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697話 魔法を使える理由

 サーギンの脅威が去ったことが知れ渡り住民達は普段の生活に戻っていた。

 街を歩いていると至る所から感謝の言葉が飛んだ。

 リオ達が泊まっていた宿屋の者達もフェランに避難しなかったようで営業していた。

 皆疲れていたのでその場で解散して各々の部屋に向かった。

 サラは部屋に入るなりずっと聞きたくて我慢していた疑問をリオにぶつけた。


「リオ、あなたはいつからライトニングボルトが使えたのですか?記憶が戻ったのですか?あなたは魔術士でもあったのですか?」


 リオはサラの立て続けの質問に表情を変えずに答える。


「ライトニングボルトなら黒歴史の魔術士が使ってただろ」

「は?」

「えっ?」

「ぐふ……」


 サラはリオが冗談を言わないことを知っている。

 今までリオが冗談を言ったのを聞いたことがない。

 もしかしたらこれが初めて聞くリオの冗談だったのかもしれないがとてもそうは思えなかった。


「リオ、つまりこういうことですか。ライトニングボルトの呪文、そして魔法陣を数回見ただけで覚えた、と」

「ああ」

「流石リオさんですっ」


 アリスは手放しで喜ぶ。

 それがどれだけ異常なことか理解できないのか、リオならどんなことでも出来るはずとの盲目的な信用がなせる技なのか。

 ヴィヴィもサラと同じく納得できなかったようで疑問を口にする。


「ぐふ、だが、曲げるのどうやったのだ?奴のライトニングボルトは通常のものだった。曲げることはできなかったはずだ」

「ヴィヴィも曲げただろ」

「ガルザヘッサ戦のときのことですね。しかし、あのときのヴィヴィの呪文や描いた魔法陣をあなたが見ていたとは思えません」


 サラの問いにリオは何でもないように言った。


「ライトニングプラズマは曲がっただろ」

「……は?」

「ぐふ!?」


 サラ達はしばらく声が出なかった。

 ヴィヴィがなんとか口を開いた。


「ぐふ、つまり、こういうことか?ライトニングプラズマの術式を分解して得た情報をもとにライトニングボルトを改良してコントロールできるようにしたと?」

「ああ」

「流石リオさんですっ」


 リオに妄信的なアリスは納得したが、サラとヴィヴィはそう簡単に信じられなかった。

 リオが逆にヴィヴィに問う。


「なんでヴィヴィも驚くんだ?お前だってライトニングボルトを曲げることが出来るだろ」


 リオにそう問われてヴィヴィは苦しそうに言った。

 

「……ぐふ、確かにそうだが、リオ、お前の方が私のものより上だ。私のではあれほど何度も曲げることはできないし持続力もない」

「そうなんだ」


 リオはどうでもいいように言った。

 


 サラはこれまでの出来事を思い出していた。

 リオは麻痺等のあらゆる状態異常攻撃を幾度もレジストしてきた。

 それを生まれつき耐性が強いものとばかり思っていた。

 だが、今回のことで別の可能性に気づいた。


 リオはその攻撃を受けた瞬間に原理を理解して打ち消していたのではないか、

 というものだった。


(……いえ、違うわ。直接受ける必要はない。私はそれをすでに知っていた)


 それはヴィヴィのプリミティブの位置を把握する能力のことだ。

 

(ヴィヴィがどうやっているのかもよくわからないけどリオは見ただけで自分のものにしてしまった)



 ここでサラはリオがヒールをレジストしたことを思い出し、恐ろしい考えが頭に浮かぶ。


(……リオはヒールを使うことができる!?神聖魔法すら使えてしまう!?)


 サラは自分の考えをすぐさま否定する。

 

(そんなはずはないわ!神聖魔法は神の力を借りて発動するもの。信仰心のないリオが使えるはずがない。神が力を貸すはずがない!)



「魔法が使えるならっラグナは必要ないんじゃないですかっ?」


 アリスの声がサラを現実に戻した。

 リオはどこか不機嫌そうな顔で答えた。

 

「ラグナは必要だ」

「そうなんですかっ?」

「ああ。俺は魔術士じゃないしな」


 アリスが首を傾げながらリオに尋ねる。

 

「魔法が使えるんですから魔術士なんじゃないんですか。あっ、魔法戦士の方が正しいですかねっ」

「俺はライトニングボルトしか使えない。そんな者を俺は魔術士とは認めない」

「ぐふ、ウィンド、ナックと長く旅をしていたのだろう。ナックの使った魔法を覚えていないのか?」

「覚えていない。その時の俺は自分が魔法を使えると思っていなかった」

「ぐふ」

「まあ、俺が他の魔法が使えようと関係ない。俺にはラグナが必要なんだ」

「そうなんですかっ?」

「ああ。俺が“俺になる”ためにな」

「えっとっ、それってっどういう意味ですかっ?」


 アリスの問いにリオがくすりと笑った。

 

「俺もわからない。そう頭に浮かんだからそう口にしただけだ」



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