ているようだった。

 それに気づいたアリスが声をかける。


「リオさんっ?どうしましたっ?」


 アリスの問いにリオは何か考える素振りをしながら答える。


「……こいつら、なにかおかしい」

「ぐふ?クズはいつもおかしいぞ」

「ですねっ」

「これまでもまともなクズなどいませんでしたよ」


 サラはそう言った後、自分がおかしなことを言ったことに気づいて慌てて付け加える。


「すみません、クズである時点でまともなわけないですね」


 サラ達にクズクズ呼ばれたクズ冒険者達は激怒していた。

 激おこだった。

 もちろん、彼らを気にする者はリサヴィにはいない。


「……まあいいか」


 リオはサラ達の言葉に納得しておらず、何か言いたそうだったが、結局その言葉を飲み込んだ。



 喚き続けるクズ冒険者達を無視してリオ達が歩みを再開した。

 クズ冒険者達はぶっ飛ばされるのを恐れて慌てて道を開ける。

 散々バカにされたにも拘らず去る者は一人もいなかった。

 リサヴィにくっついて行く意思は全く揺るがなかったのだ。

 彼らは文句を言いながらもリオ達の後をついていく。

 その中の一人が先を進むリオ達に向かって偉そうに言った。


「俺達がクズじゃないってことをすぐ証明してやるぜ!」


 直後、残りのクズ冒険者達が「だな!」と声を揃えて叫んだ。

 その顔は皆誇らしげだったがその機会がやってくる事はなかった。

 その代わりと言ってはなんだが、クズであることを証明する機会は何度もやってくることになる。


 ところで彼らクズ冒険者達は後衛を担当すると言ったが、三パーティもいるので全員が後衛になることは出来ない。

 今はともかく山道に入れば横一列に並ぶのは物理的にも無理だ。

 その時の構成は、前衛、中衛二組、後衛となるはずだ。

 前衛はリサヴィに確定しているため、クズパーティで残りを担当することになる。

 当然、皆が中衛、それもリサヴィのすぐ後ろを狙っていた。

 そこが一番安全であり、リサヴィとの交渉もしやすいからだ。

 そのベストポジションの奪い合いをクズ達が始める。

 彼らが足を止めて揉めている間もリオ達の足は止まらない。

 それにクズの一人が気づいて慌ててリサヴィに声をかける。


「おい!ちょ待てよ!まだ隊列が決まってねえだろうが!!」


 彼らのいう隊列などリサヴィの知ったことではないので当然無視。

 クズ冒険者達は何度も呼びかけるがリオ達が足を止めないとわかると争いをやめて我先にとリサヴィを追いかける。

 結果、中衛以降は三パーティが入り乱れることになった。

 これでは戦闘になった場合、パーティ連携はまともに機能しないだろう。

 だが、問題ない。

 彼らは自身で戦う気が全くないのだから。

 彼らは移動中もリサヴィに近いベストポジションを確保しようと小競り合いを続けるのであった。



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