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694話 クズ達の財宝探し その2

 クズ達はリオがライトニングボルトで開けた穴に武器の刃をねじ込んで裂き始めるがなかなか思うように行かない。


「あの野郎、もっと上手く穴を開けとけよ!財宝を回収する俺達の身にもなれってんだ!」

「てかあの野郎、呑気に休んでやがったよな!なんでその時お宝回収を始めてなかったんだ!」

「だな!」


 クズ達はリオを恐れていたが近くにいないので言いたい放題であった。


「てめえら!第一優先はプリミティブだ!それを忘れんなよ!」


 ブラッディクラッケンの腹の中に財宝がない可能性はゼロではない。

 だが、プリミティブだけは間違いなくあるはずであった。

 ブラッディクラッケンのプリミティブともなれば一体いくらで売れるのか見当もつかないが、一生遊んで暮らせることは間違いないだろう。

 クズ達が「へい!」と元気よく返事した。



 クズ達の行動を仮面の望遠機能で見ていたヴィヴィが言った。


「……ぐふ、クズ達はブラッディクラッケンの死体を運ぶのを諦めてその場で財宝を回収することにしたようだな。あるかどうかわからないがな」

「確かに財宝はないかもしれませんが少なくともプリミティブは残っているでしょう」

「ぐふぐふ」

「何がおかしいのです?」


 ヴィヴィは一度リオの顔を見てから言った。


「プリミティブなら私のリムーバルバインダーの中にある」

「はい?」


 ヴィヴィは証拠とばかりにリムーバルバインダーを開ける。

 そこには直径二十センチメートルほどの大きさのプリミティブが入っていた。

 ブラッディクラッケンの巨体からすれば非常に小さいように見えるが、一般的なプリミティブの大きさと比べれば十分に別格である。


「いつの間に……!!」


 サラはそう口にしてすぐに気づいた。

 リオだ。

 リオがライトニングボルトでプリミティブを体内から引き抜いたのだ。

 プリミティブは体のどの位置にあるか決まっていない。

 ブラッディクラッケンのあの巨体ともなれば見つけ出すのは相当困難なはずである。

 しかし、ヴィヴィはプリミティブの位置をつかむ術を身に付けており、リオもいつの間にかその術を身に付けていた。

 そのことを思い出したのだ。

 サラの推測は当たっていた。

 ヴィヴィはリムーバルバインダーの目を通してリオとブラッディクラッケンの戦いを見ていた。

 リオの放ったライトニングボルトがブラッディクラッケンを撃ち抜き天へと向かって消えた。 

 その後、リオが右手を天に掲げ空から落ちてきたものを掴んだ。

 それがブラッディクラッケンのプリミティブであった。

 リオはそのプリミティブをブラッディクラッケンの上に乗り移る前に弓矢と一緒にリムーバルバインダーの中にしまっていたのだ。

 サラとアリスの先程の疑問、ブラッディクラッケンがあっさり死んだ疑問が解けた。

 どんなに強い魔物でもプリミティブを抜かれては生きていられるはずがないのだ。

 そうとも知らず必死にプリミティブ探しをするクズ達であった。



 クズの一人がブラッディクラッケンの腹を大きく切り裂くことに成功した。

 その直後、そこから大量の胃液が溢れ出た。

 それをモロに浴びたクズは悲鳴を上げる間もなく体が溶け落ちた。

 そばにいたクズ達も無事では済まなかった。

 悲鳴を上げ溶けながら海へ落ちていく。

 数人死んだが悲しむ者達はいなかった。

 それどころか取り分が増えると喜ぶ者がいた。

 流石クズと言ったところか。

 肝心の胃袋の中身であるが奥でキラキラ光るものがいくつも見えた。

 クズ達は歓声を上げたものの、それらは胃液に沈んでおり引き上げる術がない。

 またもお預けを食らったような顔をするのだった。



 ブラッディクラッケンが徐々にではあるが沖へと流され始めていた。

 クズ達は舟を止めるときにブラッディクラッケンの体にどん、とぶつけて勢いを止めた影響かもしれない。

 流されていることに気づいたクズリーダーが喝を入れる。


「お前らぐずぐずすんじゃねえ!」


 胃液を薄めるため海水を汲み胃袋へ流し込むという単調作業を行なっていたが、予定外の作業で思うように進まない。

 そのうちクズの一人がその作業に飽きた。

 もう十分胃液は薄まっただろうと判断して胃袋の中に飛び込んだ。

 結果、

 

「い、いでえ!と、溶ける!助けてくれ!!」


 そのクズは重傷を負いながらも価値のありそうなペンダントをゲットしていた。

 他のクズ達が急いてロープを下す。

 その先には丈夫な袋が括り付けてあった。


「まずはそれに宝を入れろ!」

「ざ、ざけんな!お前ら宝だけを回収する気だろう!」

「「「俺らを信じろ!俺らの事は俺らが保証する!」」」


 胃袋の中を覗き込むクズ達が腕を組んで誇らしげな顔で言った。

 しかし、なんてことでしょう。

 彼らの保証はそのクズの信用を得ることはできませんでした。

 胃袋の中にいるクズは彼らの言葉を無視してロープを自分の体に巻こうとした。

 それに気づきクズ達はロープを引き上げる。

 

「て、てめえら!」

「宝が先だ馬鹿野郎!」

「馬鹿野郎はてめえらだ!」


 そんなやりとりをしているうちに胃袋の中にいたクズは力尽き、胃液に沈んだ。



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