695話 クズ達の財宝探し その3
クズリーダーがクズ達を怒鳴りつける。
「馬鹿野郎どもが!時間がねえって言ってんのに何仲間割れしてやがんだ!!」
「「「す、すまねえ!」」」
「プリミティブはどうなった!?」
クズリーダーがプリミティブを探しているクズ達を睨む。
「ま、まだ見つかってません!!」
「さっさと見つけねえか!胃袋のお宝も協力して回収しやがれ!急げよ!!」
「へい!」とクズ達が返事した。
クズ達が胃袋のお宝回収とありもしないプリミティブを必死に探していると舟で待機していたクズ達から悲鳴が上がった。
彼らは何ものかの攻撃を受けていた。
足に激痛が走り、見ると足が切断されていた。
舟底も一緒にである。
たちまち舟が沈み乗っていた者達は海へ放り出される。
そして海に潜む何ものかの攻撃であっという間にバラバラにされた。
彼らを襲ったもの、それはエッジフィッシュと呼ばれる魚タイプの魔物だった。
頭部に鋭利な刃物のような突起物を備えていることからそう名付けられた。
先の戦いで運良く生き延びた魔物達が戻って来たのだ。
エッジフィッシュにより舟が次々と襲われて沈められていく。
舟とともに海に沈むクズもいたが、ブラッディクラッケンに飛び移り難を逃れた者もいた。
だが、それはただの延命処置に過ぎなかった。
気づけば彼らが乗って来た舟は全て沈み、お宝を運ぶどころか自身が帰還する術すらなくなったのであった。
クズ達は半狂乱となり喚き出す。
「騒ぐんじゃねえ!!」
クズリーダーがそう叫ぶとぴたっと騒ぎが収まった。
「リーダーも一緒に騒いでたよな!?」
と突っ込む者はいなかったが、不安を口にする。
「でもリーダー!俺ら帰る手段が無くなっちまったんだぞ!」
クズリーダーは意味あり気に笑みを浮かべたかと思うと偉そうな態度で浜辺に向かってすっと右腕を上げた。
そのポーズはリオがヴィヴィを呼ぶときにした合図だった。
クズリーダーはそのときのことを思い出したのだ。
何故かクズリーダーはそれでヴィヴィが迎えに来ると思った。
リオは格好つけることなく自然体で片手を上げていたが、クズリーダーは違った。
仁王立ちして偉そうな顔をしていた。
クズリーダーの行動の意味に気づいたクズ達も次々と右腕を上げキメ顔を浜辺に向けた。
彼らも何故かヴィヴィが迎えに来ると思ったようだ。
ヴィヴィは仮面の望遠機能でクズ達の行動に気づいた。
その意図にも。
「ぐふっ」
クズ達の愚行に思わず漏れた笑いにサラが反応して海へと目を向ける。
目視ではよくわからないが何か問題が起きたのだと察する。
「ヴィヴィ、クズ達に何か起きたのですか?」
サラの言葉に皆の視線が海に浮かぶブラッディクラッケンへ向けられる。
「ぐふ、こちらに手を振っているようだ。どうやら奴らはブラッディクラッケンに乗って旅立つことにしたようだ」
「そんなわけないでしょう」
サラはヴィヴィの言葉を呆れた顔で否定した。
「ぐふぐふ」
「それで本当はどうなんですか?」
「ぐふ、魔物の襲撃を受けて乗って来た舟が全て沈んだようだな」
クズ達に舟を勝手に使われた漁師達がヴィヴィの話を聞き悲鳴を上げて頭を抱える。
そんな彼らに街の長が今回の報酬で補償すると言って宥める。
アリスが「あっ」と声を上げる。
「その魔物はきっとエッジフィッシュですねっ」
アリスはリオにエッジフィッシュの説明をしようと思ったが全く興味なさそうな顔をしているので止めた。
サラがクズ達の行動をヴィヴィに確認する。
「クズ達は助けを求めているのですね?」
「ぐふ、私には別れを告げているように見えるが中にはそう見える者もいるかもしれないな」
「状況から考えればそうとしか見えないでしょう」
「ぐふぐふ」
クズ達の危機を知った漁師達が直ちに救援隊を組織して助けに向かった、
なんてことはなかった。
誰もそんな素振りすら見せなかった。
それは当然である。
相手はクズである。
散々好き放題に悪さをして住人達に迷惑をかけて来たクズ達なのである。
命の危険を冒して彼らを助けたところで改心する可能性ナッシングのクズ達なのである!
リオとヴィヴィが組めば空中を移動して彼らを救うことが出来るかもしれない。
ただ、クズ達の数が半数以下になったとはいえ、一度に全員運ぶのは不可能なのでブラッディクラッケンと浜辺を何度も往復する必要があるだろう。
言うまでもないが、リオ達がクズ達を助けに行くことはなかった。
救出作業が大変だという以前に相手はクズである。
助けてやる理由はどこを探しても見つけることは出来なかったのである。
ヤーべが笑みを浮かべながら頷く。
「計算通りですね!流石ですサラ!」
そう言った直後、悲鳴を上げて頭を押さえた。
サラにど突かれたのだ。
サラの動きが速すぎて副団長は止めることが出来なかった。




