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705話 海賊の要求

 リオ達の部屋を乱暴に叩く者がいた。

 この宿屋の主人であった。


「すみませんリサヴィの皆さん!兵士の方が至急の用件で来ております!」


 リオ達が一階に下りるとそこには顔を青くした兵士が立っており、リオ達の姿を見るなり口を開いた。


「済まないが手を貸して欲しい!」

「魔物の襲撃ですか?」


 サラの問いに兵士は首を横に振る。


「違う!海賊だ!海賊がやって来たのだ!」

「海賊ですか?」

「そうだ!それも悪名高きあのバルバール海賊団だ!」


 リオが首を傾げるのを見てサラが尋ねる。


「リオは聞いた事ありませんか?」

「ない」

「そうですか」

「わたしが説明しますねっ」


 そう言ってアリスが説明を始める。


「海賊バルバールが率いる海賊団で主に南東の海を荒らしているんですっ」

「ぐふ、つまり小国が集まった都市国家連合をカモにしているわけだ」

「なるほど。ブラッディクラッケンがいなくなったからここまで来れるようになったというわけか」

「ぐふ、その通りだな」


 呑気に話し始めるリオ達の会話に兵士が割って入る。


「済まないが話は後にしてくれないか!?ともかく浜辺へ来て欲しい!」

「リオ、行きましょう」

「そうだな」

「あのっ、傭兵団の方々はっ?」


 傭兵団の戦力は当てになるが問題はヤーべだ。

 サラは彼女の暴走を危惧していた。

 

「取り敢えずは知らせな……」

 

 サラの言葉に宿屋の主人が割り込んだ。


「私が知らせますので皆さんはどうぞお先に!」


 宿屋の主人はそう言うとサラの返事を待たずに二階へ上がって行ってしまった。


「……では行きましょう」



 リオ達が浜辺にやって来ると大勢の兵士が集まっていた。

 この港街の兵士全てが集まっているかのようであった。

 当然あの騎士と隊長もいた。

 他に怖いもの知らずの野次馬やトレジャーハンター、そしてクズらしき者達がいた。

 リオ達がやって来たのを見計らったかのようにバルバール海賊団の船長バルバールは手にした大声を出す魔道具、拡声くんを口元に寄せると浜辺に向かって叫んだ。


『今からここいら一帯は俺らの縄張りだー!!』

「なんだと!?」

 

 怒りを露わにする騎士、そして隊長。

 浜辺にいる者達の声が船まで届くわけはなく、バルバールは一方的に喋り続ける。


『つまりだ、この辺りに沈んでいる沈没船の宝は全て俺のもんってわけだ!反論は許さん!!もし逆らうのなら、』


 バルバールは一旦言葉を切ると空いている方の手を挙げた。

 瞬間、

 海賊船に備え付けられた大型の魔道砲(火薬ではなく風魔法で弾を発射する)から弾丸が放たれ、浅瀬に着弾した。

 大きな音と共に水飛沫が起こる。

 バルバール船長は満足気に笑みを浮かべながら言った。


『こいつで街を潰す!』


 バルバールは脅すだけでは終わらなかった。


『安心しろ。俺は紳士だ。俺に逆らわなければ何もしない。その代わりと言っちゃなんだがよ、食料、酒、それにいい女を寄越せ!こっちが妥協してやってんだから当然お前らも感謝の気持ちを行動で示すべきだってわかるよな!急げよ!!』


 バルバールの自分勝手な言いように「何が妥協だ!?」「ふざけんな!」と兵士達が次々に文句を言うがもちろん、バルバールに届くことはない。

 集まって来ていた住人達の中には若い女性達もおり、バルバールの要求を聞き悲鳴を上げる。

 そんな中、一人の勇気ある女性が前に出て来た。

 ばばさまである!


「いや、お前はお呼びじゃないと思うぞ」


 リサヴィに少し遅れてやって来た傭兵団であるがバルバールが要求を口にしているときに到着していた。

 思わず突っ込んだ副団長の声が聞こえたのだろう、ばばさまは軽快なステップで副団長の側へやって来ると手にした杖で突いた。


「痛えな!クソババア!てめえ目が見えるだけじゃなく足もぴんぴんしてるだろ!」

「……」

「待ってください!」


 二人の仲裁に入ったのは街の長であった。


「彼女は若い頃、この街一の美人だったんです!」


 街の長の言葉にばばさまはなんか誇らしげな顔をする。


「いや、過去なんかより今……って、だから痛えな!」


 副団長とばばさまのやりとりを見ていたヤーべが呟く。


「海賊が来たって言うのに副団長はなんか余裕ありますね」

「きっといいとこ見せたいのさ」


 ヤーべに答えたのは女傭兵の一人だ。

 その顔はニヤけていた。

 その声が聞こえていた副団長が女傭兵に怒鳴る。


「誰にだ!?誰に!?……って、ババア!何顔赤くしてんだ!?」


 この場は緊張感のある者とない者で二極化していた。



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