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70話 マドマーシュの遺跡 その2

「くそっ、リバースってこんなに強いのかよっ。ロード以上じゃないのか!」


 カリスが切り落とされたガドターク・リバースの頭を蹴り飛ばす。

 ガドターク・ロードはガドタークの上位種でBランクとされている。

 通常数体単位で行動するガドタークであるが、それらが集まって群を作る事があり、そのときは必ずロードが存在する。

 どういう経由で誕生するかは知られていない。


「ベルフィ、治療します」

「ああ、済まない」

「頼むぜっサラ!」

「ナック、カリスをお願いします」

「ちょ、ちょ待てよっ!」


(魔力は温存したほうがよさそうね)


 サラはベルフィに触れ、呪文を唱える。


「神よ、その深き慈愛によりかの者の傷を癒やし給え」


 ベルフィの治療が終わるとナックの治療を拒否したカリスが怪我を誇らしげにサラに見せつける。

 サラはカリスと口論する時間が勿体無いと判断し、カリスの怪我も呪文を唱えて治療する。

 

「次からは俺を先に治療してくれよっ。なっ?」


 そう言ってキメ顔をするカリスをサラは無視する。

 リオの視線を感じていたサラは二人の治療を終えるとリオを見た。


「どうかしましたか、リオ」

「うん?いや、サラが呪文を唱えるの初めてみた気がする」

「そうでしたか?」

「うん。神聖魔法は呪文を唱える必要ないんだよね?なんで今回は呪文を唱えたのかな?」


 その問いに答えたのはヴィヴィだ。


「ぐふ。威張りたいからだ」

「そうなんだ」


 リオがなんの疑問も持たず頷く。


「違います!リオも何納得してるんですか!」

「え、違うの?」

「当たり前です!」

「ヴィヴィ、ダメじゃないか」

「ぐふ」


(わざとやってるわね、このクソ魔装士!)


「神聖魔法は確かに呪文を唱えなくても魔法は発動します。しかし、呪文を唱えることで魔力を節約したり、効果を上げることが出来るのです」

「そうなんだ」

「はい。この先まだ何が起こるかわかりませんので魔力の消費は出来るだけ抑えるつもりです」

「そうなんだ」

「悪かったサラ!次からは油断しないぜ!」

「そうしてください」


 カリスの言葉にサラは頷いたが、その言葉を信用していなかった。



 ガドターク・リバースから抜き取ったプリミティブは他より一回りほど大きかった。


「こいつは高く売れそうだな」

「じゃあ、これからはリバースさせて倒す?」

「バーカ!そんなんじゃ割り合わないよっ!」

「そうなんだ」

「そもそもリバースのさせ方がわからんだろ?」

「そうなんだ」


 リオがそう言った時、サラは違和感を覚えた。

 今のリオの口振りはまるで「僕はわかるんだけどな」と続くかのように感じたからだ。

 だが、そう思ったのはサラだけだったようで誰も指摘しなかったし、リオも実際にそう言う事はなかった。


(……もし、リバースの方法がわかるなら強力な魔物の軍団を作り上げることが可能ということになるわ……ってそんなはずないわ!)


 サラはその考えを頭から振り払った。



「しかし、地下の街への道見つかんないなぁ」

「街はともかく奴らがやってきた道がある事は確かなはずだが……」

「しっ」


 突然、ローズは足を止め、地面に耳をつける。

 その間、皆じっとしてローズの言葉を待つ。

 

「声が聞こえた。多分悲鳴……こっちだよっ!」


 ローズが駆け出し、その後を追う。

 ローズが立ち止まったのはなんの変哲もない壁の前だった。

 いや、よく見ればその付近だけヤケに足跡が多い。

 それはただの壁ではなかった。


「ここ、なんか仕掛けあるわね」

「それはつまり……」

「多分隠し扉よ」

「おおっ!来た来た!」

「それで悲鳴は?」

「向こう側から。でももう聞こえなくなったわ」

「やられたか」

「確か私達以外にも依頼を受けたパーティがあと二組いましたね」

「ああ、そいつらだな」

「どうやって入ったんだろう?」

「そりゃ。謎を解いてだろ。扉は勝手に閉まったか、お宝を独り占めしようと自分達で閉じたか」

「ともかくローズは開け方を調べてくれ。他の者は周辺を警戒だ」

「「「了解」」」

「わかった」

「はい」

「ぐふ」



 ガドタークは粗方片付けたのか、ローズが壁を調べている間現れる事はなかった。

 そしてローズが隠し扉の開け方を見つけた。



 ベルフィの合図でドアを開けるローズ。

 と、それを待ち構えていたようにガドタークが飛び出してきた。

 ガドタークは三体。そのうちの一体は体毛が赤く体が他より大きい。ガドターク・リバースだった。


「マジかよっ!」


 思わずグチるナック。

 ベルフィはすかさず指示を飛ばす。


「リオ!ヴィヴィ!お前達はガドターク二体をこちらへ近づけさせるな!残りはリバースをやるぞ!」

「「「おう!」」」

「わかった」

「ぐふ」


 ヴィヴィがリムーバルバインダーを上手く使い二体のガドタークをガドターク・リバースから引き離す。

 

「リオ!ここのガドタークは強いです!十分気をつけて!」

「わかった」


 本当にわかっているのか、不安に思うほどリオの返事は軽かった。

 ナックはベルフィ達に強化魔法をかけ終え、リオ達の援護をしようとして唖然とした。

 

 既に一体倒されており、今まさに二体目のガドタークの首をリオが斬り落としたところだった。

 宙を舞うガドタークの首。


「……マジ?」


 ナックの声にリオが顔を向ける。


「あ、ナック、終わったよ」


 リオは剣を一振りして血を払うと鞘に収めた。その動作はとても自然でベテラン戦士を思わせた。

 ナックは一瞬、本当にリオかと疑うほどだった。


「ナック?」

「あ、ああ、お疲れ。よく二体倒せたな」

「ヴィヴィのお陰だよ」

「ぐふ」

「そうか」


 先に倒されたガドタークも首を落とされていた。

 リバースさせないためには首を落とすのが確実だ。


(ここのガドタークは強い。リオ達Eランクより上のパーティが全滅するほどだ。だが、そんなガドタークに怪我一つせず完勝するってどんだけ強くなってんだ?前にベルフィとの手合わせを見た時はそこまでじゃなかったぞ。リオの言うとおりヴィヴィが上手く援護したといってもせいぜい一対一の状況を作るくらいだろう?)


 以前、ナックは冗談で「サラはリオを勇者だと思っているんじゃないか」と言った事がある。

 だが、もしかして、と思い始めていた。


「向こうも終わりそうだね」

「ん?そ、そうだな」


 リオの言う通り、ベルフィの一撃で膝をついたガドターク・リバースの首をカリスが斬り落とし戦いは終了した。

 カリスはサラに向かって腕を振ってオレオレアピールするのを忘れなかった。



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