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701話 浜辺の財宝探し

 リサヴィはしばらくこの港町に留まることになった。

 もちろん、リオが騎士に同情したなんてことは全くない。

 リオが何か、恐らく否定的発言であろう、口を開いたが言葉は出ず、すぐに口を閉じてくすり、と笑った。

 それはどこか人を不安にさせる笑みだった。


「リオ?」


 思わず声をかけたサラにリオは笑顔で言った。


「しばらくいることにする」

「え?」


 リオの突然の心変わりに皆疑問を持ったが、余計なことを言ってまた気が変わっては面倒だと誰も理由を尋ねなかった。


「ありがとう!」


 騎士が満面の笑顔をリオに向けるがリオは反応しなかった。



 浜辺には多くの人々が集まっていた。

 その多くはこの街の住人であったが、街の外からやって来た者達も少なからずいた。

 彼らの目的は潮干狩り、

 などではなくブラッディクラッケンの体内にあったと思われる財宝探しであった。

 彼らのほとんどは海の魔物に襲われるのを恐れ海に入ることはなかったが腕に自信があるのか欲望に負けたのか、恐らく後者であろう、海に入って(と言ってもせいぜい膝下程度だが)探す者達もいた。

 浜辺には宝探しする者達以外もいた。

 兵士達と腕を組んで仁王立ちする者達である。

 兵士達は当然任務である。

 新たに魔物がやって来た場合に備えて海を警戒している。

 それ以外にも財宝探しで揉め事を起こす者達の仲裁も行っていた。

 これまでに外からやって来て暴れたクズ達を捕まえ牢屋に放り込んでおり大忙しであった。

 最早こちらがメインと言える。

 残る腕を組んで仁王立ちする者達だが、彼らは財宝探しに参加するわけでもなく、ただ、なんか偉そうな顔で宝探しをする者達を観察していた。

 説明する必要もないと思うが彼らは財宝を見つけた者達に難癖をつけてぶん取る気であった。

 つまり、クズである。

 それもタチが悪いことに冒険者であった。

 クズ冒険者達であった。

 街の出入りを兵士達が厳しくチェックしていたが、クズ臭をぷんぷんさせていても冒険者カードを見せられては通さないわけにはいかなかったのだ。

 自信満々な顔をしているところを見ると自分達のクズスキルに相当自信を持っているようで兵士達がいてもクズ行為を完遂できると思っているのだろう。

 


 そこへリオ達と騎士がやって来た。

 クズ冒険者達は誰かがやって来たことを気配で察し、偉そうな顔で振り返った。

 リサヴィの姿を見て偉そうな顔があほ面へとシフトする。

 どんなに高度なクズスキルを持っていたとしてもリサヴィの前には無力だと本能で悟ったのだろう。

 クズ冒険者達は「ひっ」と小さな悲鳴を上げて逃げ出した。

 腕を組んだままで。



 リオ達はそんなクズ冒険者達の奇行を気にすることなく兵士達が臨時で作った詰所へ向かう。

 そこにいたこの街の兵士をまとめる隊長はリサヴィの姿を見て安堵したものの一緒に来た騎士の姿を見て気まずそうな表情をした。

 騎士が隊長に声をかける。


「隊長、しばらくリサヴィにも協力してもらうことになった。皆に周知を頼む」

「は、はっ」


 隊長は素直に返事すると「兵達に連絡する」と言って詰所を離れた。

 隊長も彼が騎士へ昇格したことへの嫉妬心から命令違反にならない程度に冷たい対応をしていたのだった。

 それをリサヴィに知られたと思いその場にいられなかったのである。

 その後を慌てて連絡係の兵士が追った。


「ぐふ、仕事熱心だな。自ら動くとは」

「は、はは……」


 ヴィヴィの嫌味に騎士が苦笑する。

 ヤーべがサラに声をかける。


「サラ、クズらしき者達が逃げましたよ!いつヤリますか!?」

「ちょっと黙っててください。というか、なんでついて来たのですか?あなた達は関係ないでしょう」


 そう、ここへやって来たのはリサヴィだけでなく、ヤーべと傭兵団も一緒に来ていた。

 傭兵団はヤーべがついて行くと言ったこともあるが、感情に流されてリオの説得に協力してしまったので、「じゃあ、俺達はここで」などと言えなかったのだ。

 まあ、そう言ったとしても当のリオは気にしなかったであろうが。

 サラの言葉にヤーべが悲しそうな顔をする。


「酷いですサラ!」

「酷いのはあなたの言動です。どれだけ私の評判を下げれば気が済むのですか」

「え?なんのことですか?」


 ヤーべは素で驚いた顔をする。

 サラはどっと疲れが出た。


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